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中小企業向けコラム
作成日:2025.05.24
更新日:2026.01.02
辻 光明

執筆者:辻 光明

代表税理士

決算直前にできる節税対策10選|税理士が解説

9分で読めます
決算直前にできる節税対策10選|税理士が解説

決算直前の節税は、「今年の利益を必要な支出に適正に振り替え、税負担を平準化すること」です。問題になりやすいのは、焦って支出を増やした結果、資金繰りが悪化したり、証憑不足で税務調査で否認されたりする点です。そこで本記事では、決算間際でも実行しやすい対策を10個に絞り、優先順位と注意点まで整理します。

決算直前の節税とは

決算直前に検討する節税は、基本的に「当期に損金(経費)として認められる支出・処理」を積み上げる作業です。重要なのは、節税=キャッシュを減らすとは限らない点です。未払計上が認められる類型もありますが、要件が厳格なため、証拠と手続の設計が不可欠になります。

当法人(税理士法人 辻総合会計)では、クリニック・中小企業を中心に決算前の駆け込み相談が毎年増えます。結論としては「やるべき順番」と「やってはいけない線引き」を決めると、短期間でも失敗が減ります。

決算直前にできる節税対策10選

1. 少額減価償却資産の特例(30万円未満)の活用

中小企業者等は、一定要件のもと、取得価額30万円未満の減価償却資産を、事業の用に供した年度に損金算入できる特例があります(年300万円まで等の上限あり)。対象期間(適用期限)もあるため、購入日だけでなく「事業の用に供した日」を意識してください。
ポイントは、「決算日までに利用開始」できるかどうかです。届いたが未使用、設置未了は否認リスクになります。

2. 10万円未満の消耗品・備品を「消耗品費」で適正処理

金額が小さい備品やPC周辺機器、事務用品などは、社内の経理ルールに沿って消耗品費処理が可能な場合があります。ここで重要なのは「必要性」と「事業使用の実態」です。過度な駆け込み購入は、内部統制面でも説明が難しくなります。

3. 短期前払費用(1年以内)の前倒し

保守料、サブスク、家賃の一定部分など、継続的役務に関する前払費用でも、支払日から1年以内に提供を受ける役務で、かつ継続して当期損金処理している場合は、支払時点での損金算入が認められる取扱いがあります。
実務上は、契約書・請求書・支払証憑に加え、「毎期同様の処理をしている」ことが重要です。

ここがポイント
短期前払費用は「毎期継続」が前提です。今期だけ利益調整目的で処理を変えると、否認リスクが上がります。

4. 決算賞与(使用人賞与)の未払計上

決算賞与は、要件を満たせば「翌期支払でも当期損金」とできる代表的な手段です。国税庁の整理では、(1)各人別に支給額を通知、(2)事業年度終了日の翌日から1か月以内に支払、(3)当期に損金経理、といった要件を満たす類型があります。
ポイントは「通知の証拠(メール・書面)」「支払期限管理」「当期損金経理(未払計上)」です。

5. 修繕費の前倒し(資本的支出との線引き)

設備の修理、内装の補修などは、決算前に実施しやすい項目です。ただし、支出内容によっては資産計上(資本的支出)となり、当期に全額費用化できない場合があります。見積書段階で内容を分解し、写真・作業報告・契約書で「原状回復・維持管理」であることを説明できるようにします。

6. 不要在庫の処分・廃棄、棚卸の適正化

滞留在庫や使用予定のない材料・備品は、実態に合わせて処分し、棚卸数量と評価を適正化します。廃棄証明(廃棄依頼書、写真、産廃マニフェスト等)を残すと説明力が上がります。帳簿上だけ減らす行為はリスクが高いので避けてください。

7. 回収不能債権の整理(貸倒処理の検討)

長期滞留の売掛金・未収入金について、回収見込みを再評価し、法的手続や相手先状況を踏まえた整理を行います。貸倒処理は要件が厳しいため、弁護士・回収会社の記録、督促履歴、相手の破産等の客観資料を揃えることが前提です。

8. 福利厚生費の「対象範囲」と「社内規程」の整備

健康診断、予防接種、社内研修、慶弔見舞金など、福利厚生は「全従業員を対象」「社会通念上相当」「規程に基づく」などの整理が重要です。決算前に制度を整える場合は、就業規則や社内規程、運用ルール(対象者・上限・申請方法)を同時に整備します。

9. 研修費・資格取得支援・外部セミナーの実施

決算前に実施しやすく、かつ将来の生産性向上にもつながる支出です。参加記録、研修資料、議事録を残し「事業関連性」を説明できる形にしておきます。オンライン研修の場合も、受講完了日が決算日をまたぐと費用計上時期が論点になります。

10. 広告宣伝・採用費の前倒し(成果物と実施日を明確に)

Web広告、採用媒体、制作物などは、決算前に実施・納品が完了していれば当期費用となりやすい一方、前払や未提供部分が混在しやすい領域です。成果物(バナー、原稿、掲載レポート)、掲載期間、請求の内訳を整理し、短期前払費用の対象になるかも含めて検討します。

どれを優先すべきか:効果とリスクの比較

決算直前は「時間不足」が最大の制約です。下表のように、即効性と否認リスクで棚卸しすると、打ち手の順序が決まります。

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施策キャッシュ影響実行難易度否認リスク決算直前の相性
少額減価償却資産(30万円未満)高い(支払あり)低〜中中良い(供用が鍵)
短期前払費用中(支払あり)中中〜高良い(継続要件)
決算賞与(未払計上)低〜中(支払は翌期)中〜高高条件付きで強い
修繕費中(支払あり)中中良い(線引き注意)
在庫処分・棚卸適正化低〜中中中良い(証拠が鍵)

実行手順(決算2〜4週間前からの進め方)

Step 1: 当期利益の着地見込みを確定する
月次の精度を上げ、前年差異の要因(売上、粗利、人件費、特損)を分解します。

Step 2: 10施策を「実行可能・要件あり・来期向き」に仕分ける
決算日までに完了できるものだけを当期枠に入れます。特に証拠が残るかで判定します。

Step 3: 証憑セットを先に作る(契約書・稟議・通知・写真)
決算賞与は通知、短期前払費用は契約条件、資産は供用記録が要です。

Step 4: 会計処理と税務論点を同時にチェックする
未払計上の可否、資産計上の要否、消費税区分を同時に確認し、仕訳の手戻りを防ぎます。

ここがポイント
「経費になるはず」で先に支払うのではなく、要件と証憑を確認してから実行してください。決算直前は修正仕訳が増えるほどリスクと工数が膨らみます。

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注意点・否認されやすいポイント

  • 形式だけ整えて実態が伴わない(未使用資産、未提供サービス、在籍条件付きの賞与通知など)は否認リスクが高いです。
  • 期ズレ(当期費用にしたいのに、納品・提供・供用が翌期)が最頻出の論点です。
  • 決算賞与は「通知」「1か月以内支払」「損金経理」のどれか1つ欠けるだけで当期損金にならない可能性があります。

よくある質問

Q: 決算直前にPCを買えば、必ず当期の経費になりますか? ▼

A:

取得価額や処理ルールによります。中小企業者等の特例(30万円未満の少額減価償却資産)は「事業の用に供した」ことが重要です。購入しただけで未使用の場合は注意が必要です。
Q: 短期前払費用は、今期だけまとめ払いしても大丈夫ですか? ▼

A:

原則は前払費用ですが、一定の要件(支払から1年以内の役務、継続処理など)を満たす場合に限り、支払時損金が認められます。今期だけ処理を変えるとリスクが上がります。
Q: 決算賞与を翌期に払っても当期の損金にできますか? ▼

A:

一定の類型では可能ですが、各人別の支給額通知、翌日から1か月以内の支払、当期損金経理などの要件を満たす必要があります。運用設計と証拠保全が前提です。

まとめ

  • 決算直前の節税は「当期損金として認められる支出・処理」を要件どおり積む作業
  • 優先度が高いのは、少額減価償却資産、短期前払費用、決算賞与(要件厳格)
  • 成否は「供用・提供・通知・支払期限」など期ズレ論点の管理で決まる
  • 駆け込み購入より、証憑と手続を整えた上で実行することが重要
  • 個別事情で最適解が変わるため、着地見込みとセットで税理士に確認する

参照ソース

  • 国税庁「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5408.htm
  • 国税庁「短期前払費用として損金算入ができる場合」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5380.htm
  • 国税庁「使用人賞与の損金算入時期」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5350.htm

この記事を書いた人

辻 光明

辻 光明

代表税理士

税理士 / 認定経営革新等支援機関

税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。

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本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

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