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中小企業向けコラム
作成日:2026.02.08
辻 光明

執筆者:辻 光明

代表税理士

海外赴任の確定申告|出国前後の手続きを税理士が解説

10分で読めます
海外赴任の確定申告|出国前後の手続きを税理士が解説

海外赴任の確定申告は、「出国時にやること(年末調整・必要なら準確定申告)」「赴任中の課税関係(非居住者の国内源泉所得)」「帰国年の申告(帰国前後の所得を合算)」を押さえると整理できます。問題になりやすいのは、出国時の手続きを失念して申告期限を過ぎてしまうこと、そして非居住者期間の課税対象を誤認することです。

当法人(税理士法人 辻総合会計)では、クリニック・中小企業の海外赴任者対応を含め、30年以上の実務で多数の国際税務相談を受けてきました。以下では、制度の「原則」と「実務でつまずく点」を、出国時・帰国時に分けて解説します(個別事情で結論が変わるため、最終判断は所轄税務署・専門家にご確認ください)。

海外赴任と確定申告の基本|居住者・非居住者で何が変わる?

海外赴任でまず決まるのは、所得税法上の「居住者」か「非居住者」かです。一般に、1年以上の予定で海外の支店等へ転勤・出向する場合、一定の例外を除き非居住者と推定されます。非居住者になると、課税範囲が「国内源泉所得」に絞られ、海外勤務に基づく給与は(日本の法人の役員等の例外を除き)原則として日本の所得税の対象外になります。

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区分課税対象の基本申告が問題になりやすい所得例典型的な手続き
居住者原則として全世界所得国内外の給与、事業所得、不動産所得、配当等年末調整、必要に応じ確定申告
非居住者原則として国内源泉所得のみ国内不動産賃料、国内資産の譲渡、源泉徴収されない国内所得等必要に応じ確定申告、納税管理人の選任
ここがポイント
「1年以上なら必ず非居住者」という機械的判断は危険です。住居・家族帯同・国内での生活拠点の残し方などで判定が揺れることがあります。社内規程や赴任形態だけでなく、実態(生活の本拠)で確認しましょう。

出国前の手続き|海外転勤の確定申告はいつ必要?

海外赴任の「出国時」は、確定申告というより、会社での精算(年末調整)と、個人での追加手続きの有無を切り分けます。

海外転勤(出国時)の年末調整|最後の給与で精算する

海外に転勤・出向する人は、居住者としての最後の給与支給の際に、年末調整で源泉所得税(復興特別所得税含む)を精算する取扱いが基本です。保険料控除は「非居住者となる日までに支払った分」が対象になるなど、通常の年末調整と同じ発想ですが「期間の切り分け」が入ります。

実務で多いミスは、以下です。

  • 生命保険料・地震保険料などの支払時期が出国後になっていて控除対象から外れる
  • 配偶者・扶養の判定を「年末時点」ではなく「出国時の見積り」で行う必要があるのに、通常の感覚で処理してしまう

出国までに準確定申告が必要になるケース

会社給与だけで他の所得がない場合は、出国時の年末調整で完結することが多い一方、一定のケースでは「出国までに確定申告(準確定申告)」が必要になります。典型は次のようなパターンです。

  • 給与収入が高額(例:給与収入2,000万円超など、確定申告が必要な類型)
  • 主たる給与以外に一定の所得がある(副業、投資、国内不動産所得など)
  • 外国税額控除の繰越・還付など、申告で整理したい事項がある(年分・要件に注意)

ここで重要なのが、申告自体と並んで「誰が日本で手続きをするか」です。出国後は本人が税務署とやり取りしにくくなるため、納税管理人の設計が実務の要点になります。

非居住者の確定申告|赴任中に申告が必要な所得とは

非居住者期間は「国内源泉所得のみ課税」が原則ですが、「源泉徴収で完結しない所得」があると申告が必要になります。国税庁の整理では、例えば次のような類型が挙げられます。

  • 国内にある資産の運用・保有から生じる所得(源泉徴収されない取引)
  • 国内資産の譲渡により生じる所得
  • 国内不動産等の貸付けの対価(不動産所得)
  • 国内の営業所等を通じて締結した保険契約等に基づく一時金 など

「海外で給料をもらっているから日本の税は一切関係ない」という理解は誤りで、国内側に所得のタネが残っているかが判定軸です。

納税管理人の選任|出国後の申告・納付の実務インフラ

非居住者で確定申告等が必要になり得る場合、納税管理人を選任し、所轄税務署へ届出を行います。提出時期は「納税管理人を定めたとき又は出国の日まで」が原則で、出国後にバタつくと手続きが遅れがちです。

納税管理人を置くと、以下が現実的になります。

  • 申告書の提出(電子・書面の選択も含む)
  • 納税・還付の受領
  • 税務署からの照会対応(委任範囲に留意)
ここがポイント
納税管理人は「とりあえず親族」でも成立はしますが、申告内容の理解が必要なケース(不動産、株式譲渡、国外転出時課税など)では、手続きだけの代行になり事故が起きやすい点に注意してください。

帰国時の確定申告|帰国年は「前半・後半」を合算して判定

海外勤務者が帰国すると、その年は「途中まで非居住者→途中から居住者」という切替が起きます。帰国後は居住者となるため、課税対象は国内源泉所得に限らず全世界所得へ戻ります。

帰国年の確定申告は、原則として次の発想で計算します。

  • 帰国前:非居住者期間の国内源泉所得(源泉分離課税となるもの等を除く)
  • 帰国後:居住者期間のすべての所得(給与は年末調整対象になり得る)
  • 上記を合計して申告要否と税額を判定

さらに、所得控除の一部は「居住者期間に支払った額を基礎に計算」するなど、控除の取り扱いにも期間要素が入ります。帰国年は「所得の足し算」だけでなく、「控除の計算単位」も確認が必要です。

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出国税(国外転出時課税)|対象者は早めに資産判定を

ロングテールで多いのが「出国税(国外転出時課税)」です。これは、一定の居住者が国外転出する際に、1億円以上の対象資産を保有等している場合に、その含み益に所得税等が課税される制度です(制度の適用要件・対象資産の範囲・評価や例外は個別検討が必要です)。

実務での重要点は次のとおりです。

  • 「海外赴任だから関係ない」ではなく、対象資産の有無と金額で判定が始まる
  • 国外転出時課税の申告をする人が、国外転出等の時までに納税管理人の届出をするなど一定の手続をした場合、担保提供を条件に納税猶予の制度が用意されている(要件確認が必須)
  • 上場株式等を保有する経営者・医師(資産運用をしている方)は、出国前に棚卸しを行うのが安全

出国前後の手続きチェックリスト|海外赴任の確定申告を迷わない手順

最後に、海外赴任前後の流れを、作業順で整理します。

Step 1: 出国時点の居住者・非居住者の見立てを作る

赴任期間、生活拠点、家族帯同、国内住居の扱いを整理し、「1年以上予定」の場合は非居住者推定を前提に検討します。

Step 2: 出国までの会社手続(年末調整)を確実にする

最後の給与で年末調整を行います。控除証明書の提出時期、扶養判定の見積り、保険料控除の支払期限を確認します。

Step 3: 出国までに準確定申告が必要か判定する

給与2,000万円超、給与以外の所得、還付・控除の繰越等がある場合は、出国までの申告要否を検討します。

Step 4: 赴任中に国内源泉所得が残るなら納税管理人を選任する

国内不動産、国内資産の譲渡、源泉徴収されない国内所得が想定される場合、出国前に納税管理人の届出を行います。

Step 5: 帰国年は「帰国前後の所得」と「控除の期間」を合算・切分けして申告判断する

帰国後の給与は年末調整対象になり得ますが、帰国前の国内源泉所得との合算で申告が必要になることがあります。

Step 6: 出国税(国外転出時課税)の対象可能性を資産棚卸しで確認する

1億円判定の前提として、対象資産・評価・保有状況を整理し、該当の可能性があれば出国前に申告・猶予手続きまで設計します。

よくある質問

Q: 海外赴任すると自動的に非居住者になり、日本の確定申告は不要ですか? ▼

A:

自動的に不要にはなりません。1年以上予定の海外転勤等は非居住者と推定されやすい一方、非居住者でも国内源泉所得があれば申告が必要になることがあります。国内不動産賃料や国内資産の譲渡など、国内側に所得が残っていないか確認してください。
Q: 出国前に「準確定申告」をしないといけないのはどんなときですか? ▼

A:

会社給与だけで完結しないケース(給与2,000万円超、給与以外の所得がある、還付・外国税額控除の整理が必要等)で出国までに申告が必要になることがあります。出国後の対応が難しいため、早めに判定し、必要なら納税管理人の設計も同時に行うのが実務的です。
Q: 納税管理人は必ず選任しないといけませんか? ▼

A:

非居住者として確定申告等が必要になる場合は、納税管理人を定めて所轄税務署へ届出する取扱いが案内されています。申告・納付や税務署対応を日本国内で行うための仕組みなので、国内源泉所得が想定される人は出国前に手続きしておくと安全です。
Q: 出国税(国外転出時課税)は一般的な会社員の海外赴任でも関係しますか? ▼

A:

制度は「一定の居住者が国外転出する際に、1億円以上の対象資産を保有等している場合」など要件があります。一般的な会社員は該当しないことも多いですが、上場株式等を多額に保有している場合は検討が必要です。対象資産の範囲や猶予の要件もあるため、出国前に資産の棚卸しを推奨します。

まとめ

  • 海外赴任の確定申告は「出国時の年末調整」「必要なら準確定申告」「納税管理人」「帰国年の申告」が要点
  • 非居住者期間は原則として国内源泉所得のみ課税だが、国内側に所得が残ると申告が必要になり得る
  • 帰国年は「帰国前(非居住者)+帰国後(居住者)」で所得を合算して申告要否を判定する
  • 納税管理人は出国後の申告・納付の実務インフラ。出国前に設計しておくと事故を防ぎやすい
  • 出国税(国外転出時課税)は対象資産1億円などの要件があるため、該当可能性があれば出国前に資産棚卸しと手続設計を行う

参照ソース

  • 国税庁「No.1920 海外勤務と所得税額の精算」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1920.htm
  • 国税庁「A1-7 所得税・消費税の納税管理人の選任届出又は解任届出手続」: https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/07.htm
  • 国税庁「国外転出時課税制度」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kokugai/01.htm

この記事を書いた人

辻 光明

辻 光明

代表税理士

税理士 / 認定経営革新等支援機関

税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。

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