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中小企業向けコラム
作成日:2026.02.08
辻 光明

執筆者:辻 光明

代表税理士

事業所得と雑所得の違い|300万円基準を税理士が解説

7分で読めます
事業所得と雑所得の違い|300万円基準を税理士が解説

結論:300万円は「区分の決定基準」ではなく、主に保存・計算ルールの話です

副業の所得区分で悩むポイントは、「事業所得(事業)として扱えるか」「雑所得(主に業務に係る雑所得)として扱うか」です。結論から言うと、300万円は“事業所得か雑所得か”を機械的に決める基準ではありません。国税庁の説明では、300万円は主に「業務に係る雑所得」における書類保存や現金主義の特例など、実務ルールに登場します。

つまり、「売上(収入)が300万円を超えたから事業所得」「300万円以下だから雑所得」と短絡しないことが重要です。税理士法人 辻総合会計でも、副業の区分は“実態”の整理から入る相談が多いテーマです。

事業所得と雑所得の違いを一枚で整理

まず制度の立て付けを押さえましょう。国税庁の定義では、事業所得は「事業から生ずる所得」、雑所得は「他のいずれの所得にも当たらない所得」です。

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観点事業所得雑所得(主に業務に係る雑所得)
位置づけ事業(継続的な営利活動)から生じる所得副業等の収入で、他区分に当たらない所得
計算総収入金額−必要経費総収入金額−必要経費
損失の取扱い他の所得との損益通算が可能(一定要件の範囲)損益通算できない
青色申告原則、可能(届出等の要件あり)原則、不可
帳簿・書類青色要件や記帳水準が実務上重い収入規模により保存義務等が明確化
ここがポイント
「どちらの方が税金が安いか」よりも、まずは区分に合った証拠(取引実態・帳簿・契約関係)を整えることが重要です。区分を誤ると、損益通算や経費否認などの論点が連鎖します。

事業所得・雑所得の判断基準:税務調査で見られる“実態”の着眼点

法律上、「ここまでやれば必ず事業所得」という単一の線引きはありません。実務では次のような要素を総合して判断します(いわゆる“社会通念”の整理です)。

  • 営利性・有償性:対価を得る目的が明確か(趣味の延長ではないか)
  • 反復継続性:単発ではなく、継続して取引があるか
  • 規模・投入量:作業時間、取引件数、設備投資、外注、人を雇っているか
  • 独立性:自己の判断で価格設定や受注をしているか(会社員の“従たる”労務提供に近すぎないか)
  • 記帳・管理:見積・請求・入金管理、経費管理、領収書整理、帳簿の整備
  • 営業実態:屋号、サイト・SNS、広告、固定客、継続契約の有無

ポイントは、「継続して利益を得るための仕組み」があるかです。ここが弱いと、収入が増えていても雑所得として整理される余地が残ります。

300万円基準の正しい意味:どこで登場するのか

「300万円基準」は、主に“業務に係る雑所得”に関連して登場します。国税庁の説明では、令和4年分以後、前々年分の業務に係る雑所得の収入金額が300万円を超える場合に、現金預金取引等関係書類の保存が必要になる旨が示されています。また、前々年分の収入金額が300万円以下の場合は、いわゆる現金主義の特例(一定の記載要件あり)が使える旨も示されています。

ここから読み取れる実務上の整理は次のとおりです。

  • 300万円は「雑所得側のルール(保存・計算)」で出てくる数字であり、区分決定そのものではない
  • ただし、収入規模が拡大しているなら、事業性(継続性・管理体制)が問われやすくなるため、帳簿・契約・収支管理を整えるほど事業所得の説明力が上がる

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副業の判定ステップ:迷ったときの実務フロー

Step 1: 収入の性質を分類する

  • 役務提供(デザイン、ライティング、コンサル、配信等)か
  • 物販(仕入・在庫・発送)か
  • 資産運用(暗号資産など)か
    ※暗号資産などは論点が別立てになりやすいので、まずは取引類型を分けます。

Step 2: “事業の骨格”があるかを点検する

  • 継続契約・固定客、価格表、見積書、請求書、入金管理
  • 作業場所・設備・外注・広告など、継続収益を作る仕組み

Step 3: 帳簿と証憑を整備し、説明可能性を上げる

  • 売上台帳(入金ベースではなく請求ベースも検討)
  • 経費の根拠(領収書、カード明細、契約書、家事按分の根拠)
  • 収益と費用の対応(必要経費の考え方の基本を押さえる)

Step 4: 区分を確定申告書へ反映する

  • 事業所得なら、青色申告の検討(期限・要件に注意)
  • 雑所得なら、損益通算ができない前提で資金繰りを設計

よくある副業ケース:事業所得になりやすい/雑所得になりやすい

  • Web制作・デザイン:継続顧客、見積・請求、外注活用などがあれば事業性が説明しやすい
  • ライター・編集:継続受託と編集体制(請求・納品管理)が整うほど事業寄り
  • せどり・物販:仕入・在庫・販売管理の仕組みがあると事業性が立ちやすい
  • フリマの不用品販売:反復継続性・営利性が弱ければ事業性は出にくい
  • 趣味の延長の単発収入:継続性が弱い場合は雑所得整理が多い
ここがポイント
同じ「副業」でも、継続契約の有無や帳簿の整備度で結論が変わることがあります。区分に迷う場合は、先に“証拠の形”を整える方が結論が安定します。

よくある質問

Q: 副業の売上が300万円を超えたら自動的に事業所得ですか? ▼

A:

自動的には決まりません。300万円は主に「業務に係る雑所得」における保存・計算上のルールで登場します。区分は営利性・継続性・管理体制など実態で総合判断します。
Q: 雑所得だと赤字を給与所得と相殺(損益通算)できますか? ▼

A:

原則できません。雑所得の損失は他の所得と損益通算できないとされています。赤字が出やすい副業は、区分判断と同時に資金繰りも検討が必要です。
Q: 経費は事業所得と雑所得で変わりますか? ▼

A:

どちらも「収入を得るために直接必要な費用」等が必要経費になりますが、実務では帳簿・証憑・家事按分の根拠など“説明可能性”がより重要になります。必要経費の基本的な考え方は国税庁の整理に沿って確認してください。

まとめ

  • 事業所得と雑所得は、損益通算・青色申告などの取扱いが大きく異なる
  • 区分は「営利性・反復継続性・規模・独立性・記帳」など実態で総合判断
  • 300万円は区分決定の機械的基準ではなく、主に雑所得側の保存・計算ルールで登場する
  • 迷ったら、取引実態(契約・請求)と帳簿・証憑を整備して説明力を上げる
  • 個別事情で結論が変わるため、判断に不安がある場合は税理士へ相談を推奨

参照ソース

  • 国税庁「No.1350 事業所得の課税のしくみ(事業所得)」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1350.htm
  • 国税庁「No.1500 雑所得」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1500.htm
  • 国税庁「No.2210 必要経費の知識」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2210.htm

この記事を書いた人

辻 光明

辻 光明

代表税理士

税理士 / 認定経営革新等支援機関

税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。

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