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中小企業向けコラム
作成日:2025.08.10
更新日:2026.01.02
辻 光明

執筆者:辻 光明

代表税理士

運送業の経費処理ガイド|車両費・燃料費・高速代

11分で読めます
運送業の経費処理ガイド|車両費・燃料費・高速代

運送業の経費とは:まず押さえる結論

運送業の経費処理は、「車に関する支出を全部“車両費”にしない」ことが最大のポイントです。車両の取得は原則として減価償却、日々の給油や高速代は取引の証憑(レシート・利用証明等)と帳簿の整合が核心になります。とくにインボイス制度開始後は、仕入税額控除の要件(帳簿+請求書等保存)が厳格化しており、ETCや給油カードの「明細だけ保存」運用は危険領域になりがちです。

経営者にとっての悩みは、忙しい現場の中で「証憑が揃わない」「科目がブレる」「税務調査で説明できない」状態に陥りやすい点ではないでしょうか。本記事では、税理士法人 辻総合会計が現場支援でよく見かける論点に絞り、車両費・燃料費・高速代の処理を実務目線で整理します。

経費計上の基本ルール(個人・法人で共通の考え方)

経費(損金・必要経費)に入れるには、「事業に必要である」ことが前提です。さらに、計上時期は原則として“支払日”ではなく、役務提供や取引事実により「債務が確定した時点」で判断します。月末締めの未払計上(例:月末の給油・高速利用分)を行う場合は、請求・利用データと突合できる体制が必要です。

ここがポイント
個人事業で私用車を兼ねる場合は、家事関連費(私用混在)を「取引記録などに基づき、業務分が明確に区分できる範囲」だけ経費にするのが基本です。走行距離や運転日報で説明できる形を作っておくと、否認リスクが下がります。

勘定科目の設計(例)

  • 車両取得:車両運搬具(固定資産)→減価償却
  • 車検・整備・タイヤ:修繕費(内容次第で資本的支出に注意)
  • 自動車税等:租税公課
  • 任意保険:保険料
  • ガソリン・軽油・AdBlue:燃料費
  • 高速・有料道路:旅費交通費(または支払手数料等、会社ルールで統一)
  • 駐車場:地代家賃、または旅費交通費(短期利用など)

車両費の処理方法:購入・リース・修理を分解する

「車両費」という科目名は便利ですが、税務上の中身は分解して管理する方が安全です。とくに車両の取得は、原則として一括経費ではなく減価償却で年次配分します。

車両購入は原則「固定資産」→減価償却

減価償却とは、取得費用を耐用年数に応じて各年の費用へ配分する手続です。例外として、取得価額が10万円未満(一定の条件)などは、その年の費用にできる場合があります。耐用年数は車種区分(貨物・普通・軽等)で扱いが変わるため、社内で車両台帳(取得日、取得価額、用途、車種、耐用年数)を整備してください。

金額別の実務目安(個人・法人でよく使う選択肢)

「少額資産」の論点は、運送業だとドラレコ、カーナビ、ETC車載器、台車、工具類にも波及します。次の枠組みを押さえると迷いが減ります。

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区分代表例会計処理の方向性実務メモ
取得価額10万円未満(一定条件)低額の工具、備品原則、購入年に費用化領収書の内容(品名・用途)を明確に
取得価額10万円以上20万円未満(個人の特例等)車載備品、機器類3年で均等に費用化(制度選択)継続適用・台帳管理が前提
取得価額30万円未満(中小企業者等の特例:法人)車載機器、備品一定要件で取得年度に損金算入年300万円上限、申告書別表添付など手続要
車両本体・高額整備トラック、バン等固定資産→減価償却耐用年数・中古資産の扱いも要確認

車検・修理・タイヤは「修繕費」か「資本的支出」か

同じ整備でも、単なる維持管理(原状回復)なら修繕費として費用化できることが多い一方、性能向上・価値増加(例:架装で積載能力を実質的に上げる等)は資本的支出として資産計上になる可能性があります。運送業は架装や大規模修理が起きやすいので、見積書・作業明細・写真を残し、「何を目的に、どこをどう直したか」を説明できるようにしてください。

燃料費の処理:給油・カード決済・インボイスをセットで考える

燃料費は金額も頻度も大きく、税務調査で必ず見られやすい領域です。処理の要点は、(1) 業務関連性、(2) 証憑の保存、(3) インボイス対応、(4) 私用混在の按分です。

レシート・請求書の保存と仕入税額控除

インボイス制度下では、原則として仕入税額控除のために「一定事項の帳簿」と「適格請求書等」の保存が必要です。給油のレシートは、取引先(ガソリンスタンド等)が発行する請求書等に該当し得るため、まずはレシートの記載事項(登録番号、税率区分、税額等)が整っているかを運用で確認します。

給油カード・法人カードの「利用明細だけ」運用に注意

現場では「カード明細があるから大丈夫」と考えがちですが、カード会社の利用明細は、取引の相手方(給油先)が交付する請求書等ではないため、原則として適格請求書等の要件を満たしません。給油カードの場合も、元売・カード会社・加盟店の発行物が何に当たるかを整理し、「請求書等として保存すべき書類」を特定してください。

ここがポイント
電子で受領した請求書等(PDF、Web明細、CSVなど)は、紙に印刷して終わりではなく、電子帳簿保存法(電子取引)の要件に沿った保存が必要になる場面があります。運送業はETC・燃料・リースなど電子明細が多いため、早めに保存ルールを統一しましょう。

私用混在がある場合の按分(とくに個人事業)

個人で自家用車を兼用する場合、燃料費は全額経費にせず、業務利用分を合理的に区分します。おすすめは以下のどちらかです。

  • 走行距離按分:月次で業務走行距離/総走行距離を算定
  • 運転日報按分:運行記録と給油量を突合(配送・訪問の実態を説明しやすい)

「だいたい○割」は否認されやすいので、走行距離メーター写真や運転日報を残す運用が現実的です。

高速代(有料道路)の処理:ETCと適格簡易請求書の保存が要点

高速代は、インボイス制度と電子保存の影響を強く受ける代表例です。ETC利用が中心の会社ほど、保存方法の設計がそのまま税務リスクに直結します。

ETC利用:クレジットカード利用明細だけでは足りない

ETCをクレジットカードで精算している場合、カード会社の利用明細は適格請求書等に該当しないのが基本です。高速道路会社等が提供する利用証明(Web上の利用明細、利用証明書等)を、適格簡易請求書として保存する運用が必要になります。

電子で受け取るETC利用データは、保存要件までセットで設計する

高速道路の利用証明等をWebからダウンロードする場合は、「電子で受領した取引情報(電子取引)」として扱われ、電子取引データ保存の枠組みでの保存が求められます。実務では「ダウンロードして共有フォルダに格納+検索できる命名規則+改ざん防止・訂正削除の履歴確保」のいずれかを満たす設計が現実的です。

実務で迷わない保存フロー(ETCのおすすめ手順)

Step 1: 月次締め日を決める

例:月末締め、翌月10日までに「ETC利用証明(Web明細)」を回収。

Step 2: ETC利用証明(利用明細)をダウンロード

高速道路会社等の会員サイトから、対象月の明細をPDF/CSVで取得。

Step 3: ファイル命名と格納先を固定する

例:2026-01_ETC_車両A_支店名.pdf のように、月・車両・拠点が検索できる形に統一。

Step 4: 帳簿と突合し、差異を潰す

旅費交通費(高速代)の月次合計と、ETC明細の合計を突合。差異がある場合は未計上・二重計上・私用混在のいずれかを疑います。

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否認リスクを下げる管理ポイント:現場運用で差がつく

税務調査で強い運送業は、「証憑が揃っている」だけでなく、「なぜその支出が必要だったか」を説明できる材料(運行実態)が揃っています。

よくある否認・指摘パターン

  • 車両購入や高額整備を“車両費”で一括処理している(資産計上漏れ)
  • ETC・燃料をカード明細だけで処理している(請求書等保存要件の不足)
  • 私用混在の按分根拠がない(とくに個人事業)
  • 車両台帳がなく、車両ごとの費用が追えない(合理性説明が困難)

月次チェック(最小限)

  • 車両台帳:新規取得・売却・入替が反映されているか
  • 燃料費:給油レシート(または請求書等)と金額が一致するか
  • 高速代:ETC利用証明の保存と帳簿突合ができているか
  • 私用混在:按分根拠(距離・日報)が更新されているか

ケーススタディ(匿名)

従業員20名規模の運送会社で、ETCはカード明細のみ保存、燃料は給油カード明細のみという運用でした。月次決算は早い一方で、インボイス開始後に「仕入税額控除の証憑が不足する恐れ」が顕在化。そこで、ETCは高速道路会社サイトから月次利用証明を一括DL、燃料は請求書(または適格簡易請求書に該当する書類)を回収する運用へ変更し、月次で帳簿突合までルーチン化しました。結果として、決算時の証憑探索が減り、税務説明の再現性も上がりました。

よくある質問

Q: 燃料代のレシートをなくしました。経費にできますか? ▼

A:

原則は取引を裏付ける証憑保存が前提です。やむを得ない場合は、給油日・給油先・数量・金額・車両・運行内容を記載した社内証憑を作り、カードの決済記録等と合わせて合理性を補強します。ただし、インボイス制度下の仕入税額控除は「帳簿+請求書等保存」が基本のため、消費税の控除まで含めて確実にするには、取引先が交付する書類の再発行可否も確認してください。
Q: ETCのクレジットカード明細だけで、仕入税額控除はできますか? ▼

A:

一般に、クレジットカード会社の利用明細は取引の相手方が交付する請求書等ではなく、適格請求書等の記載事項も満たしません。高速道路会社等が提供する利用証明(適格簡易請求書としての保存が想定される書類)を保存し、帳簿と突合する運用を推奨します。
Q: 車検費用は「車両費」で処理して問題ないですか? ▼

A:

会計上は会社の科目設計で処理できますが、税務上の説明力を高めるなら「租税公課(自動車税等)」「保険料」「修繕費」「支払手数料」など内容別に分解する方が安全です。とくに大規模な整備や架装は、資本的支出として資産計上になる可能性があるため、明細を保存し、内容に応じて判断してください。

まとめ

  • 車両の取得は原則として固定資産計上し、減価償却で費用配分する
  • 燃料費は証憑(レシート・請求書等)と帳簿の整合が重要。私用混在は按分根拠を残す
  • 高速代はETC利用証明の保存が要点で、カード明細だけの運用はリスクになりやすい
  • インボイス制度下では仕入税額控除要件(帳簿+請求書等保存)を前提に運用設計する
  • 電子で受領する明細は、電子取引データ保存の要件まで含めてルール化すると強い

参照ソース

  • 国税庁「No.2210 必要経費の知識」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2210.htm
  • 国税庁「No.2100 減価償却のあらまし」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2100.htm
  • 国税庁「【確定申告書等作成コーナー】耐用年数(車両・運搬具/工具)」: https://www.keisan.nta.go.jp/r5yokuaru/aoiroshinkoku/hitsuyokeihi/genkashokyakuhi/taiyonensusharyo.html
  • 国税庁「No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5408.htm
  • 国税庁「No.6497 仕入税額控除のために保存する帳簿および請求書等の範囲」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6497.htm
  • 国税庁「(高速道路利用料金に係る適格簡易請求書の保存方法)」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/103.pdf
  • 国税庁「電子帳簿等保存制度特設サイト」: https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/tokusetsu/index.htm

この記事を書いた人

辻 光明

辻 光明

代表税理士

税理士 / 認定経営革新等支援機関

税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。

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