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中小企業向けコラム
作成日:2025.01.10
更新日:2026.01.02
辻 光明

執筆者:辻 光明

代表税理士

給与計算の基本|総支給額から手取りまでの流れ

7分で読めます
給与計算の基本|総支給額から手取りまでの流れ

給与計算の基本とは(総支給額から手取りまで)

給与計算とは、従業員の勤怠・契約条件に基づき「支給額(総支給額)」を確定し、法定控除(社会保険料・税)や会社独自の控除を差し引いて、最終的な手取り(差引支給額)を算定する実務です。ミスが起きると従業員の生活に直結し、追徴・追加徴収や信頼低下にもつながります。特に中小企業では、経理・人事が兼務のケースが多く、計算の流れを型化しておくことが重要です。

総支給額・控除・手取りの違い(用語を整理)

総支給額とは

総支給額は、基本給に加えて残業代・各種手当など「支給する金額の合計」です。ここには、課税対象のものも非課税のものも混在します(例:通勤手当は一定範囲で非課税)。

控除とは

控除は、給与から天引きする金額です。代表例は社会保険料(健康保険・厚生年金保険など)と税金(所得税・住民税)です。

手取り(差引支給額)とは

手取りは、総支給額から控除を差し引いた「実際の振込額(現金支給額)」です。給与明細で最も注目されるため、説明できる状態にしておきましょう。

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項目定義例
総支給額支給項目の合計基本給、残業、役職手当、通勤手当 等
控除合計天引き項目の合計健康保険、厚生年金、所得税、住民税、社内控除 等
差引支給額(手取り)総支給額−控除合計口座振込額
ここがポイント
「総支給額=手取り」ではありません。特に社会保険加入の有無で手取りは大きく変わります。近年は短時間労働者の社会保険適用が拡大しているため、加入判定の確認が実務上の重要ポイントです。

給与計算の手順(総支給額から手取りまでの流れ)

給与計算は、月次のルーティンとして「入力→計算→チェック→支払」に分解すると安定します。

Step 1: 勤怠データを確定する(締日管理)

残業・深夜・休日、欠勤控除、有給付与・取得など、支給額に影響する勤怠を確定します。締日と支給日のズレ(例:月末締め翌月25日払い)では、計上月・社会保険の控除月も含めてルール化が必要です。

Step 2: 支給項目を計算し、総支給額を確定する

基本給、時間外手当、役職手当、通勤手当などを合算して総支給額を確定します。課税・非課税の区分もここで整理します。

Step 3: 社会保険料を控除する(標準報酬月額・賞与)

健康保険・厚生年金保険などは、原則として標準報酬月額や標準賞与額に基づき計算します。厚生年金保険料率は固定されており、料額表を使う運用が一般的です。

Step 4: 所得税(源泉徴収)を控除する

所得税は「源泉徴収税額表(月額表)」等により毎月控除します。扶養控除等申告書(甲欄・乙欄の判定)など、前提情報の整備が精度を左右します。

Step 5: 住民税(特別徴収)を控除する

住民税は原則として市区町村が通知する月割額(通常6月〜翌年5月)を天引きします。年の途中入社・退職では、普通徴収への切替や一括徴収など対応が分かれるため、通知書と異動届の運用ルールを決めておきます。

Step 6: 差引支給額を確定し、振込データを作成する

最終の差引支給額を確定し、振込データを作成します。支給・控除の内訳が説明できるよう、給与明細の表記を統一します。

給与計算でよくある注意点・リスク(ミスの温床)

社会保険の加入判定(短時間労働者の適用拡大)

パート・アルバイトでも、企業規模や労働条件により社会保険の加入対象になります。加入漏れは遡及加入や従業員負担の追加徴収につながるため、雇用契約変更やシフト変更のタイミングで再判定しましょう。

標準報酬月額の改定(定時決定・随時改定)

毎月の手当設計や残業が増えた月が続くと、標準報酬月額が改定され、控除額が変動します。給与計算担当者と労務担当者で情報が分断すると見落としやすい領域です。

非課税・課税の混同(通勤手当など)

通勤手当の非課税限度額の取扱いなど、税制改正・通達改正があると年末調整で調整が必要になる場合があります。「いつから適用か」を確認し、月次での処理方針を決めておくと混乱を防げます。

ここがポイント
年末調整は「毎月の源泉徴収が正しい前提」で精算します。月次の前提(扶養・区分・手当の課税区分)が崩れると、年末に過不足が大きくなり、従業員対応の負担が跳ね上がります。

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総支給額から手取りまで(簡易シミュレーション例)

以下は概念理解のための例です。実際は加入保険者や都道府県、扶養状況、控除の有無で変動します。

  • 総支給額:300,000円(基本給+残業等)
  • 社会保険料:標準報酬月額に基づく(健康保険・厚生年金等)
  • 所得税:源泉徴収税額表(月額表)で算定
  • 住民税:市区町村通知の月割額

手取りは、概ね「総支給額−社会保険料−所得税−住民税−社内控除」で決まります。実務では、まず控除の順序と根拠(料額表/税額表/通知書)を固定し、担当者が変わっても再現できる状態を目指します。

よくある質問

Q: 給与明細の「差引支給額」と「手取り」は同じ意味ですか? ▼

A:

一般的には同義です。総支給額から社会保険料・税金・社内控除を差し引いた「最終的に支給する金額(振込額)」を指します。
Q: 源泉徴収税額はどうやって決めますか? ▼

A:

原則として国税庁の源泉徴収税額表(月額表・日額表)を用い、扶養控除等申告書の提出有無(甲欄・乙欄)や支給額に応じて決定します。賞与は算出率の表を用いるのが一般的です。
Q: パートでも社会保険に入りますか? ▼

A:

条件により加入します。企業規模や週所定労働時間、所定内賃金などの要件を満たす短時間労働者は、健康保険・厚生年金保険の加入対象になります。適用拡大の対象範囲は段階的に広がっているため、最新の要件を確認してください。
Q: 住民税が急に変わるのはなぜですか? ▼

A:

住民税は原則として前年所得に基づき年税額が決まり、通常は6月から翌年5月までの月割で徴収されます。途中で税額変更が出るのは、申告内容の修正や扶養状況の変更が後から反映された場合などが典型です(自治体から変更通知が届きます)。

まとめ

  • 給与計算は「総支給額−控除=手取り(差引支給額)」が基本
  • 実務は「勤怠確定→支給確定→社会保険→所得税→住民税→振込」の順で型化する
  • 社会保険の加入判定(適用拡大)と標準報酬の改定はミスが起きやすい
  • 源泉徴収は税額表、住民税は自治体通知に基づき処理する
  • 月次の前提整理が年末調整・監査対応の品質を決める

参照ソース

  • 国税庁「令和7年分 源泉徴収税額表」: https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/zeigakuhyo2024/02.htm
  • 日本年金機構「厚生年金保険料額表(保険料率18.3%等)」: https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/ryogaku/ryogakuhyo/index.html
  • 厚生労働省「社会保険適用拡大(加入条件・対象)」: https://www.mhlw.go.jp/tekiyoukakudai/koujirei/jigyonushi/taisho/
  • 国税庁「令和7年分 年末調整のしかた」: https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/nencho2025/01.htm

この記事を書いた人

辻 光明

辻 光明

代表税理士

税理士 / 認定経営革新等支援機関

税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。

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