
執筆者:辻 光明
代表税理士
生命保険料控除 確定申告|年末調整で忘れた時の手順を税理士が解説

年末調整で生命保険料控除を出し忘れた場合でも、確定申告(多くは還付申告)で控除を受け直すことで、払い過ぎた所得税が戻る可能性があります。問題になりやすいのは「控除証明書が手元にない」「源泉徴収票が年末調整済みで作成コーナー入力が難しい」「期限が不安」の3点です。この記事では、会社員の方を中心に、忘れたときの実務手順と注意点を税理士法人 辻総合会計の実務目線で解説します。
生命保険料控除とは?確定申告でできること
生命保険料控除は、1年間に支払った生命保険料等について、所得から一定額を差し引ける所得控除です。年末調整で出し忘れても、確定申告書の生命保険料控除欄に記入し、控除証明書等を添付(または提示)すれば、控除の適用を受けられます。国税庁のタックスアンサーでも、確定申告で控除を受ける際に証明書等の添付・提示が必要である旨が示されています(年末調整で控除済み等の場合を除く)。
当法人の相談でも「保険会社から届く控除証明書を封筒のまま放置していた」「年末が繁忙で総務に提出できなかった」というケースは多く、結論としては、確定申告でリカバリー可能です。
「年末調整で間に合わない」と「確定申告」の関係
年末調整は会社側の締切があるため、後から「やっぱり控除を入れて」と言っても処理できないことがあります。その場合の出口は、原則として個人が行う確定申告(給与所得者なら多くは還付申告)です。
生命保険料控除を忘れたときの対処法
やるべきことは大きく3つです。ポイントは「控除証明書をそろえる」「源泉徴収票の内容を正しく入力する」「期限内に提出する」です。
必要書類(最低限)
- 給与所得の源泉徴収票(会社から交付されたもの)
- 生命保険料控除証明書(保険会社が発行)
- マイナンバーカード等(e-Tax利用や本人確認用)
- 還付金の受取口座情報
国税庁の案内では、生命保険料控除を受ける際に、支払金額や控除の適用を証明する書類等を添付(または提示)する取扱いが示されています。
期限の考え方(いつまで出せる?)
「忘れた」ケースは、多くが払い過ぎを取り戻す還付申告に該当します。国税庁のタックスアンサーでは、還付申告はその年の翌年1月1日から5年間提出できるとされています(ただし、一部特例は法定申告期限までが要件)。また、所得税の法定申告期限は原則翌年3月15日です。
実務的には「早く出すほど早く還付される」ため、控除証明書がそろったら早めに提出するのが得策です。
生命保険料控除 確定申告の手順(作成コーナーでの流れ)
ここでは国税庁「確定申告書等作成コーナー」を使う前提で、最短ルートを示します。年末調整済みの源泉徴収票を入力していても、控除の追加は可能です。
Step 1: 控除証明書の金額を整理する
生命保険料控除は、一般生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料の3区分があります。控除証明書に記載の「年間の払込保険料」を区分ごとにメモし、同じ区分が複数ある場合は合算します。旧契約(平成23年12月31日以前)と新契約(平成24年1月1日以後)で計算が分かれることがあるため、証明書の表示も確認します。
Step 2: 作成コーナーで給与(源泉徴収票)を入力する
源泉徴収票の「支払金額」「源泉徴収税額」「社会保険料等の金額」「配偶者控除等」などを転記します。ここがズレると還付額が変わるため、転記ミスに注意します。
Step 3: 生命保険料控除を入力する
所得控除の入力画面で生命保険料控除を選び、Step1で整理した金額を区分別に入力します。年末調整で未適用なら、そのまま追加入力で問題ありません。
Step 4: 年末調整済み源泉徴収票の控除額を「修正」する場合の注意
「年末調整では生命保険料控除を一部入れていたが、証明書が追加で見つかった」など、年末調整済みの控除額を修正する動きになると、作成コーナー側で源泉徴収票データの扱いに注意が必要です。国税庁の作成コーナーFAQでは、年末調整済みの源泉徴収票に記載の所得控除を修正する場合の入力手順が案内されています(源泉徴収票の扱いを切り替えて控除を再入力する流れ等)。
Step 5: 控除証明書の添付(または提示)で提出する
e-Taxなら、画面の指示に従って必要事項を入力し提出します。書面提出の場合は、控除証明書等の添付・提示要件に注意してください(年末調整で控除済み等の例外もあります)。
いくら戻る?年末調整と確定申告の違い(比較表)
生命保険料控除は「控除(課税所得を減らす)」なので、戻る金額は一律ではなく、税率や住民税にも影響します。あくまで概算イメージを持つために、違いを整理します。
| 項目 | 年末調整 | 確定申告(還付申告) |
|---|---|---|
| 手続きの主体 | 会社 | 本人 |
| 反映タイミング | 年末(給与計算で精算) | 申告後(還付) |
| 出し忘れの救済 | 原則不可(会社締切あり) | 可能(控除を追加して精算) |
| 必要書類 | 控除証明書等を会社へ提出 | 控除証明書等を添付・提示(e-Tax含む) |
| 期限の目安 | 会社の締切 | 還付申告は翌年1/1から5年(原則) |
当法人で多いのは「控除額が数万円増えたのに、還付は数千円〜1万円台だった」という相談です。これは税率(所得税・住民税)と、すでに年末調整で精算済みの前提があるためで、控除=同額が返るわけではありません。
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よくある失敗と注意点(年末調整のやり直しは?)
保険料控除証明書が見当たらない
保険会社の会員サイトや再発行手続で取得できることが多いです。紙がないと入力自体はできても、添付・提示要件を満たせず、後日の提出依頼につながることがあります。「入力できた=完了」ではなく、証明書までセットで考えてください。
すでに確定申告を出してしまった(後から控除を追加したい)
すでに提出した申告内容を「控除を追加して税額を減らす」方向で直す場合、一般に更正の請求の対象になります。e-Taxでも「更正の請求書」や「修正申告書」の作成に関するFAQが用意されています。なお、税額が増える方向の修正は修正申告となり、性質が異なります。
判断を誤ると手続が二度手間になるため、提出済みの場合は「税額が増えるのか減るのか」を起点に整理してください。
会社に「再年末調整」を頼めばよい?
会社の年末調整は締切と事務負担があり、原則として個人側の確定申告で調整するのが現実的です。特に年度をまたいだ後は、給与側の再計算よりも、確定申告で精算するほうが早いケースが大半です。
よくある質問
Q: 生命保険料控除を年末調整で忘れたら、確定申告は必須ですか?
A:
忘れた分を取り戻したい場合は、確定申告(多くは還付申告)が実務上の手段になります。生命保険料控除は確定申告でも適用でき、控除証明書等の添付・提示が必要です(一定の例外あり)。Q: 還付申告はいつまで提出できますか?
A:
国税庁の案内では、還付申告はその年の翌年1月1日から5年間提出できます。ただし、特例の適用要件として法定申告期限(原則翌年3月15日)までの提出が必要なものもあるため、他の控除等と併せて確認してください。Q: 作成コーナーで源泉徴収票が年末調整済みだと、控除の追加がうまくできません。どうすれば?
A:
国税庁の作成コーナーFAQに、年末調整済みの源泉徴収票に記載の所得控除を修正する場合の入力手順があります。案内に従い、源泉徴収票データの扱いを切り替えたうえで控除を入力し直す流れになることがあります。Q: 申告後に控除証明書が見つかりました。提出済みの申告を直せますか?
A:
税額が減る方向であれば更正の請求、増える方向であれば修正申告が一般的です。e-TaxのFAQでも「更正の請求書」「修正申告書」の作成に関する案内があります。提出状況と影響額により最適手続が変わるため、状況整理が重要です。まとめ
- 年末調整で生命保険料控除を忘れても、確定申告(還付申告)で取り戻せる
- 必要書類は「源泉徴収票」と「生命保険料控除証明書等」が中心
- 還付申告は原則、翌年1月1日から5年間提出可能(特例は期限要件に注意)
- 作成コーナーで年末調整済み控除を修正する場合は、FAQの手順に沿って入力する
- すでに申告済みなら「税額が増えるか減るか」で修正申告/更正の請求を整理する
参照ソース
- 国税庁「No.1140 生命保険料控除」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1140.htm
- 国税庁「No.2030 還付申告」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2030.htm
- 国税庁 確定申告書等作成コーナー(よくある質問)「年末調整済みの源泉徴収票に記載の所得控除を修正する場合の入力」: https://www.keisan.nta.go.jp/r6yokuaru/r6myna/myna2/cid1142.html
この記事を書いた人

辻 光明
代表税理士
税理士 / 認定経営革新等支援機関
税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。
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