
執筆者:辻 光明
代表税理士
障害者控除の確定申告|要介護認定と要件を税理士が解説

障害者控除は確定申告で受けられる?結論と全体像
障害者控除とは、納税者本人、同一生計配偶者、扶養親族が「所得税法上の障害者」に当てはまる場合に受けられる所得控除です。結論から言うと、障害者手帳等がなくても要件を満たせば確定申告で適用可能ですが、要介護認定だけでは原則として障害者控除の対象になりません。一方で、65歳以上で一定の状態にある方は、市区町村長等の認定により対象となるケースがあります。
ご家族の介護が始まると「税務の手続きは後回し」になりがちです。しかし、障害者控除は年末調整だけでなく確定申告でも適用でき、家計への影響も小さくありません。親が要介護になったタイミングで「自分の扶養に入れているが控除は取れるのか」「特別障害者控除になるのか」を整理しておくことが重要です。
本記事では、税理士法人 辻総合会計の実務経験を前提に、障害者控除の対象要件、要介護認定との関係、確定申告での手続き、よくある落とし穴を体系的に解説します(個別事情で結論が変わるため、最終判断は資料確認のうえで行ってください)。
障害者控除の対象と控除額
障害者控除の対象者
障害者控除は、次のいずれかが「所得税法上の障害者」に該当する場合に使えます。
- 納税者本人
- 同一生計配偶者(所得要件を満たす配偶者)
- 扶養親族(年齢にかかわらず。16歳未満でも障害者控除自体は適用対象)
ここで重要なのは、「障害者手帳がある=必ず対象」「手帳がない=対象外」と単純化できない点です。手帳等に加え、65歳以上の高齢者については、市町村長等の認定で対象になり得る枠があります。
控除額(一般・特別・同居特別の違い)
障害者控除の金額は、区分により次のとおりです。
| 区分 | 控除額 | 典型例(イメージ) |
|---|---|---|
| 障害者 | 27万円 | 身体障害者手帳(軽度を含む)等で該当 |
| 特別障害者 | 40万円 | 身体障害者手帳1・2級、精神障害者保健福祉手帳1級等 |
| 同居特別障害者 | 75万円 | 特別障害者で、納税者等と同居が常況 |
ポイントは、「特別障害者」かつ「同居が常況」なら75万円になることです。実務では「同居の判定」があいまいになりやすいため、住民票や生活実態(常況)も含めて整理しておくのが安全です。
障害者控除と要介護認定の関係(要介護の親は対象?)
要介護認定だけでは、原則として障害者控除の対象にならない
介護保険の「要介護認定」は介護サービスの必要度を判定する制度で、所得税の障害者控除とは別枠です。国税庁の整理でも、要介護認定を受けただけでは障害者控除の対象とはならないとされています。
ただし、要介護認定が無意味ということではありません。次の「市町村長等の認定」や「寝たきりの状態」など、税法上の要件を満たすことを検討する入口になる、という位置づけです。
65歳以上は「市町村長等の認定」で対象になることがある
65歳以上で、知的障害者・身体障害者に準ずる程度の障害がある場合、「市町村長(特別区長)や福祉事務所長の認定」を受けて障害者控除の対象となる枠があります。実務でよく出てくるのが、自治体が発行するいわゆる「障害者控除対象者認定書(名称は自治体により異なる)」です。
介護の現場では、手帳の取得まで至らない(または申請していない)ケースが多く、要介護の親についてこの認定書で障害者控除を適用する相談が増えています。自治体ごとに判定基準・申請書式が異なるため、「要介護〇だからOK」と決め打ちせず、認定の有無で判断するのが実務の安全策です。
「寝たきり」等で特別障害者になるケースもある
税法上、一定の条件を満たす「寝たきりで複雑な介護が必要」な状態が、特別障害者として扱われる枠があります。ポイントは、年末(12月31日)の現況で、一定期間以上の継続や状態の程度が要件になることです。要介護認定の等級とイコールではないため、医療・介護記録や状況の整理がカギになります。
障害者控除を確定申告で適用する方法(年末調整との違い)
年末調整で漏れたら、確定申告で取り戻せる
会社員の方は、障害者控除は年末調整で反映できます。ですが、介護が始まった年は手続きが間に合わず、年末調整に間に合わないことも珍しくありません。その場合でも、確定申告で障害者控除を適用して還付を受けることが可能です。
また、年の途中で状態が変化した場合でも、要件を満たしていればその年分での適用を検討できます(いつから適用できるかは事実関係に依存します)。
確定申告のステップ(実務フロー)
Step 1: 誰の控除にするか整理する(本人・配偶者・扶養)
親の分を子が取るなら、「同一生計(生計を一にする)」と「扶養親族の要件」をまず確認します。別居でも仕送り等で生計が一なら対象になり得ます。
Step 2: 障害者区分を確定する(27万/40万/75万)
手帳の等級、自治体の認定、同居の常況を確認し、区分を確定します。特に「同居特別障害者」かどうかは税額に影響が大きいため、丁寧に判定します。
Step 3: 証明書類を用意する
- 身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳など
- 65歳以上で市町村長等の認定を受けた場合:認定書(障害者控除対象者認定書等)
- 同居の確認に必要な資料(住民票、施設入所契約、介護記録等はケースにより)
Step 4: 申告書(確定申告書等)に反映して提出する
国税庁の確定申告書等作成コーナー等で、障害者控除の入力欄に該当区分と人数を入力します。電子申告(e-Tax)でも手続き可能です。
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よくある落とし穴とチェックポイント
「要介護=障害者控除OK」と誤認する
前述のとおり、要介護認定だけで自動的に障害者控除が取れるわけではありません。特に、介護度が低い場合(要支援・要介護1など)は誤認が起きやすいです。
同居特別障害者(75万円)の判定があいまい
75万円はインパクトが大きい分、判定が重要です。親が施設に入っている、長期入院している、住民票は同じだが実態は別居、などは要注意です。生活の本拠や同居の常況を、事実ベースで整理しておきましょう。
「扶養に入れていないのに控除だけ取りたい」
障害者控除を子が取る場合、原則として「同一生計配偶者」または「扶養親族」である必要があります。所得状況や仕送り等で条件を満たさないと、控除は取りにくくなります。扶養とセットで考えるのが実務上の定石です。
よくある質問
Q: 要介護3の母ですが、障害者控除は確定申告で受けられますか?
A:
要介護認定だけでは原則対象外です。ただし、65歳以上で身体障害者等に準ずる状態として市町村長等の認定を受けた場合などは対象になり得ます。お住まいの自治体で「障害者控除対象者認定書」等の発行可否を確認し、その認定内容に基づいて申告します。Q: 親が特別養護老人ホームに入所しています。同居特別障害者(75万円)になりますか?
A:
「同居を常況としているか」がポイントで、施設入所の場合は同居判定が難しくなることがあります。特別障害者に該当しても、同居特別(75万円)ではなく特別(40万円)にとどまるケースもあります。住民票だけでなく生活実態を含め、個別に判定が必要です。Q: 年末調整で障害者控除を出し忘れました。確定申告で取り戻せますか?
A:
はい、年末調整で反映できなかった場合でも、要件を満たすなら確定申告で障害者控除を適用して還付を受けられます。証明書類(手帳や市町村長等の認定書)を準備し、申告書に区分と人数を入力してください。Q: 「障害者」と「特別障害者」はどう区別しますか?
A:
手帳の等級や認定内容で区別します。たとえば身体障害者手帳1・2級、精神障害者保健福祉手帳1級などは特別障害者に該当します。区分により控除額が27万円/40万円(同居なら75万円)と変わるため、根拠資料の等級・内容を確認して判断します。まとめ
- 障害者控除は、本人・同一生計配偶者・扶養親族が税法上の障害者に該当すれば確定申告でも適用できる
- 要介護認定だけでは原則対象外。65歳以上は市町村長等の認定で対象になることがある
- 控除額は27万円(障害者)・40万円(特別障害者)・75万円(同居特別障害者)
- 申告は「区分の判定」「同居の常況」「証明書類(手帳・認定書)」が実務の要点
- 施設入所や別居扶養など境界ケースは、事実関係の整理と個別判断が重要
参照ソース
- 国税庁「No.1160 障害者控除」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1160.htm
- 国税庁「No.1185 市町村長等の障害者認定と介護保険法の要介護認定について」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1185.htm
この記事を書いた人

辻 光明
代表税理士
税理士 / 認定経営革新等支援機関
税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。
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