
執筆者:辻 光明
代表税理士
海外FX確定申告の実務|国外送金等調書まで税理士が解説

海外FXや海外口座の利益の確定申告は、「送金したかどうか」ではなく「利益(所得)が発生したかどうか」で決まります。特に、海外口座への入出金は国外送金等調書(一定の送金情報が税務署へ提出される制度)で把握されやすく、申告漏れが後から発見されるリスクがあります。この記事では、海外FX 確定申告の所得区分・計算・申告手順と、国外送金等調書との関係を税理士実務の観点で解説します。
海外FXの確定申告が必要になる利益とは
海外FXで申告対象になるのは、原則として「決済損益」「スワップ(受取)」「キャッシュバック等の実質的なリベート」です。口座に残したままでも、決済により利益が確定していれば所得になります。
送金していなくても課税される(よくある誤解)
「海外口座から日本の口座に送金していないから申告不要」という理解は危険です。日本の居住者(一般的な個人)は、国内外を問わず所得が課税対象になります。したがって、海外口座内で利益が出ていれば、送金の有無にかかわらず申告が論点になります。
海外FX 税金の基本:国内FXとの違いと所得区分
FXの課税は「取引の性質」「相手方(業者)が日本の制度上どう位置づくか」で実務が分かれます。国内FXは一般に「先物取引に係る雑所得等(申告分離課税)」として整理される前提があります。一方、海外FXは業者が日本で登録を受けていないケースが多く、申告分離にならず「雑所得(総合課税)」として扱う整理になることがあります(取引条件により個別判定)。
| 区分 | 所得区分の典型 | 税率・特徴 | 損失の扱い |
|---|---|---|---|
| 国内FX(一般) | 先物取引に係る雑所得等(申告分離) | 所得税15%+住民税5%が基本(復興特別所得税は別途) | 同区分内で損益通算、一定要件で3年繰越 |
| 海外FX(未登録業者が多い) | 雑所得(総合課税)として整理されやすい | 他の所得と合算し超過累進税率 | 原則、他所得との損益通算不可(雑所得内の範囲など制約) |
| 海外口座の利息等 | 利子・配当・雑所得等(内容次第) | 外国税が引かれていれば外国税額控除が論点 | 種類ごとに計算・申告が変わる |
ポイントは「海外FX=必ず申告分離」でも「必ず総合課税」でもなく、取引スキームと法令上の位置づけで整理することです。迷った場合は、取引約款・業者のライセンス状況・取引の実態を資料で確認してから判断します。
国外送金等調書とは?確定申告との関係
国外送金等調書は、国外への送金・国外から受領した送金のうち、一定金額を超えるものについて、送金者・受金者・金額等を記載した調書を金融機関が税務署に提出する仕組みです。国税庁の公表資料では、送金・受領の金額が100万円を超えるものが対象とされています。
ここで重要なのは、国外送金等調書は「課税を自動計算する書類」ではなく、「資金移動の情報」であることです。ただし、次のような形で確定申告と結びつきます。
- 海外口座への多額送金があるのに、申告上は投資所得が見当たらない
- 海外からの受金があるのに、売上や雑所得の計上がない
- FX口座の入出金と、申告した損益の整合が取れない
海外口座 確定申告:利益計算でつまずきやすい3点
1) 円換算(為替レート)の統一
海外口座や海外FXは外貨建ての損益・残高が中心です。確定申告では円換算が必要で、取引日レート・決済日レート・TTM等、合理的で継続した方法が求められます。途中でルールを変えると説明が難しくなるため、年初に運用ルールを決めておくのが安全です。
2) スワップ・手数料・ボーナスの扱い
スワップ(受取/支払)、ロールオーバー、入出金手数料、ボーナスやキャッシュバックは、損益計算に混ざりやすい項目です。年間取引報告書が国内ほど整っていないケースもあるため、CSV明細の保存と集計表の作成が実務上の分岐点になります。
3) 海外で源泉徴収された税金(外国税額控除)
海外口座の利息や一部の投資収益では、現地で税が控除されることがあります。この場合、二重課税調整として外国税額控除の検討が必要です(所得の種類・条約・証憑の有無で可否や書き方が変わります)。
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海外FX 確定申告の手順(実務ステップ)
Step 1: 取引を分類する(国内FX/海外FX/その他)
取引先、商品性、約款、取引所/店頭、登録の有無などから「申告分離の対象になり得るか」「総合課税の雑所得整理か」を切り分けます。ここが最重要です。
Step 2: 年間損益を集計する(証憑を固める)
- 取引明細(HTML/CSV/PDF)
- 入出金履歴(銀行・決済サービス・暗号資産経由ならその履歴)
- スワップ・手数料・ボーナスの明細
- 為替レート採用ルール(TTM等)
これらを揃え、年間の損益計算表を作ります。
Step 3: 所得区分ごとに申告書へ落とし込む
申告分離の「先物取引に係る雑所得等」なら専用の明細書を作成します。総合課税の雑所得なら、雑所得の内訳として根拠資料を整理し、必要に応じて説明書きを添えます。
Step 4: 国外送金等調書に備え、資金移動の説明線を作る
100万円超の送金・受金がある年は、送金目的と損益の対応関係をメモ化します。
例:
- 送金(元本)→海外FX口座入金
- 取引損益→口座残高推移
- 利益送金→日本口座着金→申告した所得
Step 5: 提出後もデータを保全する
海外業者は明細の閲覧期限や仕様変更が起こり得ます。確定申告が終わっても、当年分の証憑はローカルに保存しておくのが鉄則です。
海外FX・海外口座が大きい人は「国外財産調書」も要注意
海外口座そのものの申告とは別に、一定規模以上の国外財産を保有している場合は国外財産調書の提出義務が論点になります。制度上、提出がない・不備がある状態で申告漏れがあると、加算税が加重され、適正提出があると軽減される仕組みが用意されています。資産規模が大きい方ほど、所得の申告と合わせて管理体制を整える必要があります。
よくある質問
Q: 海外FXの利益を海外口座に置いたままなら申告不要ですか?
A:
原則不要にはなりません。利益(所得)が確定していれば、送金の有無にかかわらず申告対象になり得ます。送金がなくても、取引明細や入出金履歴から説明できるようにしておくことが重要です。Q: 国外送金等調書が出ると必ず税務署から連絡が来ますか?
A:
直ちに連絡が来るとは限りません。国外送金等調書は「資金移動情報」なので、それ自体が課税を意味しません。ただし、申告内容と資金移動の整合が取れないと調査リスクが高まるため、説明資料を用意しておくべきです。Q: 海外FXは一律で申告分離課税(20.315%)ですか?
A:
一律ではありません。国内FXで一般的な「先物取引に係る雑所得等(申告分離)」の整理に当てはまらず、雑所得(総合課税)として整理されるケースがあります。業者・契約・取引形態を踏まえて個別に判定します。Q: 海外口座の利息に外国で税金が引かれていました。日本でも税金がかかりますか?
A:
日本でも課税対象になり得ますが、二重課税を調整するために外国税額控除を検討します。控除の可否や手続は所得の種類や証憑の有無で変わるため、書類を揃えたうえで判断します。まとめ
- 海外FX・海外口座の申告は「送金の有無」ではなく「利益(所得)の発生」で判断する
- 海外FXは、国内FXと同じ申告分離にならず、雑所得(総合課税)整理が必要なことがある
- 国外送金等調書は資金移動情報で、100万円超の送金等は金融機関から税務署へ提出される
- 円換算ルール、明細保存、スワップ等の扱いが実務のつまずきポイント
- 資産規模が大きい場合は国外財産調書も含めて管理体制を整える
参照ソース
- 国税庁「No.1521 外国為替証拠金取引(FX)の課税関係」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1521.htm
- 国税庁「Ⅲ 適正・公平な課税・徴収(国外送金等調書の概要)」: https://www.nta.go.jp/about/introduction/torikumi/report/2023/03_4.htm
- 国税庁「No.7456 国外財産調書の提出義務」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hotei/7456.htm
この記事を書いた人

辻 光明
代表税理士
税理士 / 認定経営革新等支援機関
税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。
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