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中小企業向けコラム
作成日:2025.06.06
更新日:2026.01.02
辻 光明

執筆者:辻 光明

代表税理士

補助金・助成金の会計処理|収益計上タイミングを税理士が解説

9分で読めます
補助金・助成金の会計処理|収益計上タイミングを税理士が解説

補助金と助成金とは?違いを先に整理

補助金・助成金はどちらも国や自治体等から受ける給付ですが、会計処理で迷う原因は「制度ごとに支給条件と手続きが違い、権利確定のタイミングが揃わない」点にあります。まずは違いを押さえましょう。

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項目補助金助成金
目的政策目的(設備投資・販路開拓等)を促進雇用・人材・処遇改善など要件充足を支援
採択公募・審査(採択枠あり)が多い要件を満たせば支給(枠が比較的少ない)傾向
入金時期事後精算型が多く、遅れやすい申請後の審査を経て支給(こちらも後払いが多い)
会計上の論点設備取得なら圧縮/繰延など選択が発生人件費等の補填として営業外収益扱いが多い
税務上の基本原則、益金(課税)になり得る原則、益金(課税)になり得る

税理士法人 辻総合会計では、クリニックや中小企業の会計・税務支援を30年以上行う中で、「入金された年度に雑収入で処理したら、実は前期の確定通知分だった」という期ずれ相談が繰り返し発生しています。最初に判断軸を決めておくことが重要です。

収益計上のタイミングは「入金日」ではない

結論から言うと、会計処理の基本は「入金日」ではなく、支給を受ける権利が実質的に確定した日(条件を満たし、金額が合理的に見積もれ、回収可能性が高い状態)に基づいて収益計上を検討します。

ただし補助金・助成金は、交付決定→実績報告→額の確定→入金、という段階を踏むことが多く、「どの段階で確定とみるか」が制度ごとに異なります。判断のブレをなくすため、社内ルールを手順化すると実務が安定します。

収益計上タイミングの判断手順(実務版)

Step 1: 制度の支給条件を分解する

・交付決定があれば無条件に支給されるのか
・実績報告や検査により減額・不支給になり得るのか
・返還条件(違反時返還、収益発生時返還など)があるか

Step 2: 証憑の「決め」を作る

一般的には次の書類が強い根拠になります。制度により呼称が異なるため、実物の文言を確認してください。
・交付決定通知(採択の通知)
・額の確定通知(「交付すべき額が確定」等の通知)
・支給決定通知(助成金で用いられることが多い)

Step 3: 未収計上の可否を判定する

・金額が合理的に見積もれる(見積差が軽微)
・条件充足が客観的に説明できる
・入金可能性が高い(形式的な手続き残のみ)

上記を満たすなら、決算で未収入金(または未収補助金)を計上し、対応する収益を認識します。

Step 4: 期ずれ・返還リスクの注記を決める

・確定前なら「見積計上はしない」運用も合理的
・見積計上するなら、後日の減額・返還時の処理(戻入・雑損)をルール化

ここがポイント
会計と税務は同じタイミングになるとは限りません。決算書の表示(営業外収益/繰延収益等)と、法人税申告での調整(圧縮記帳・別表調整等)は分けて設計すると、後工程が楽になります。

資産取得型(設備投資)の補助金:圧縮記帳・繰延の考え方

設備投資の補助金(例:機械装置、システム導入、建物附属設備など)は、会計処理に選択肢が出やすい領域です。実務では次の2つを押さえると整理できます。

  • 決算書上の表示(補助金収入の計上方法)
  • 税務上の取扱い(圧縮記帳の適用可否)

代表的な会計処理パターン(概念整理)

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パターン会計処理のイメージメリット注意点
総額表示(補助金収入を計上)補助金収入を計上し、必要に応じて圧縮等取引の実態が見えやすい収益が大きく見える
控除方式(取得価額から控除)資産取得価額を実質負担額に近づける減価償却が実態に近い税務とのズレに注意
繰延収益方式受領時に繰延→耐用年数で取崩期間対応が明確科目設計・取崩管理が必要

どれが正解というより、会社の会計方針(中小会計要領の採用、金融機関説明のしやすさ、固定資産管理の運用)で決めるのが現実的です。

仕訳例:機械500万円、補助金200万円(事後精算型)

前提:決算日までに額の確定通知があり、入金は翌期。

  • 資産購入時
    (借)機械装置 5,000,000/(貸)普通預金等 5,000,000

  • 額の確定通知を受け、権利が確定(決算仕訳)
    (借)未収入金(未収補助金) 2,000,000/(貸)補助金収入 2,000,000

  • 翌期に入金
    (借)普通預金 2,000,000/(貸)未収入金 2,000,000

税務上、要件を満たす場合は圧縮記帳により、補助金相当額を固定資産から控除する考え方(損金算入の特例)を検討します。ここは申告書作成とセットで設計する領域です。

ここがポイント
「交付決定はあったが、実績報告で減額され得る」ケースでは、決算で未収計上せず、確定通知(または支給決定通知)まで待つ運用も一般的です。監査がある法人は特に保守的な取扱いになりやすい点に留意してください。

運転資金型(人件費・家賃等)の助成金:雑収入・営業外収益の実務

雇用関係助成金など、経費補填型は「補填の対象が費用」であるため、決算書上は営業外収益(雑収入、助成金収入等)で処理するケースが多くなります。

ここで重要なのは、費用側は発生主義で計上されるため、助成金収益だけ入金主義にすると損益が歪むことです。要件充足と証憑が揃うなら、決算で未収計上して期間対応を取る方が説明しやすくなります。

消費税の論点:課税売上ではないことが多い

国・自治体の補助金や助成金は、一般に「資産の譲渡等の対価」ではないため、消費税の課税対象外(不課税)となる整理が基本です。売上区分の設定ミスは申告エラーの温床になるため、会計ソフトの税区分まで必ず確認してください。

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  • 申請一覧(制度名、対象経費、交付決定日、実績報告日、確定通知日、入金予定日)を台帳化しているか
  • 決算日までに「額の確定」相当の通知がある案件を洗い出したか
  • 未収計上する案件について、根拠資料(通知文、要綱、実績報告控、計算根拠)を揃えたか
  • 減額・返還の可能性がある案件を区分し、保守的に処理するルールがあるか
  • 消費税の税区分(不課税/対象外など)を統一できているか

ケーススタディ(匿名化):期ずれを防いだ例

ある医療関連事業者で、12月決算。助成金の支給決定通知が12月、入金が翌年2月でした。以前は入金時に雑収入計上していましたが、金融機関向けに業績説明が難しく、当期の人件費増が過大に見えていました。

運用を「支給決定通知が決算日までにあるものは未収計上」に変更し、収益と費用の対応が取れたことで、月次・決算のブレが大幅に縮小しました。ポイントは、通知文の保管場所を決め、経理が必ず確認できるワークフローにしたことです。

よくある質問

Q: 交付決定通知があれば、決算で収益計上してよいですか? ▼

A:

一概には言えません。交付決定後でも、実績報告や検査で減額・不支給となり得る制度が多いためです。実務では「額の確定通知」「支給決定通知」など、金額確定の証憑があるかで権利確定を判断し、未収計上の可否を決めるのが安全です。
Q: 補助金は必ず課税(益金)になりますか? ▼

A:

原則は益金になり得ますが、固定資産取得に充てる国庫補助金等については、一定の手続きにより収入計上をしない(取得費から控除する)整理や、法人税での圧縮記帳など、制度別の特例が関係する場合があります。適用要件と書類が重要です。
Q: 補助金・助成金に消費税はかかりますか? ▼

A:

一般に、国や自治体からの補助金・助成金は「対価性」がないため、消費税の課税対象外(不課税)として扱うのが基本です。ただし、契約に基づく役務提供の対価に該当する形(委託費等)だと取扱いが変わる可能性があるため、制度の性質を確認してください。
Q: 返還になった場合の処理はどうなりますか? ▼

A:

返還が確定した時点で、既に計上した収益の戻入(または雑損失)として処理するのが一般的です。返還条項がある制度は、当初から保守的に未収計上しない運用も検討対象です。

まとめ

  • 収益計上の基本は「入金日」ではなく、支給を受ける権利が確定した日を軸に判断する
  • 設備投資の補助金は、決算書表示と税務(圧縮記帳等)を分けて設計すると混乱が減る
  • 助成金は費用補填型が多く、未収計上で期間対応を取ると業績説明がしやすい
  • 消費税の税区分は誤りやすいので、会計ソフトの設定まで統一する
  • 申請~確定~入金までを台帳化し、証憑を「経理が確認できる場所」に集約する

参照ソース

  • 国税庁「No.2202 国庫補助金等を受け取ったとき」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2202.htm
  • 国税庁「第2節 国庫補助金等で取得した資産の圧縮記帳(法人税基本通達)」: https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/10/10_02.htm
  • 国税庁「間接交付された国又は地方公共団体の補助金で取得した固定資産(質疑応答事例)」: https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hojin/07/11.htm
  • 国税庁「No.6157 課税の対象とならないもの(不課税)の具体例(消費税)」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6157.htm
  • 厚生労働省「雇用調整助成金 ガイドブック(PDF)」: https://www.mhlw.go.jp/content/001528824.pdf

この記事を書いた人

辻 光明

辻 光明

代表税理士

税理士 / 認定経営革新等支援機関

税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。

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