
執筆者:辻 光明
代表税理士
税務調査で指摘されやすいポイント5選|税理士が解説

税務調査でよく起きる指摘は、突き詰めると「売上・経費・税額計算の整合性」と「証憑(しょうひょう)保存」の2点に集約されます。税理士法人 辻総合会計では、長年にわたり税務調査の立会い・事前点検を支援してきた経験から、現場で特に多い論点を5つに絞って整理します(個別事情で優先順位は変わります)。
税務調査とは:指摘が起きる理由
税務調査は、申告内容が税法に照らして適正かを、帳簿・請求書・契約書・通帳などで検証する手続です。指摘が起きる主因は次の3つです。
- 計上ルール(売上の計上時期、費用区分、減価償却など)が曖昧
- 証憑の不足(領収書の宛名・但書、相手先、参加者、目的が不明)
- お金の流れ(現金、役員貸付・借入、プライベート混在)との不整合
参考として、国税庁(国税局公表)では、令和6事務年度の譲渡所得に係る調査等で「430件のうち非違あり397件」といった数値も示されており、調査で論点が顕在化するケースは珍しくありません。
税務調査で指摘されやすいポイント5選
ここでは、業種を問わず頻出の5論点を挙げます。特に中小企業・個人事業では、運用の「つい、いつも」が指摘点になりやすい傾向があります。
1. 売上計上の漏れ・計上時期のズレ
- 現金売上や入金の一部未計上(レジ・予約・受領記録との突合)
- 売上計上時期のズレ(検収基準、役務提供完了日、請求日基準の混在)
- 期末の売上・返品・値引・前受金の処理不整合
「入金=売上」ではない取引(前受、立替、預り)も多いため、売上台帳・請求書・入金消込のルールが鍵になります。
2. 交際費・会議費・福利厚生費の区分ミス
交際費等は範囲が広く、会議費・福利厚生費・広告宣伝費との区分が問題になりがちです。飲食費は特に、参加者・目的・相手先・金額基準・保存書類の要件を満たしているかが見られます(一定条件を満たす飲食費は交際費等から除外され得ます)。
- 領収書だけでは「誰と何のために」が説明できない
- 社内飲食・役員のみの飲食が混在し、按分根拠がない
- 福利厚生の「全従業員性」「社会通念上の相当性」が弱い
3. 源泉所得税の漏れ(外注費・役員報酬・給与周り)
源泉徴収は「支払側の義務」です。税務調査では、外注・士業報酬・講演料等が源泉対象か、納付が期限どおりか、納期の特例の運用が適切かを確認されます。
- 業務委託(個人)に支払っているのに源泉を引いていない
- 役員賞与・臨時手当の処理が給与体系と整合しない
- 納付期限(原則:翌月10日、特例あり)を誤認して延滞が発生
4. 消費税(課税区分・仕入税額控除・帳票保存)
消費税は、課税・非課税・不課税、簡易課税の選択、インボイス(適格請求書)保存の有無など、論点が多岐にわたります。
- 課税区分の誤り(旅費交通費、保険料、家賃、輸出等)
- 仕入税額控除の根拠書類が不足(保存要件未充足)
- 事業とプライベート混在の按分が不明確
5. 棚卸資産・固定資産(減価償却)の管理不備
期末棚卸は利益に直結します。固定資産は、資産計上か費用処理か、耐用年数・償却方法・除却の証跡が確認されます。
- 期末在庫が「前年踏襲」で実地がない
- 少額資産(消耗品費・工具器具備品)の判定が曖昧
- 資産の私用・社用混在(車両・PC・通信費など)の按分根拠不足
税務調査前の準備方法(手順)
調査通知を受けたら、闇雲に資料を集めるのではなく、論点別に「整合性の線」を作ります。実務上の標準的な流れは次のとおりです。
Step 1: 対象期間・対象税目を確定する
- 調査対象(法人税・所得税・消費税・源泉等)と期間を確認し、資料範囲を固定します。
Step 2: 5論点で“突合せ”を先に実施する
- 売上:請求・入金・売上台帳の突合
- 経費:大口・頻出科目(交際費、旅費、外注費)の内容確認
- 源泉:支払先属性(個人/法人)と源泉要否、納付状況
- 消費税:課税区分と帳票保存
- 在庫・資産:棚卸表、固定資産台帳、償却計算
Step 3: 説明資料(1枚で見せる)を作る
- 「社内ルール」「例外処理の判断基準」「按分根拠」をA4数枚に整理すると、口頭説明のブレが減ります。
Step 4: 当日の対応方針を決める
- 事実確認は正確に、推測で答えない
- その場で出せない資料は「期日を決めて提出」
- 訂正が必要なら、修正申告の要否を専門家と検討
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指摘を減らすチェックリストと比較表
以下は、調査で求められやすい資料と、社内で事前点検すべき観点を整理した比較表です。
| 論点(頻出) | 典型的な指摘 | 事前に揃える資料 | 社内チェックの観点 |
|---|---|---|---|
| 売上計上 | 期ずれ、未計上、前受処理ミス | 売上台帳、請求書、入金明細、受注/検収記録 | 計上基準が統一されているか、入金消込の例外が説明できるか |
| 交際費等 | 会議費・福利厚生との区分 | 領収書、参加者名簿、目的メモ、社内規程 | 相手先・人数・目的が残っているか、社内飲食の扱いが一貫しているか |
| 源泉所得税 | 源泉漏れ、納付遅延 | 支払一覧、契約書、請求書、納付書控 | 支払先が個人か、源泉対象か、納期(特例含む)が守られているか |
| 消費税 | 課税区分誤り、控除根拠不足 | 仕入帳、請求書等、区分表、保存状況 | インボイス/帳票保存が揃うか、家事按分の根拠があるか |
| 棚卸・固定資産 | 在庫過少、資産/費用誤り | 棚卸表、固定資産台帳、償却明細 | 実地棚卸の痕跡、耐用年数、除却・売却の証跡が残っているか |
参考データ(国税局公表)として、令和6事務年度の譲渡所得に係る調査等では「430件のうち非違あり397件」とされており、事前点検での“論点つぶし”が調査負担の軽減につながります。
よくある質問
Q: 税務調査の連絡が来たら、まず何から始めればよいですか?
A:
対象期間と税目を確定したうえで、「売上」「交際費等」「源泉」「消費税」「棚卸・固定資産」の5論点で突合せを先に行うのが効率的です。資料を集める前に、論点別に“整合性の線”を作ると、調査が短くなります。Q: 領収書がない経費は必ず否認されますか?
A:
必ずしも即否認ではありませんが、説明できる追加資料(請求書、クレカ明細、出金伝票、相手先とのメール等)が必要になります。特に交際費等は「相手先・目的・人数」が重要なので、日常的にメモを残す運用が有効です。Q: 源泉所得税の「納期の特例」を使っています。税務調査で見られる点は?
A:
特例の要件(常時10人未満等)を満たしているか、対象となる税目の範囲を誤っていないか、納付期限(半年分を定められた期限まで)が守られているかが確認されます。外注費(個人)や士業報酬が混在する場合は、源泉要否の判定表を用意すると説明が容易です。まとめ
- 税務調査の指摘は「整合性」と「証憑保存」に集約され、まず5論点で点検すると効率的です
- 指摘頻出は、売上計上、交際費等、源泉所得税、消費税、棚卸・固定資産の5分野です
- 調査前は、対象期間・税目の確定→突合せ→説明資料化→当日方針の順で準備します
- 領収書だけでなく、相手先・目的・按分根拠など“後から作れない情報”を残す運用が重要です
- 迷う論点は、事前に専門家と判断基準を固定し、当日の説明のブレをなくします
参照ソース
- 国税庁「No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5265.htm
- 国税庁「No.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2505.htm
- 国税庁(国税局)「Ⅰ 調査等の状況」: https://www.nta.go.jp/about/organization/kanazawa/release/r06/shotoku_shohi/01.htm
この記事を書いた人

辻 光明
代表税理士
税理士 / 認定経営革新等支援機関
税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。
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