
執筆者:辻 光明
代表税理士
過去の申告ミス対処法|修正申告・更正請求の実務を税理士解説

過去の申告ミスに気づいた場合の対処法は、「税額が増えるミスは修正申告」「税額が減る(還付が増える)ミスは更正の請求」が基本です。放置すると延滞税や加算税のリスクが高まる一方、早期に自主対応すれば不利益を抑えられる場面があります。特に経営者・個人事業主にとっては、資金繰りや金融機関対応にも波及し得るため、手続の選択と証憑整備が核心です。
申告ミスとは何か:よくあるパターン
「申告ミス」は、単なる計算違いだけではありません。実務では次の類型が多く見られます。
- 売上(収入)の計上漏れ・二重計上
- 経費の計上漏れ(固定資産計上すべきものを費用処理した等)
- 控除(社会保険料控除、扶養、医療費控除等)の入れ忘れ
- 消費税の課税区分・仕入税額控除の誤り(インボイス対応含む)
- 源泉徴収・給与計算まわりのミス(年末調整・法定調書)
まずは、ミスが「税額を増やすか/減らすか」を切り分けることが、最短ルートです。
修正申告と更正の請求の違い
結論として、追加で納税が必要なら修正申告、納め過ぎなら更正の請求です(所得税等の一般的な整理)。
| 項目 | 修正申告 | 更正の請求 |
|---|---|---|
| 典型ケース | 税額が少なかった、還付が多すぎた | 税額が多かった、還付が少なかった |
| 目的 | 不足分を追納して申告内容を訂正 | 納め過ぎの是正(還付・減額) |
| 期限の考え方 | 原則、気づいたら速やかに(調査前の自主是正が有利) | 原則、法定申告期限から5年以内 |
| 付随コスト | 延滞税、状況により過少申告加算税等 | 原則として還付(審査あり) |
申告ミスに気づいたら:実務の手順(方法/手順)
以下の順で進めると、判断の迷いが減ります。
Step 1: ミスの内容を棚卸しする(税目・年分・原因)
- どの税目か(所得税・法人税・消費税・相続税等)
- どの年分(課税期間)か
- ミスの原因(計上漏れ、控除漏れ、区分誤り など)
ここで修正対象の「年分」を特定しないと、計算も手続も始まりません。
Step 2: 影響額を試算する(増える/減る/変わらない)
- 税額が増える(追納)=修正申告が基本
- 税額が減る(還付増)=更正の請求が基本
- 税額が変わらない=原則として手続不要の可能性(ただし別税目や翌期への影響がないか要確認)
Step 3: 証憑と根拠を揃える(説明できる形にする)
税務署側は「なぜその数字に直るのか」を見ます。領収書・契約書・請求書・通帳・インボイス・帳簿など、根拠をセットで整理してください。“根拠が揃っているか”が通るかどうかを左右します。
Step 4: 書類を作成し提出(e-Tax/書面)
所得税等では「確定申告書等作成コーナー」の更正の請求書・修正申告書作成機能を利用し、e-Tax提出または印刷提出が可能です。
Step 5: 追納がある場合は納付(延滞税も視野)
修正申告で追加納税が発生する場合、納付日までの延滞税が発生し得ます。資金繰りの見通しを立て、納付方法(ダイレクト納付、振替、クレカ等)も含めて計画します。
注意点・リスク:延滞税と加算税の考え方
申告ミスのコストは、主に「延滞税」と「加算税」です。
- 延滞税:期限までに納付されなかった税に対し、法定納期限の翌日から納付日まで日数に応じて課される(利息に相当)
- 過少申告加算税等:調査の事前通知前に自主的に修正申告すると、過少申告加算税がかからない取扱いがある一方、通知後や調査後は税率が上がる整理があります(所得税の案内では段階的な取扱いが示されています)
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ケーススタディ:現場で多い相談と判断軸
税理士法人 辻総合会計でも、申告後の見直し相談は継続的に発生します。典型例を匿名化して紹介します。
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例1:売上計上漏れ(追納)
- 判断:税額増のため修正申告
- 実務:売上台帳・請求書・入金記録を突合し、漏れの範囲を確定。追納+延滞税を見込んで納付計画を立てる。
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例2:社会保険料控除の入れ忘れ(還付増)
- 判断:税額減のため更正の請求
- 実務:控除証明書等を添付し、法定申告期限から5年以内に請求。還付時期は審査状況により変動するため資金繰りは保守的に。
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例3:消費税の課税区分誤り(追納または還付)
- 判断:影響額の方向を先に確定
- 実務:インボイス要件・帳簿保存・区分経理の整備状況が論点になりやすい。修正か更正かに加え、翌期以降の運用是正までセットで設計する。
よくある質問
Q: 申告期限前に間違いに気づいた場合はどうしますか?
A:
期限前であれば、原則として正しい内容で申告し直す(提出し直す)整理になります。期限後と異なり、修正申告・更正の請求の枠組みに入る前に「正しい申告に整える」ことが重要です。Q: 更正の請求はいつまでできますか?
A:
原則として法定申告期限から5年以内です。還付申告など一部のケースは起算点が異なる取扱いがあります。Q: 税務署から連絡が来てから修正申告しても不利ですか?
A:
所得税の案内では、調査の事前通知の前に自主的に修正申告した場合、過少申告加算税がかからない整理が示されています。通知後・調査後は取扱いが変わり得るため、早期対応が実務上の基本です。Q: 延滞税はどう計算しますか?
A:
原則として法定納期限の翌日から納付日までの日数に応じて計算します。国税庁サイトに計算方法や計算ページが用意されています。まとめ
- 過去の申告ミスは「税額が増える=修正申告」「税額が減る=更正の請求」が基本
- 更正の請求は原則5年以内。年分の特定が最初の分岐点
- 追納がある場合は延滞税・加算税の影響があるため、気づいたら速やかに対応
- 証憑・帳簿など根拠資料を整え、「説明できる形」にして提出する
- 迷う場合は税目横断(所得税・法人税・消費税)で影響確認し、専門家に相談するのが安全
参照ソース
- 国税庁「No.2026 確定申告を間違えたとき」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2026.htm
- 国税庁「所得税及び復興特別所得税の更正の請求手続」: https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/01.htm
- 国税庁「No.9205 延滞税について」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/osirase/9205.htm
この記事を書いた人

辻 光明
代表税理士
税理士 / 認定経営革新等支援機関
税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。
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