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中小企業向けコラム
作成日:2025.08.27
更新日:2026.01.02
辻 光明

執筆者:辻 光明

代表税理士

顧問税理士トラブル事例と解決方法|税理士が解説

9分で読めます
顧問税理士トラブル事例と解決方法|税理士が解説

顧問税理士とのトラブルは、多くの場合「どこまでが税理士の業務で、どこからが会社側の責任か」が曖昧なまま運用が進み、期限やお金、コミュニケーションのズレとして表面化します。経営者にとっての問題は、単なる不満ではなく、申告期限・資金繰り・税務調査対応など経営インフラに直結する点です。本記事では、典型的なトラブル事例と原因を整理したうえで、予防策と解決の手順、税理士変更の実務までをまとめます。

顧問税理士トラブルとは(定義と起こりやすい背景)

顧問税理士トラブルとは、税務・会計の委託関係において、期待値や契約条件の不一致が原因で、業務品質・納期・費用・情報共有・引継ぎ等で対立が生じる状態を指します。

起こりやすい背景は次の3つです。

  • 業務範囲(スコープ)が口約束で、追加作業の線引きがない
  • 記帳代行・給与計算・年末調整・償却資産・各種届出など、周辺業務が増えやすい
  • 会社側の資料提出が遅れ、結果として申告直前に負荷が集中する

税理士法人 辻総合会計でも、トラブル相談の多くは「当初は小さな違和感だったが、繁忙期に一気に不信へ転じた」という経過をたどります。

トラブル事例:顧問税理士と揉める典型パターン

事例1:連絡が遅い・報告がない(レス遅延、月次が出ない)

  • 月次試算表が翌々月以降になる
  • 資金繰り判断に必要な数字が揃わない
  • 質問への回答が遅く、意思決定が止まる

原因は、担当者のキャパシティ、資料受領の遅れ、業務フロー未整備のいずれか(または複合)であることが大半です。

事例2:ミスが多い・税務リスクが顕在化(追徴・加算税の不安)

  • 勘定科目の誤り、消費税区分の誤り、固定資産計上漏れ
  • インボイス対応・電子帳簿保存法対応が後手になる
  • 税務調査で指摘を受け、社内から不満が噴出する

このタイプは「品質管理の仕組みがあるか(レビュー体制、チェックリスト、論点管理)」が分岐点です。

事例3:費用が想定より高い(顧問料と追加報酬の衝突)

  • 「年末調整は別料金」「税務調査立会は日当」などが後出しに見える
  • 決算前に追加請求が発生し、追加報酬の妥当性で揉める

本質は、見積条件と前提(仕訳量、資料の整い具合、訪問回数、オプション業務)が共有されていないことです。

事例4:申告期限・納税管理の責任が曖昧(期限直前のバタつき)

  • 会社側の資料不足を理由に、申告が直前まで確定しない
  • 延長申請や修正申告の提案が遅い
  • 「誰が何をいつまでにやるか」が曖昧で、期限管理が崩れる

会社側に必要なのは「資料提出期限」と「論点確定の締切」を税理士と合意して運用することです。

事例5:税務調査対応の方針が合わない(守りと攻めの不一致)

  • 争点に対する説明方針(保守的/主張する)が合わない
  • 事前準備(資料整備、想定問答、修正見込み)に温度差がある

税務調査は、税理士の技術だけでなく経営者のリスク許容度も反映されるため、事前の方針共有が不可欠です。

事例6:解約時に資料・データが返ってこない(引継ぎトラブル)

  • 会計データ、証憑、決算書一式、届出控えが揃わない
  • 後任税理士への受け渡しが進まず、業務が止まる
  • 「どこまでが顧問先の所有物か」で揉める
ここがポイント
解約時の混乱を避けるには、平時から引継ぎ資料(会計データ形式、証憑保管、ログイン権限、届出控え)を「会社側の資産」として棚卸しし、定期的に受領・保管する運用が有効です。

トラブル原因の整理:契約・運用・体制の3層

トラブルは「相性」ではなく、構造の問題として整理すると解きやすくなります。

←横にスクロールできます→
層典型的な原因会社側の打ち手税理士側に求めること
契約業務範囲・成果物・費用条件が曖昧顧問契約書/業務一覧を文書化追加業務の定義・単価表の提示
運用月次締め・資料提出・連絡ルールがない期限と担当を固定し、定例化レビュー工程・論点管理の可視化
体制担当者依存・引継ぎ不全会社側の窓口一本化担当変更時の引継ぎ手順

また、制度面では税理士には法律上の義務や懲戒処分があり、一定の規律が働く点も押さえておくと、冷静に交渉できます。以下は公表されている「税理士・税理士法人に対する懲戒処分等件数」の推移例です(会計年度)。

←横にスクロールできます→
会計年度処分等件数
令和222
令和321
令和413
令和538
令和664
ここがポイント
懲戒処分の有無は「すぐに使う手段」ではありませんが、事実関係の整理(合意内容、メール、成果物、請求内訳)ができていれば、交渉の土台が整い、解決までの時間を短縮できます。

解決方法:揉める前の予防策と、揉めた後の収束手順

予防策:顧問契約で必ず明確化したい項目

  • 業務範囲(スコープ):記帳、申告、年末調整、給与計算、届出、相談回数など
  • 成果物と納期:月次試算表の提出日、決算スケジュール、面談頻度
  • 追加業務の定義と追加報酬:税務調査立会、融資資料、株価算定、M&A支援等
  • 会社側の責任:資料提出期限、承認フロー(役員会承認など)
  • データの帰属と引継ぎ:会計ソフトの名義、バックアップ、資料返却期限

ポイントは「揉めたときに判断できる文章」があるかどうかです。期待値を“運用ルール”に落とし込みます。

揉めた後の収束手順(実務の進め方)

Step 1: 事実と論点を分解して整理する

感情ではなく、(1)出来事、(2)合意内容、(3)証拠(メール・議事録・請求書)に分けます。特に「いつまでに何を出す約束だったか」を時系列で作ると交渉が前進します。

Step 2: 要求を3段階に落とす(最低限/妥協案/理想)

例:月次の納期を固定したい、追加請求の根拠を明示してほしい、担当変更してほしい、など。ゴールを曖昧にしないことが重要です。

Step 3: 面談で合意形成し、議事メモを残す

口頭合意で終わらせず、決まったこと(期限、担当、費用)をその日のうちにメールで確認します。期限管理はここで再設計します。

Step 4: 改善が見込めない場合は、段階的に解約準備へ

  • 会計データのバックアップ取得
  • 届出控え・申告書一式・総勘定元帳等の受領
  • 後任税理士の選定(引継ぎが得意か、業界理解があるか)

Step 5: 必要に応じて第三者を介在させる

当事者間で平行線の場合、後任税理士による引継ぎ会議、弁護士への相談(契約・損害の論点整理)など、争点を「技術論」と「契約論」に切り分けると収束しやすくなります。

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税理士変更の進め方と注意点(権限証書・データ移管)

税理士を変更する場合、実務上の要所は「税務代理の委任関係」と「データ・書類の移管」です。

  • 税務署対応で税理士が代理する場合、税務代理権限証書等の手続が関係します。新旧の税理士でどの範囲を委任しているかを整理し、提出状況を確認します。
  • 会計ソフトの名義(会社名義か税理士名義か)で移管の難易度が変わります。会社名義に寄せ、閲覧権限を税理士に付与する形が、将来の変更にも強い運用です。
  • 引継ぎの最低限セット:直近2期分の申告書・総勘定元帳・固定資産台帳・消費税集計・届出控え・電子申告関連(利用者識別番号等)を揃えます。

税理士変更は「揉めてから」ではなく、「業務が安定している時期」に着手する方がリスクとコストを抑えられます。

よくある質問

Q: 顧問税理士に不満がある場合、まず何から始めるべきですか? ▼

A:

まずは不満を「事実」と「要望」に分け、(1)遅延している成果物、(2)費用の論点、(3)ミスの内容を時系列で整理します。そのうえで、月次納期・追加報酬・担当体制など、改善してほしい項目を具体的に提示すると建設的に進みます。
Q: 税理士を変えると税務署対応で不利になりますか? ▼

A:

通常、税理士変更それ自体が不利になることは一般的ではありません。ただし、申告直前や税務調査中は引継ぎ不足が実害になり得ます。変更時は税務代理権限証書の範囲確認と、申告・届出・電子申告関連情報の移管を優先してください。
Q: 解約時に会計データや資料を渡してもらえない場合はどうすればよいですか? ▼

A:

まず契約書やメールで合意した範囲を確認し、返却対象(原本・コピー・データ形式)と期限を文書で指定します。並行して、会社側で入手可能なデータ(銀行明細、請求書控え、クラウドの閲覧権限)を確保し、後任税理士と復旧計画を立てるのが現実的です。
Q: 税理士に重大な不正や背任が疑われる場合の相談先は? ▼

A:

個別事案は証拠の整理が前提となるため、まず弁護士等へ相談し、契約・損害・刑事の論点を切り分けることを推奨します。税理士には法律上の規律があり、行政側で公表される懲戒処分等もありますが、実務では「証拠に基づく整理」が最優先です。

まとめ

  • 顧問税理士トラブルの多くは、業務範囲(スコープ)と運用ルールの曖昧さが原因
  • よくある火種は、レス遅延、品質問題、追加報酬、期限管理、引継ぎ
  • 収束には、事実整理→要求の明確化→文書での合意→段階的な解約準備が有効
  • 税理士変更時は、税務代理権限証書の範囲確認とデータ移管が要点
  • 平時から引継ぎ資料を会社側で保管する運用が、最大の予防策

参照ソース

  • 国税庁「税務代理の権限の明示」: https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/zeirishi/annai/001.htm
  • 国税庁「税理士等に対する懲戒処分等」: https://www.nta.go.jp/taxes/zeirishi/chokai/chokai.htm
  • e-Gov法令検索「税理士法」: https://laws.e-gov.go.jp/document?lawid=326AC1000000237

この記事を書いた人

辻 光明

辻 光明

代表税理士

税理士 / 認定経営革新等支援機関

税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。

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