
執筆者:辻 光明
代表税理士
NISA 確定申告が必要なケースとは|税理士が解説

NISA口座の利益に確定申告は必要?
結論として、NISA口座(新NISAを含む)で生じた譲渡益・配当等は原則として非課税で、通常は確定申告も不要です。国税庁も、非課税口座で取得した上場株式等の配当等・譲渡益が非課税となる旨を示しています。
一方で、「NISAの利益そのもの」ではなく、周辺の条件(配当の受取方法や、他口座の損益通算・繰越控除の適用など)によって申告が必要・有利になることがあります。投資を始めたばかりの方ほど、どこで課税が発生するかが分かりづらいのではないでしょうか。
本記事では、税理士実務で相談が多い「申告が必要になる場面」と「申告した方がよい場面」を、判断手順として整理します。
NISAと税金の基本:非課税になる範囲と例外
新NISA(令和6年以降)の非課税範囲
新NISAでは、非課税口座(つみたて投資枠・成長投資枠)で取得した上場株式等について、配当等や売却益(譲渡益)が非課税とされています。
このため、NISA口座内で完結している利益は、原則として確定申告の対象になりません。
例外:配当等が非課税にならない受取方法がある
国税庁は、非課税とされる配当等が「非課税口座を開設している金融商品取引業者等を経由して交付されるもの」に限られること、つまり株式数比例配分方式を選択していない場合は課税扱いになり得ることを明記しています。
この「受取方法の設定」が、NISAと確定申告の論点で最も多い落とし穴です。
NISAで確定申告が必要になるケース
ここでは「確定申告が必要」になりやすい代表例を整理します。ポイントは、NISA口座“外”で課税関係が発生していないか、またはNISA口座内でも配当の受取方法が要件を満たしているか、です。
ケース1:配当金の受取方法が株式数比例配分方式でない
NISA口座の配当等を非課税にするには、株式数比例配分方式で、証券会社経由で配当等を受け取る必要があります。要件を満たさない受取(発行者から直接交付されるもの等)だと課税扱いになり得ます。
この場合、配当の課税関係が生じ、状況によって確定申告が必要になります(給与所得者の少額申告不要など、別のルールが絡むため、課税額・所得状況を確認してください)。
ケース2:特定口座(源泉徴収あり)でも損益通算や繰越控除を使う
特定口座(源泉徴収あり)であれば、基本的に譲渡益等は源泉徴収で課税関係が完結し、申告不要となる場面が多いです。
ただし国税庁は、源泉徴収口座内の譲渡所得等について、他口座の譲渡損益と相殺(損益通算)する場合や、譲渡損失の繰越控除の特例を受ける場合には、確定申告が必要になる旨を示しています。
つまり、「申告しなくてもよい口座」でも、税務上の有利を取りに行くなら申告が必要という構図です。
ケース3:NISAでは損益通算・繰越控除ができない(申告で取り戻せない)
国税庁は、非課税口座で生じた損失は「ないものとみなす」ため、他の口座の利益との損益通算や繰越控除はできないと明記しています。
よくある誤解として「NISAで損したから確定申告で取り戻せるのでは?」がありますが、結論は取り戻せません。ここはNISAの制度設計上の重要な注意点です。
新NISA 確定申告:判断を間違えない手順
実務では、次の順番で棚卸しすると判断ミスが減ります。
Step 1: その利益はNISA口座内か、口座外かを分ける
まずは「売却益」「配当・分配金」を、NISA口座内と課税口座(特定口座・一般口座)に分解します。NISA内だけなら原則申告不要、課税口座が混ざるなら申告要否の検討に進みます。
Step 2: 配当・分配金の受取方法を確認する
NISAの配当等を非課税とするには、株式数比例配分方式等の要件を満たす必要があります。設定次第で課税扱いになり得るため、証券会社の設定画面・年間取引報告書等で確認します。
Step 3: 課税口座で「損益通算」「繰越控除」を使うか決める
特定口座(源泉徴収あり)でも、損益通算・繰越控除を使うなら確定申告が必要になります。逆に、源泉徴収で完結させるなら申告不要のケースが多いです。
Step 4: 配当の課税方式(総合課税/申告分離課税)を検討する
上場株式等の配当等は、申告分離課税を選択できる制度があります。申告する場合は、申告する配当等の全額について、総合課税か申告分離課税かを選択することになります。
所得状況によって有利不利が逆転するため、配当額、他の所得、社会保険・住民税への影響も含めて試算するのが安全です。
中小企業の税務・経営相談
創業から成長期まで、企業のフェーズに合わせた税務・経営サポートを提供しています。
平日 9:15〜18:15(土日祝休業)
NISA 損益通算できない:何が困る?どこで対策する?
NISAは「非課税メリット」と引き換えに、税務上の柔軟性(損益通算・繰越控除)を持たない制度です。ここを理解しておくと、投資戦略と税務判断が噛み合いやすくなります。
誤解されやすいポイント
- NISAで損失が出ても、他口座の利益と相殺できない
- 確定申告をしても、NISAの損失は繰り越せない
- NISA内での売却損は、税金計算上「なかったこと」になる
配当の受取方法別:課税・非課税の整理(比較表)
設定確認のため、配当等の受取方法と税務上の扱いを整理します。
| 項目 | NISAで非課税になりやすい受取 | 課税扱いになり得る受取 |
|---|---|---|
| 配当等の受取経路 | 証券会社経由(株式数比例配分方式) | 発行者から直接交付される等 |
| NISA口座の非課税適用 | 適用される(要件充足が前提) | 適用されない可能性がある |
| 確定申告との関係 | 原則不要(他要因がなければ) | 所得状況により申告要否を検討 |
※上記は制度上の整理です。実際の申告要否は、所得の種類・金額・他の所得との関係で変わります。
よくある質問
Q: NISAの売却益が出たのですが、確定申告は必要ですか?
A:
NISA口座内で生じた譲渡益は原則非課税のため、通常は確定申告は不要です。課税口座(特定口座・一般口座)でも売却している場合は、その口座側の損益通算・繰越控除の適用有無で申告要否が変わります。Q: NISAの配当金に税金が引かれていました。確定申告で取り戻せますか?
A:
まず配当金の受取方法が株式数比例配分方式になっているかを確認してください。国税庁は、非課税となる配当等が証券会社経由で交付されるものに限られる旨を示しています。設定や受取状況によっては課税扱いとなり、申告要否の検討が必要になります。Q: NISAで損したので、確定申告で損益通算したいです。できますか?
A:
できません。国税庁は、非課税口座で生じた損失はないものとみなされ、他口座の利益との損益通算や繰越控除ができないと明記しています。Q: 特定口座(源泉徴収あり)なら、確定申告は絶対に不要ですか?
A:
絶対ではありません。国税庁は、源泉徴収口座でも、他口座との損益通算や譲渡損失の繰越控除を受ける場合には確定申告が必要としています。税務上の有利を取る目的で申告するケースがあります。まとめ
- NISA口座内の譲渡益・配当等は原則非課税で、通常は確定申告不要
- ただし配当の受取方法によっては課税扱いとなり、申告要否の検討が必要
- 特定口座(源泉徴収あり)でも、損益通算・繰越控除を使うなら確定申告が必要になり得る
- NISAの損失は「ないもの」とされ、損益通算・繰越控除はできない
- 迷ったときは「NISA内か外か」「配当受取方法」「損益通算・繰越控除の適用有無」の順で判定する
参照ソース
- 国税庁「No.1535 NISA制度」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1535.htm
- 国税庁「No.1476 特定口座制度」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1476.htm
- 国税庁「No.1331 上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1331.htm
この記事を書いた人

辻 光明
代表税理士
税理士 / 認定経営革新等支援機関
税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。
ご注意事項
本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。
税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。
記事の内容は法令の改正等により変更される場合があります。 最新の情報については、関係省庁の公式サイト等でご確認ください。
