
執筆者:辻 光明
代表税理士
白色申告と青色申告の違い|切替の手続と期限を税理士が解説

白色申告と青色申告の最大の違いは、税務上の特典(控除・損失の扱い等)を受けられるかと、そのために求められる帳簿のレベル(記帳方法・保存)です。白色申告から青色申告に切り替えると、青色申告特別控除などで税負担が下がる可能性がある一方、期限までに申請し、帳簿を整える必要があります。特に「今年から青色にしたい」のに申請が間に合わず、1年先送りになるケースが実務では少なくありません。
白色申告と青色申告の違い
白色申告も青色申告も、所得税の確定申告の区分です。両者の違いは「申告の形式」よりも、事前の承認(申請)と帳簿要件、そして受けられる特典にあります。
控除(青色申告特別控除)の違い
青色申告は、要件を満たすと青色申告特別控除(55万円・一定要件で65万円、または10万円)を受けられます。控除額が大きいほど課税所得が減り、税額に影響します。
一方、白色申告には青色申告特別控除はありません。
帳簿・書類保存の違い
白色申告でも記帳と帳簿書類の保存は必要です(「簡単だから何もしなくてよい」ではありません)。青色申告は、控除などの特典を受けるために、要件に沿った記帳(一般的には複式簿記)や決算書類の添付など、より整った経理が求められます。
提出書類・手続の違い
青色申告を始めるには、税務署へ「青色申告承認申請書」を期限内に提出して承認を受けます。白色申告はこの承認申請が不要です。
白色・青色どっちがいいか(判断の軸)
結論として、事業を継続する前提なら「青色申告」が有利になりやすい一方、状況によっては白色申告を選ぶ合理性もあります。判断は次の軸で行います。
青色申告が向きやすい人
- 所得が一定以上あり、控除のメリットが出やすい
- 事業を継続する予定で、経理体制を整えられる
- 会計ソフトや税理士サポートで記帳負担を下げられる
白色申告が向く場面
- 副業・小規模で、当面は簡便に運用したい
- 今年は申請期限に間に合わず、来年から青色にしたい(つなぎとして白色)
- 事業の開始・終了が流動的で、経理の固定コストを抑えたい
白色申告のデメリット(青色と比較した弱点)
白色申告の弱点は、税務上の「伸びしろ」が小さい点にあります。代表的には次のとおりです。
- 青色申告特別控除がない
- 青色の各種特典(制度上の優遇)を使えない
- 経理の整備が後回しになりやすく、事業の数値管理が弱くなりがち
「今年は利益が少ないから白色でよい」と判断しても、翌年以降に利益が出てから青色へ切り替えようとして期限を逃す、といった例はよくあります。切替は「利益が出てから」ではなく、「利益が出る前提で」準備しておく方が安全です。
比較表でわかる:白色申告と青色申告の違い
| 項目 | 白色申告 | 青色申告 |
|---|---|---|
| 事前手続 | 原則不要 | 青色申告承認申請書が必要 |
| 特別控除 | なし | 10万円/55万円(一定要件で65万円) |
| 帳簿の考え方 | 記帳・保存は必要(簡易になりやすい) | 要件に沿った記帳(一般的に複式簿記)・決算書類添付 |
| 運用コスト | 低め | 会計ソフト・運用設計が必要になりやすい |
| 実務の再現性 | 人に依存しやすい | ルール化しやすく、引継ぎしやすい |
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青色申告への切り替え手続(期限と流れ)
青色申告への切り替えは「申請が通ればOK」ではなく、申請期限と、その後の経理運用がセットです。ここを外すと、控除の適用に届かないことがあります。
青色申告承認申請書の提出期限
原則として、青色申告をしようとする年の3月15日までに提出します。また、1月16日以後に新たに事業を開始した場合は、事業開始から2か月以内が期限です。
青色申告 切り替えの実務ステップ
Step 1: 今年分で青色にしたいか、期限を判定する
- 原則:その年の3月15日まで
- 新規開業:開業(業務開始)から2か月以内
Step 2: 青色申告承認申請書を提出する
- 提出先:納税地の所轄税務署
- 提出方法:e-Taxまたは書面提出
Step 3: 記帳方法と運用を決める(複式簿記/会計ソフト)
- 55万円控除を狙うなら、複式簿記+必要書類の添付を前提に設計
- 証憑(領収書・請求書等)の整理ルールを決める
Step 4: 決算書類の作成・確定申告で控除を適用する
- 期限内申告(原則、翌年3月15日)までに提出
- 控除要件に沿って書類を添付し、適用額を記載
税理士の現場で多い失敗パターン
税理士法人 辻総合会計(クリニック・中小事業者の会計支援を中心に30年以上)では、次の相談が頻出です。
- 申請は出したが、帳簿が整わず控除要件に届かなかった
- 期限(3月15日)を過ぎてから「今年から青色にしたい」と気づいた
- 証憑が散逸し、経費の根拠が弱くなった
青色申告のメリットを取り切るには、「申請」よりも「運用設計」が重要です。
よくある質問
Q: 白色申告から青色申告に変えると、いつから適用されますか?
A:
原則として、青色申告をしたい年の3月15日までに青色申告承認申請書を提出し、その年分の申告から適用を受けます。期限を過ぎると、原則として翌年分からの適用になります。Q: 青色申告の65万円控除は誰でも受けられますか?
A:
受けられるのは一定の要件を満たす場合です。青色申告特別控除には55万円(一定要件で65万円)や10万円があり、帳簿・提出書類・期限内申告などの要件を満たす必要があります。Q: 白色申告は記帳しなくていいのですか?
A:
いいえ。白色申告でも、所得を正しく計算して申告するために、取引の記帳や帳簿書類の保存が求められます。運用を軽くしすぎると、後で数字が追えず困ることがあります。まとめ
- 白色申告と青色申告の違いは、特典(控除等)と帳簿要件、事前の承認申請の有無
- 青色申告は青色申告特別控除(55万円・一定要件で65万円/10万円)が狙える
- 青色へ切り替えるには、原則「その年の3月15日まで」に申請が必要(新規開業は開始から2か月以内)
- 白色申告にも記帳・保存は必要で、「何もしなくてよい」わけではない
- 青色のメリットを取り切るには、申請よりも経理の運用設計が重要
参照ソース
- 国税庁「A1-8 所得税の青色申告承認申請手続」: https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/09.htm
- 国税庁「No.2072 青色申告特別控除」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2072.htm
- 国税庁「No.2080 白色申告者の記帳・帳簿等保存制度」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2080.htm
- 国税庁「No.2070 青色申告制度」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2070.htm
この記事を書いた人

辻 光明
代表税理士
税理士 / 認定経営革新等支援機関
税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。
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