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中小企業向けコラム
作成日:2026.02.08
辻 光明

執筆者:辻 光明

代表税理士

雑損控除の確定申告ガイド|災害・盗難の損失を取り戻す

7分で読めます
雑損控除の確定申告ガイド|災害・盗難の損失を取り戻す

雑損控除とは、災害や盗難などで受けた損害について、確定申告により所得から差し引ける(所得控除)制度です。結論として、対象となる損害であれば税金が戻る可能性があります。一方で、原因・資産・証拠書類の要件を外すと否認されやすく、特に「詐欺」は原則として雑損控除の対象外です。損害が大きい年ほど申告設計が重要になりますので、要点を実務順に解説します。

雑損控除とは(災害・盗難の確定申告で税金が戻る仕組み)

雑損控除は、個人が保有する生活用資産(住宅・家財など)が災害・盗難・横領で損害を受けた場合に、一定額を所得から控除できる制度です。「所得控除」のため、税率が高いほど還付(または納税額の減少)効果が大きくなります。

適用の基本要件は次の3点です。

  • 損害の原因が「災害(自然・人為の異常災害等)」「盗難」「横領」に該当すること
  • 損害を受けた資産が、生活に通常必要な資産であること(事業用や「生活に通常必要でない資産」は除外)
  • 確定申告で雑損控除を申請し、根拠資料を添付・提示できること
ここがポイント
「詐欺」や「恐喝」は、雑損控除の対象外とされています。被害実態が同じように見えても、税務上の扱いが異なるため、まずは原因の整理が最優先です。

雑損控除の対象になる損害・ならない損害(盗難確定申告/災害確定申告)

「何の被害が対象か」を誤ると、計算以前にアウトになります。整理のため、典型例を並べます。

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区分例雑損控除
災害(自然現象)台風・洪水・地震・落雷・雪害対象
災害(人為の異常)火災・爆発など対象
生物による異常災害害虫などによる異常な被害対象
盗難空き巣、ひったくり、車両盗難対象
横領家族・従業員等による横領(要立証)対象
詐欺投資詐欺、特殊詐欺、フィッシング等原則対象外
恐喝脅迫により金銭を渡した等原則対象外

「盗難」「横領」は対象になり得ますが、後述のとおり、被害の事実を示す資料が重要です(警察への届出、受理番号、修理見積など)。

雑損控除の計算方法(2つの式と、還付額のイメージ)

雑損控除額は、次の(1)(2)のうち「多い方」です。計算はやや複雑ですが、押さえるべきポイントは「損害の評価は原則として時価」「保険金等で補てんされた分は差し引く」「一定の自己負担(10%または5万円)がある」です。

  • (1)(損害金額+災害等関連支出-保険金等)-(総所得金額等×10%)
  • (2)(災害関連支出-保険金等)-5万円

用語のイメージ:

  • 損害金額:被害直前の時価を基にした損害(住宅・家財など)
  • 災害等関連支出:片付け・撤去・修繕のためのやむを得ない支出等
  • 保険金等:保険金、損害賠償金など

例(概算の考え方):

  • 年間所得(総所得金額等)600万円、災害の損害100万円、片付け等の支出20万円、保険金30万円の場合
    • (1)(100+20-30)-(600×10%)=90-60=30万円
    • (2)(災害関連支出が20万円として)(20-30)-5万円=マイナス(0)
    • 雑損控除は30万円(この控除×税率分だけ税負担が減少)
ここがポイント
実務では「損害金額(時価)の算定」と「関連支出の線引き」が論点になりやすいです。領収書がない支出や、将来のリフォーム費用などは、そのまま認められません。

雑損控除の確定申告手順(必要書類・り災証明・盗難届)

ここからが実務の本丸です。書類が揃うほど、説明コストと否認リスクが下がります。税理士法人 辻総合会計でも、申告サポートの現場では「証拠の整備」を最優先に進めます。

Step 1: 被害内容を整理(原因・資産・補てんの有無)

  • 原因:災害/盗難/横領のいずれか(詐欺の可能性がある場合は早期に切り分け)
  • 資産:住宅・家財・衣類等の生活用資産か、事業用か
  • 補てん:保険金、給付金、賠償金の受領(見込み含む)

Step 2: 証拠を確保(書類の優先順位を決める)

  • 災害:り災証明書(自治体)、被害写真、修理見積、撤去費用の領収書
  • 盗難:警察への届出(受理番号)、盗難被害の状況メモ、損害品の購入記録(可能なら)
  • 共通:保険金の支払通知、給付金の通知、領収書一式

Step 3: 雑損控除の明細を作成し、確定申告書に反映

  • 損害金額・関連支出・保険金等を整理し、控除額を算定
  • 雑損控除は他の所得控除より先に控除される扱い(申告設計上のメリット)

Step 4: 期限内に提出(控除しきれない場合は繰越も検討)

  • その年に控除しきれない場合、原則として翌年以後3年間の繰越が可能
  • 一定の「特定非常災害」などの場合は、繰越期間が5年間となることがあります

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災害減免法との違い(どちらが有利かを比較する)

災害に限っては、雑損控除以外に「災害減免法による所得税の軽減免除」という別ルートがあります。ポイントは、雑損控除は「所得控除」、災害減免法は「税額の軽減・免除」で、適用要件と有利不利が変わることです。

←横にスクロールできます→
項目雑損控除災害減免法
対象原因災害・盗難・横領災害のみ
効果所得から控除(税率に応じて効く)所得税を軽減・免除
主な要件生活用資産の損害等住宅・家財の損害が時価の1/2以上等、所得要件あり
選択申告により適用雑損控除と選択(併用ではなく有利な方)

実務では、所得水準・被害規模・保険金の有無で有利判定が変わります。「災害=必ず雑損控除」ではありません。試算して比較するのが安全です。

よくある質問

Q: 盗難に遭いました。確定申告で戻る可能性はありますか? ▼

A:

盗難は雑損控除の対象になり得ます。警察への届出(受理番号等)や、被害品・修理費用など損害を裏付ける資料を揃えたうえで、損害金額と補てん(保険金等)を整理して申告します。
Q: 詐欺でお金を失いました。雑損控除は使えますか? ▼

A:

原則として使えません。雑損控除は災害・盗難・横領が対象で、詐欺や恐喝は対象外とされています。損害の性質が近いケースでも、税務上の区分で結論が変わるため注意が必要です。
Q: 損害が大きく、今年の所得から控除しきれない場合はどうなりますか? ▼

A:

原則として翌年以後3年間、条件により5年間の繰越控除が可能です。繰越の可否は損害の種類や災害区分で分岐するため、申告書の作り方(付表の要否など)も含めて確認しましょう。

まとめ

  • 雑損控除は、災害・盗難・横領による生活用資産の損害を所得控除できる制度
  • 詐欺・恐喝は原則として対象外。まず原因の切り分けが重要
  • 計算は「損害+関連支出-保険金等」から一定の自己負担を控除して算定
  • 申告は証拠が命。り災証明、盗難届、領収書、保険金通知を優先して整備
  • 災害の場合は災害減免法との比較が必須。控除しきれない場合は繰越も検討

参照ソース

  • 国税庁「No.1110 災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1110.htm
  • 国税庁「No.1902 災害減免法による所得税の軽減免除」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1902.htm
  • 国税庁「災害に関する所得税の取扱い(個人の方)」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/saigai/h30/0018008-045/index.htm
  • 国税庁「り災証明書の添付又は提示」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/saigai/h30/0018008-045/03-1.htm

この記事を書いた人

辻 光明

辻 光明

代表税理士

税理士 / 認定経営革新等支援機関

税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。

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