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中小企業向けコラム
作成日:2025.02.21
更新日:2026.01.02
辻 光明

執筆者:辻 光明

代表税理士

借り換え・一本化で資金繰り改善する交渉術|税理士が解説(2026)

9分で読めます
借り換え・一本化で資金繰り改善する交渉術|税理士が解説(2026)

結論:借り換え・一本化で何が変わるか

借り換え・一本化とは、既存借入を「より有利な条件の借入」に置き換えたり、複数の借入をまとめて返済計画を組み直すことで、返済総額と月次キャッシュフローを最適化する取り組みです。特に、複数行取引や借入本数が多い中小企業・クリニックでは、返済管理の複雑さと金利条件のばらつきが課題になりやすく、交渉の優先順位付けが重要になります。

税理士法人 辻総合会計では、30年以上にわたり中小企業・医療系法人の資金繰り相談に携わり、借換や条件変更の「通る整理の仕方」を数多く見てきました。本記事では、実務で失敗しやすい論点(手数料・保証・担保・返済期間)と、金融機関との交渉手順を具体化します。

借り換え・一本化とは(違いも解説)

借り換えとは

借り換えは、現在の借入を完済し、新しい借入に切り替えることです。狙いは主に以下です。

  • 金利引下げ(固定→変動、またはその逆を含む)
  • 返済期間の再設計(毎月返済の平準化)
  • 担保・保証・条項(コベナンツ)の見直し

ここで重要なのは、表面金利だけで判断しないことです。保証料・手数料・繰上返済手数料などを含めた実質金利で比較します。

一本化(おまとめ)とは

一本化は、複数の借入を1本(または少数)にまとめ、返済条件を再構成することです。借入本数が多いほど管理負担が増え、資金繰りの意思決定(追加投資・設備更新)が遅れやすくなります。一本化は「管理の簡素化」と「返済計画の見える化」に強みがあります。

条件変更(リスケ)との違い

条件変更は、既存借入を完済せずに返済条件だけを変更する手続です。借り換え・一本化に比べ、スピード面で有利な一方、条件や金融機関のスタンスにより、追加融資が難しくなる場合があります。目的が「一時的な資金繰りショート回避」なのか、「中期の構造改善」なのかで選択が変わります。

借り換え・一本化のメリット

金利・返済期間の最適化でキャッシュフローを改善

金利が下がれば利息負担が減ります。さらに返済期間の延長・元金据置の設計で、月次の支出を平準化できます。資金繰りでは「利益」よりも「現金の出入り」が先に効きます。返済条件の見直しは、資金繰り改善の即効策になり得ます。

返済管理の簡素化と金融機関対応の効率化

借入本数が多いと、返済日・返済額・金利見直し・更新手続が分散し、管理コストが上がります。一本化は管理を簡素化し、資金繰り表の精度を上げ、金融機関への説明も一貫しやすくなります。

「将来の追加融資」を見据えた信用設計ができる

借換や一本化は、単なる金利の話ではなく、金融機関に対して「返済可能性が高い形に整える」行為でもあります。返済能力(DSCRなど)や事業計画が整うほど、追加融資・当座枠・設備投資資金の相談がしやすくなります。

デメリット・注意点(失敗しやすい論点)

手数料・保証料込みで損得を判定する

借り換えは、金利が下がっても手数料・保証料で相殺されることがあります。比較の基本は「借換後の総支払額(元金+利息+諸費用)」です。特に保証協会付融資は、保証料の扱いが論点になります。

担保・保証・条項が「重くなる」リスク

借換で条件が良くなる一方、担保追加や代表者保証、財務制限条項(コベナンツ)追加が求められる場合があります。金利だけで飛びつくと、経営の自由度が下がる可能性があります。

返済期間の延長は「総額増」に注意

月々は楽になりますが、期間が延びると利息総額が増えることがあります。「資金繰り改善(短期)」と「総支払額最小化(長期)」のバランスを設計してください。

ここがポイント
コロナ関連の借換スキームや資金繰り支援策は、時期により取り扱いが変わります。制度の名称に引きずられず、「自社が使える枠」「必要書類」「保証割合」「保証料負担」を金融機関と具体的に確認することが重要です。

借り換え/一本化/条件変更の比較

←横にスクロールできます→
項目借り換え一本化(おまとめ)条件変更(返済条件の変更)
主目的金利・条件を有利化管理簡素化+返済計画再構成短期の返済負担軽減
期待効果利息削減・条項見直し返済の見える化・交渉一本化月次返済の圧縮(据置等)
主なコスト手数料・保証料・違約金手数料・保証料・条件調整追加コストは比較的少なめ
注意点担保・条項が重くなる場合一本化後の条件が硬直化追加融資に影響する場合

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借り換え・一本化の方法(手順をステップで解説)

Step 1: 現状の借入を棚卸しする

借入ごとに「残高・金利・返済期間・毎月返済額・保証・担保・返済口座」を一覧化します。ここが曖昧だと、交渉が散漫になります。

Step 2: 目的を1つに絞って優先順位を決める

  • 月次返済を下げたい(資金繰り重視)
  • 返済総額を減らしたい(コスト重視)
  • 本数を減らして管理を簡素化したい(運用重視)

目的が混在すると、金融機関に「結局何がしたいのか」が伝わりません。

Step 3: 試算(ビフォー・アフター)を作る

最低限、以下の2パターンを作ります。

  • 現状維持の返済予定表
  • 借換/一本化後の返済予定表(手数料・保証料込み)

この比較が、交渉の土台になります。

Step 4: 交渉先の順序を決める(主力行→他行)

原則、主力行に最初に相談します。既存取引の蓄積があり、意思決定が速いことが多いためです。条件が合わない場合に備え、他行の提案も並走させます(相見積もりの考え方)。

Step 5: 金融機関に提出する資料を整える

  • 直近2〜3期の決算書・勘定科目内訳
  • 試算表(できれば月次)
  • 資金繰り表(向こう6〜12か月)
  • 借入一覧(Step1の成果物)
  • 改善施策とKPI(例:単価、稼働率、人件費率)

「数字の裏付けがある改善ストーリー」があるほど、条件は詰めやすくなります。

Step 6: 実行時の手続とスケジュールを管理する

借換は、旧借入の完済・抵当権抹消・新規契約などが連動します。実行日、引落日、入金日がずれると資金ショートの原因になるため、資金繰り表に反映しながら進めます。

交渉方法:金利引下げ・条件変更を引き出すコツ

交渉の論点は「金利」だけではない

金融機関が見ているのは、返済原資とリスクです。交渉は次のパッケージで考えます。

  • 金利(固定・変動、優遇幅)
  • 返済期間、据置期間
  • 担保・保証(代表者保証の扱いを含む)
  • 期限の利益喪失条項、報告義務など

こちらから「希望条件の優先順位(譲れる点・譲れない点)」を提示すると、落としどころが早まります。

交渉で強いのは「事実」と「代替案」

  • 事実:資金繰り表、返済可能性、KPI、改善の進捗
  • 代替案:他行提案、制度融資、保証付き/プロパーの組合せ

特に、「借換が成立しない場合の資金繰り(最悪シナリオ)」まで示せると、金融機関は検討しやすくなります。ここで金融機関交渉は感情論ではなく、資料と選択肢の提示が中心になります。

よくある成功パターン(匿名ケース)

例えば、借入が6本に分かれ、月次返済が利益に対して過大になっていたクリニックで、借入一覧と資金繰り表を整備し、返済期間の再設計と一本化を提案しました。交渉では「金利を下げる」より先に「返済可能性が高い構造に整える」ことを優先し、結果として月次返済の平準化と条件改善が同時に進みました。

交渉時の言い回し(要点)

  • 「当面の資金繰りを安定させ、返済継続性を上げるために、返済期間の再設計を相談したい」
  • 「手数料・保証料込みでの総額比較を用意しました。現状より返済可能性が上がるプランです」
  • 「条件は金利だけでなく、据置や期間も含めて最適点を探したい」

制度や支援策(借換保証等)に関しては、金融行政の要請や支援策の方向性も踏まえつつ、利用可否を確認すると話が早くなります。

よくある質問

Q: 借り換えと一本化はどちらが先ですか? ▼

A:

多くの場合、「目的」を先に決めます。金利引下げが主目的なら借り換え中心、管理簡素化と返済平準化が主目的なら一本化が有利です。両方を同時に狙う場合は、手数料・保証料込みの総額比較を必ず行ってください。
Q: 金利交渉はいつ切り出すのがよいですか? ▼

A:

決算直後や試算表が整っているタイミングが有利です。金融機関が返済可能性を判断しやすいためです。資金繰り表と借入一覧を添えて「金利だけでなく条件全体の最適化」を提案すると、議論が前に進みます。
Q: 借り換えで代表者保証を外す交渉はできますか? ▼

A:

可能性はありますが、財務内容・事業計画・管理体制に依存します。交渉では、ガバナンス(経理の透明性、月次決算、資金繰り管理)を整えた上で、保証の要否を論点に乗せるのが現実的です。

まとめ

  • 借り換え・一本化は、返済総額と月次キャッシュフローを最適化するための手段
  • 判断は表面金利ではなく、手数料・保証料込みの実質金利と総支払額で行う
  • 担保・保証・条項が重くなるリスクがあるため、条件全体のパッケージで交渉する
  • 交渉の勝ち筋は「借入棚卸し」「資金繰り表」「改善ストーリー」「代替案」の4点セット
  • 制度の扱いは時期で変わるため、利用可否と要件を金融機関に具体確認する

参照ソース

  • 金融庁「コロナ資金繰り支援策の転換を踏まえた事業者支援の徹底等に関する要請」: https://www.fsa.go.jp/news/r5/ginkou/20240607/yousei.html
  • 経済産業省「2025年1月以降の中小企業向け資金繰り支援について(PDF)」: https://www.meti.go.jp/press/2024/11/20241128001/20241128001-1r.pdf
  • 日本政策金融公庫「公庫融資借換特例制度」: https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/58.html

この記事を書いた人

辻 光明

辻 光明

代表税理士

税理士 / 認定経営革新等支援機関

税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。

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