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中小企業向けコラム
作成日:2025.06.30
更新日:2026.01.02
辻 光明

執筆者:辻 光明

代表税理士

過度な節税のリスクと否認例|税務調査で否認されるケースを解説

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過度な節税のリスクと否認例|税務調査で否認されるケースを解説

過度な節税とは?「節税」と「租税回避」「脱税」の境界

過度な節税とは、形式上は取引が成立していても、実態・合理性・証拠が弱く、税務調査で否認(=税務上は認めない)されやすい節税スキームを指します。問題になるのは、税負担を下げたこと自体ではなく、取引の実態と目的が税務上の要件を満たしているかです。

税理士法人 辻総合会計の実務でも、「節税のつもりでやったが、調査で経費が落ちないと言われた」という相談が繰り返し発生します。判断軸は、証拠の有無と、第三者目線で説明できる合理性に集約されます。

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区分概要典型例主なリスク
節税法令の想定どおりに要件を満たして税負担を軽減償却資産の取得、役員退職金の適正設計要件不備で否認
租税回避法形式の選択で課税要件の充足を回避し、税負担を不当に減少させる方向不自然な組織再編、経済合理性の乏しい取引連鎖行為計算否認、否認後の追徴
脱税事実の隠蔽・仮装により税を免れる売上除外、二重帳簿、架空外注重加算税、刑事リスク
ここがポイント
「合法か違法か」だけでなく、「調査で説明可能か」「証憑が揃うか」で結論が変わります。特に、取引当事者が同族・親族・関連会社の場合は説明責任が重くなります。

税務調査で否認される典型ケース

否認のされ方は大きく2系統です。ひとつは「経費要件(必要性・関連性・金額の妥当性・証憑)」で落ちるパターン、もうひとつは「行為計算否認(不当に税負担を減少)」など、取引の組み立て自体が問題視されるパターンです。

1) 私的支出の混入(家事関連費の拡大解釈)

  • 交際費・会議費の名目だが、実態はプライベート飲食や家族同伴
  • 出張旅費だが、観光比率が高く、業務性の説明が弱い
  • 自家用車・通信費を「ほぼ全額」経費にしているが、稼働実態が示せない

ポイントは、誰と・何の目的で・何をしたかを客観資料で示せるかです(議事録、アジェンダ、名刺、メール、訪問記録など)。

2) 架空・名義貸し・循環取引(外注費・広告宣伝費に多い)

  • 実在しない外注先、成果物がない、検収がない
  • 同一人物が実質運営する複数口座を介した資金循環
  • インフルエンサー広告等で、投稿・レポート・契約条件が曖昧

証憑が「請求書だけ」になっていると危険です。契約書、仕様書、成果物、ログ、支払根拠まで一連で整備する必要があります。

3) 役員・親族への利益移転(役員報酬、社宅、貸付、賃料)

  • 役員報酬の期中変更(損金算入要件を外す)や、対価性の弱い手当
  • 親族所有不動産の賃料が相場より高い
  • 役員貸付金の長期滞留、利息・返済計画がない

形式的に契約があっても、独立当事者間なら成立する条件か(相場・稼働・返済可能性)が見られます。

4) 実態の乏しい節税商品(保険・リース・権利取引など)

  • 収益獲得の合理性が薄く、税効果が主目的に見える
  • 複数契約を組み合わせ、損失や繰延べを作る設計
  • 解約・転売前提で事業実態が伴わない

経済合理性が説明できない場合、「取引自体は有効でも税務上は引き直す」という議論になり得ます。

税務調査で見られるポイントと「証拠」の作り方

税務調査では、帳簿書類の提示・確認が中心です。調査の進行や帳簿書類の預かり等の手続も公表FAQで整理されています。調査対応は「その場の受け答え」より、平時の記録設計が勝負です。

否認されにくい社内ルール(最低限)

  • 支出目的・相手先・参加者・成果を残す(メモで可)
  • 契約書・稟議・見積・発注・検収・成果物の導線を作る
  • 立替精算の締日・領収書原本・電子データ保存ルールを統一
  • 役員・親族取引は、相場資料と第三者比較(周辺賃料、金利等)を保存
ここがポイント
「証憑がある」だけでは足りません。証憑が「取引のストーリー」をつなげているか(発注→実行→成果→支払)を意識してください。

否認された場合のペナルティと資金インパクト

否認されると、追徴税額(本税)に加えて附帯税(延滞税、加算税等)が発生し得ます。特に、事実の隠蔽・仮装が認定されると重加算税の対象になり、資金繰りに直撃します。

重加算税の判断では、二重帳簿、帳簿書類の隠匿・改ざん等が例示されており、悪質性があるかが分岐点です。節税のつもりでも、証拠の整合性が崩れると「仮装」に寄ってしまうことがあります。

ケーススタディ(匿名化)

A社(同族会社)が「外注費」を増やして利益を圧縮。請求書は揃っていたが、契約条件・成果物・やり取りの記録がなく、外注先の実態も不明確だったため、外注費の一部が否認。さらに、説明の途中で帳簿データ修正が発覚し、調査官の心証が悪化。結果として追徴に加え附帯税負担が拡大し、翌期の資金繰りに影響が出ました。

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過度な節税を避ける方法・手順(事前セルフチェック)

過度な節税を避ける最短ルートは、「合法性」より先に「実態・合理性・証拠」を点検することです。導入前に次の順で確認してください。

Step 1: 目的を税効果から切り離して言語化する

「なぜ今それをするのか」を、税以外の目的(人材確保、販路拡大、資金調達、リスク分散)で説明します。税目的しか出ない場合は赤信号です。

Step 2: 第三者条件で成立するかを検証する

同族・親族・関連会社取引は特に、相場・条件・代替手段を比較し、「独立当事者間でも選ぶか」を検討します。

Step 3: 証拠の導線を設計する

契約書、稟議、見積、発注、検収、成果物、支払根拠、議事録・メールなどを、後から追える形で保存します。電子保存の場合は運用ルールも整備します。

Step 4: 税務上の要件を最終確認し、出口(解約・売却・解散等)まで試算する

短期の税効果だけでなく、解約時課税・否認時の追徴・キャッシュフローを含めて試算します。

よくある質問

Q: 「節税になる」と言われたスキームは、どこまで信じてよいですか? ▼

A:

節税提案は「要件」と「証拠設計」がセットで初めて実務に耐えます。税効果の説明に偏り、取引目的や成果物、相場比較、出口の課税まで説明できない場合は過度な節税になりやすいので、導入前に専門家レビューを推奨します。
Q: 税務調査で否認されやすい勘定科目はありますか? ▼

A:

実務上は、外注費、広告宣伝費、交際費・会議費、旅費交通費、地代家賃、雑費など「実態の説明が必要な科目」が論点化しやすい傾向があります。科目よりも、支出目的と証憑の強さが重要です。
Q: 調査で指摘されたら、その場で修正に応じるべきですか? ▼

A:

その場で結論を急がず、事実関係・証拠・法令要件を整理してから判断するのが基本です。説明資料の追加で見解が変わることもあります。早期に税理士へ相談し、反論可能性とコストを比較して方針決定してください。
Q: 重加算税を避けるために、最低限やってはいけないことは? ▼

A:

売上除外、架空計上、二重帳簿、証憑の改ざん・隠匿など、隠蔽・仮装に該当し得る行為は厳禁です。意図がなくても、後追いの整合取り(事後の書類作成・改変)が疑念を招きやすいため、記録は「事前・同時点」で残してください。

まとめ

  • 過度な節税は、実態・合理性・証拠が弱いほど否認リスクが高まる
  • 否認論点は「経費要件で落ちる」か「取引自体を引き直される」に大別される
  • 同族・親族・関連会社取引は相場比較とストーリー設計が不可欠
  • 隠蔽・仮装と評価されると重加算税など附帯税負担が重くなる
  • 導入前に目的・第三者条件・証拠導線・出口課税まで試算し、専門家レビューを行う

参照ソース

  • 国税庁「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」: https://www.nta.go.jp/information/other/data/h24/nozeikankyo/ippan02.htm
  • 国税庁「法人税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)」: https://www.nta.go.jp/law/jimu-unei/hojin/100703_02/00.htm
  • 国税庁「租税回避に対する法人税法132条等の行為計算否認規定のあり方」: https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/kenkyu/ronsou/51/07/hajimeni.htm

この記事を書いた人

辻 光明

辻 光明

代表税理士

税理士 / 認定経営革新等支援機関

税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。

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