
執筆者:辻 光明
代表税理士
不動産所得の確定申告|収入と経費計算を税理士が解説

不動産所得の確定申告とは
家賃収入の確定申告は、「家賃などの総収入金額」から「必要経費」を差し引いて、不動産所得(もうけ)を計算し、所得税の申告につなげる手続きです。つまり、賃貸経営の確定申告で最も大事なのは、収入に入れるもの・経費にできるものを正確に切り分けることです。
実務では「家賃は入金ベースでよいのか」「敷金や更新料は収入?」「修繕費と資本的支出の違いは?」といった点で迷うことが多く、ここを誤ると税額がズレるだけでなく、税務調査で説明が難しくなります。税理士法人 辻総合会計では、クリニックオーナーや資産家の賃貸経営を含む申告・記帳支援を長年行ってきましたが、結局のところ“ルールに沿って淡々と集計できる形”に落とし込むのが最短ルートです。
家賃収入の確定申告で「収入」に含める範囲
不動産所得は、国税庁の整理どおり「総収入金額 − 必要経費」で計算します。総収入金額には家賃だけでなく、性質により収入に含めるべきものが混在します。賃貸借契約書と入金明細を突合して、収入の中身を分解するのが実務の基本です。
家賃以外で収入になりやすいもの
国税庁の考え方では、例えば次のようなものが総収入金額に含まれます。
- 更新料・名義書換料・承諾料など、名目を問わず受け取る対価
- 敷金・保証金のうち、返還しないことが確定した部分
- 共益費等の名目で受け取る水道光熱・清掃代など(実費精算でも形式により整理が必要)
収入計上のタイミング(いつの年の収入にするか)
年をまたぐ入金(例:12月分家賃の翌月入金、滞納の回収など)がある場合、収入計上時期で迷いがちです。国税庁の「不動産所得の収入計上時期」の考え方に沿って、契約形態と入金状況に応じて整理します(毎年のルールを固定し、継続適用できる状態が重要です)。
不動産所得の経費とは
不動産所得の必要経費は、「不動産収入を得るために直接必要な費用」で、家事関連費と明確に区分できるものに限られます。国税庁が例示する代表的な費目には、固定資産税、損害保険料、減価償却費、修繕費などがあります。“賃貸のために必要だったか”を証憑で語れるかが判断軸です。
不動産所得で経費にしやすい代表例
- 固定資産税(貸付資産に係るもの)
- 火災保険・地震保険などの保険料
- 管理会社への管理委託料、共用部清掃費、設備点検費
- 修繕費(原状回復や維持管理の範囲)
- 借入金の利子(元本返済は経費にならない)
- 減価償却費(建物・設備等の取得価額を耐用年数で配分)
経費判断で揉めやすい論点(修繕費 vs 資本的支出)
現場で最も多いのが、リフォーム・設備入替が「修繕費」か「資本的支出」かの判定です。支出の目的が“維持・原状回復”なのか、“価値の増加や耐用年数の延長”なのかで処理が分かれ、後者は一括経費にならず、原則として資産計上して減価償却になります。見積書や工事内容の内訳(どこを、何のために、どう変えたか)が結論を左右します。
収入と経費の計算方法
不動産所得の計算はシンプルですが、実務では“集計単位”を誤ると混乱します。おすすめは、物件別(建物単位)に収入・経費を集計し、減価償却も物件別に紐づける運用です。
計算の基本式と、よくある収入・経費の対応表
不動産所得の金額は、国税庁のとおり次の式で計算します。
- 不動産所得 = 総収入金額 − 必要経費
| 区分 | 具体例 | 取り扱いの考え方 |
|---|---|---|
| 収入に入る | 家賃、共益費、更新料等 | 賃貸の対価として受領したものは原則収入 |
| 収入にならない(将来返還) | 敷金・保証金(返還予定) | 返還義務がある限りは収入にしない整理が一般的 |
| 経費にしやすい | 管理費、修繕費(維持)、保険料、固定資産税 | 不動産収入を得るために直接必要な費用 |
| 経費にならない/要注意 | 借入元本、私的支出、資本的支出の一括計上 | 目的・性質で除外または資産計上へ |
減価償却の考え方(ざっくりで良いが、外せない)
減価償却は、建物や設備などの取得価額を耐用年数で配分する考え方です。賃貸経営では金額影響が大きく、特に中古取得・設備更新がある場合に重要です。税務上の計算は個別事情(取得時期、建物と設備の区分、耐用年数、事業供用開始日など)で変わるため、会計ソフトの固定資産台帳で管理し、毎年同じロジックで回せる形に整えるのが安全です。
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賃貸経営の確定申告の手順
ここでは「何を集め、どこに入力するか」を最短で回せるように、実務フローをステップ化します。先に“資料の型”を固定すると、翌年以降が劇的に楽になります。
Step 1: 物件別に「収入」と「支出」を整理する
- 賃貸借契約書、賃料明細、通帳入金、管理会社レポートをそろえる
- 家賃・共益費・更新料などを月別に集計(年をまたぐ入金はルール化)
Step 2: 必要経費を科目ごとにまとめ、証憑をひも付ける
- 管理費、修繕費、保険料、税金、支払利息などを科目別に集計
- 修繕・リフォームは見積書明細と工事内容がわかる資料を保存
Step 3: 減価償却(固定資産台帳)を更新する
- 建物・設備の取得価額、耐用年数、償却方法、供用開始日を確認
- 設備入替がある場合は「除却」と「新規取得」を整理
Step 4: 申告書(不動産所得)を作成・提出する
- 国税庁の確定申告書等作成コーナー(不動産所得)で入力し、付表・明細も作成
- e-Taxで提出する場合は、添付書類の要否も確認して保存体制を整える
よくある質問
Q: 家賃収入の確定申告は、家賃だけ入力すれば終わりますか?
A:
いいえ。家賃以外に更新料・共益費などが収入に含まれることがあり、逆に敷金等は返還義務の有無で取り扱いが変わります。まず「何が収入か」を分解し、必要経費(修繕費、管理費、保険料、固定資産税、減価償却等)まで揃えて不動産所得を計算します。Q: リフォーム費用は全部「修繕費」で経費にできますか?
A:
目的と内容によります。維持管理・原状回復の範囲なら修繕費になりやすい一方、価値の増加や耐用年数の延長につながる内容は資産計上して減価償却となるのが原則です。見積書の明細や工事内容の説明資料を残し、区分根拠を作るのが重要です。Q: 共益費や水道光熱費を入居者からもらっています。収入ですか?
A:
形式や契約内容によりますが、受領したものは収入に含め、対応する支出を必要経費にする整理が分かりやすいケースが多いです。実費精算でも、証憑とセットで説明できる形にしておくと安全です。まとめ
- 不動産所得は「総収入金額 − 必要経費」で計算し、家賃以外の収入も混在する
- 必要経費は「不動産収入を得るために直接必要な費用」に限られ、私的支出は除外
- 修繕費と資本的支出の判定は税務上の重要論点で、見積書明細と工事内容の保存が鍵
- 減価償却は影響額が大きいため、固定資産台帳で物件別に継続管理する
- 申告は作成コーナー等を活用しつつ、資料の型を固定して翌年以降を効率化する
参照ソース
- 国税庁「No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1370.htm
- 国税庁「確定申告書等作成コーナー(不動産所得)」: https://www.keisan.nta.go.jp/r6yokuaru/cat2/cat21/cat211/index.html
- 国税庁「確定申告書等作成コーナー(不動産所得の計算方法)」: https://www.keisan.nta.go.jp/r5yokuaru/cat2/cat21/cat211/cid153.html
この記事を書いた人

辻 光明
代表税理士
税理士 / 認定経営革新等支援機関
税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。
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