
執筆者:辻 光明
代表税理士
通信費・携帯代を経費にする方法と按分割合|税理士が解説

通信費・携帯代を経費にできる条件とは
通信費・携帯代を経費にする核心は、「事業で使った分を説明できるか」です。個人のスマホや自宅回線を仕事にも使う場合は家事関連費として扱われ、私用分を除いた事業分のみが必要経費になります。取引記録や利用状況に基づき「事業に直接必要だった部分」を区分できることが前提です。
通信費に含まれる代表例
- 携帯電話の基本料金・通話料・通信料(データ)
- モバイルWi-Fi、テザリング用SIM
- 自宅インターネット回線(固定回線)
- 業務用クラウドPBX・050番号・IP電話の利用料
- 事業用メール/チャット等の通信関連サブスク(実態により)
「家事関連費」になるケースと考え方
自宅回線や個人スマホのように、生活(家事)と事業が混在する支出は家事関連費に該当し得ます。国税庁の考え方では、原則として「業務上必要な部分を明らかに区分できる金額」に限り必要経費に算入できます。
通信費の按分割合の決め方(方法・手順)
按分割合は「客観的に説明できる基準」で決めます。迷ったときは、(1)実績データ、(2)就業時間、(3)契約/端末の分離、の順で精度が上がります。
按分の基本ルール(実務での優先順位)
- 実績ベース:通話明細、アプリの利用時間、データ通信量など
- 時間ベース:業務時間 ÷ 全稼働時間(私用含む)
- 端末/回線ベース:業務専用回線を用意し、原則100%経費(私用利用は別途)
按分割合を作るステップ
Step 1: 対象支出を整理する
携帯(音声/データ)、自宅回線、モバイルWi-Fiなど、契約単位で分けます。請求書やクレカ明細も紐づけます。
Step 2: 1〜2か月分の根拠データを集める
通話明細、キャリアの利用内訳、スマホのスクリーンタイム、業務アプリの利用統計などを保存します。
Step 3: 按分基準を決めてルール化する
例:
- 通話:業務通話分(件数/時間)で按分
- データ:業務アプリ利用時間で按分
- 固定回線:在宅業務時間比で按分
Step 4: 年間でブレないように運用する
毎月変動させると説明が難しくなるため、原則は「年1回見直し」。大きく業務量が変わった月だけメモを残します。
Step 5: 仕訳に反映し、証憑と一緒に保存する
通信費の合計と按分率、事業分の金額が追える状態にします(メモでも可)。
よく使われる按分パターンと目安(携帯・自宅回線)
按分の「正解」は一つではありませんが、税務上の説明力が高いパターンがあります。ここでは、現場で採用されやすい目安と根拠の作り方を整理します。
| 対象 | 推奨の按分基準 | 説明しやすさ | 実務の目安例 |
|---|---|---|---|
| 個人スマホ(通話中心) | 通話明細(業務先への通話時間/件数) | 高い | 業務通話が多い業種は60〜90%になりやすい |
| 個人スマホ(データ中心) | 業務アプリ利用時間(カレンダー/チャット/メール等) | 中〜高 | 40〜80%(在宅・外出頻度で変動) |
| 自宅ネット回線 | 在宅業務時間 ÷ 自宅滞在時間(または起きている時間) | 中 | 20〜60%(副業か本業かで差) |
| 業務専用SIM/2台目 | 原則100%(私用混在がない前提) | 最も高い | 90〜100%(私用が混ざるなら要調整) |
具体例:携帯代12,000円を按分する
- 月額:12,000円(音声+データ合算)
- スクリーンタイム:業務アプリ利用 45時間、私用 30時間(合計75時間)
- 按分:45 ÷ 75 = 60%
- 必要経費:12,000円 × 60% = 7,200円(私用分 4,800円)
具体例:自宅回線6,600円を按分する(在宅中心)
- 月額:6,600円
- 在宅業務:平日3時間×20日=60時間
- 自宅滞在(起きている時間):平日6時間×20日+休日12時間×8日=120+96=216時間
- 按分:60 ÷ 216 ≒ 27.8% → 28%
- 必要経費:6,600円 × 28% = 1,848円
個人事業主と法人での扱いの違い
結論として、考え方は同じで「業務利用分だけが損金/必要経費」です。ただし、法人は「役員・従業員への支給形態」によって論点が増えます。
個人事業主のポイント
- 私用混在は按分が基本
- 計算根拠(明細・統計・時間)を残す
- 事業専用回線に寄せるほどシンプル
法人のポイント(スマホ支給・BYOD)
- 会社契約で支給:業務利用が中心なら通信費として処理しやすい
- 私用も許容する場合:社内規程(私用可否・上限・精算ルール)を作ると説明力が上がる
- 個人契約を会社が負担(BYOD的運用):実態次第で給与課税リスクや経費否認の論点が出るため、運用設計が重要
税理士法人 辻総合会計では、通信費は「金額が継続しやすい固定費」ゆえに、早い段階でルール化して経理処理を標準化するケースが多いです。
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税務調査で否認されないための証拠と保存(注意点)
通信費は少額でも「毎月出るため累積が大きい」科目です。否認を避けるコツは、按分率の正確さよりも説明可能性の確保です。
残しておきたい証拠(最低限)
- キャリアの請求書・明細(PDF/紙)
- 通話明細(業務先が分かる形が望ましい)
- スクリーンタイムや業務アプリ利用統計のスクショ(年1回でも可)
- 按分計算メモ(Excel/会計ソフトのメモ欄で可)
- 「なぜこの割合か」を一文で説明できるルール
帳簿・書類の保存もセットで考える
按分の根拠資料は、帳簿や請求書と同様に一定期間保存します。青色・白色を問わず、記帳と保存は申告の前提となります。
よくある質問
Q: 「仕事にも使っているから半分」を毎月計上しても大丈夫ですか?
A:
一律50%は否認リスクが上がります。国税庁は家事関連費について「業務上直接必要であった部分を明らかに区分できる金額」に限る考え方です。通話明細や利用時間など、割合の根拠を作った上で按分してください。Q: 事業用に2台目(SIM)を契約したら100%経費にできますか?
A:
原則は100%で整理しやすくなります。ただし私用が混在するなら、その混在分は控除し、私用がない運用(私用アプリを入れない、家族に貸さない等)を徹底する方が安全です。Q: 自宅Wi-Fiはどんな基準で按分するのが現実的ですか?
A:
在宅業務時間比が最も説明しやすい基準です。加えて、オンライン会議やクラウド利用が多い業態では、業務アプリの利用統計を補助資料として残すと説得力が上がります。まとめ
- 通信費・携帯代は、事業利用分を区分できれば必要経費にできる
- 個人スマホ・自宅回線は家事関連費になりやすく、按分根拠(明細・利用時間等)が重要
- 按分は「実績→時間→分離」の順で説明力が高まる
- 一律50%ではなく、再現性のあるルールを作り年1回見直す
- 記帳と証憑保存をセットで整え、調査対応力を上げる
参照ソース
- 国税庁「No.2210 必要経費の知識(家事関連費)」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2210.htm
- 国税庁「所得税基本通達 家事関連費(45-2等)」: https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/07/01.htm
- 国税庁「記帳や帳簿等保存・青色申告(暮らしの税情報)」: https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/01_2.htm
この記事を書いた人

辻 光明
代表税理士
税理士 / 認定経営革新等支援機関
税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。
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