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クリニック向けコラム
作成日:2026.02.04
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

産婦人科開業ガイド2026|分娩対応・設備投資・収益モデルを税理士が解説

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産婦人科開業ガイド2026|分娩対応・設備投資・収益モデルを税理士が解説

産婦人科開業ガイド2026|分娩対応・設備投資・収益モデルを税理士が解説

産婦人科クリニックの開業を検討されている先生に向けて、分娩対応の有無による経営戦略の違い、設備投資、収益モデルを詳しく解説します。少子化が進む中でも、産婦人科には安定した需要があります。開業資金の調達から黒字化までのロードマップを、クリニック専門の税理士がお伝えします。

産婦人科の市場環境|少子化時代の開業戦略

少子化の中でも産婦人科需要は存在する

日本の出生数は減少を続けており、2023年には約76万人と過去最少を更新しました。しかし、産婦人科の需要は分娩だけではありません。以下の領域で安定した需要が見込めます。

産婦人科の需要領域

  • 婦人科一般:月経不順、更年期障害、子宮筋腫、子宮内膜症
  • がん検診:子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がんの早期発見
  • 不妊治療:2022年の保険適用拡大で需要が急増
  • 思春期・更年期外来:ホルモン補充療法、ピル処方
  • 妊婦健診:分娩を取り扱わなくても健診のみ対応可能

産婦人科施設の減少と開業チャンス

厚生労働省の「医療施設動態調査」によると、分娩を取り扱う医療施設は1990年代から半減しています。特に地方では「お産難民」という言葉が生まれるほど、分娩施設の不足が深刻です。

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年分娩取扱施設数(病院+診療所)
1996年約3,900施設
2010年約2,600施設
2023年約1,900施設

この状況は、開業を検討する先生にとってはチャンスでもあります。競合が少ない地域で分娩対応クリニックを開業すれば、安定した患者確保が可能です。

開業形態の選択肢

産婦人科の開業には、大きく分けて3つの形態があります。

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形態特徴想定年商
外来のみ(婦人科)初期投資が少ない、分娩リスクなし8,000万〜1億5,000万円
妊婦健診+外来分娩は連携病院へ紹介1億〜1億8,000万円
分娩対応クリニック高収益だが設備投資・人材確保が必要2億〜4億円

分娩対応 vs 外来のみ|経営判断のポイント

外来のみ(婦人科クリニック)のメリット・デメリット

メリット

  • 初期投資を5,000万〜8,000万円に抑えられる
  • 24時間対応の必要がなく、ワークライフバランスを保てる
  • 分娩に伴う医療訴訟リスクが低い
  • 1人医師でも運営可能

デメリット

  • 収益の上限が限定的
  • 不妊治療を行わない場合、差別化が難しい
  • 患者の「出産まで診てほしい」ニーズに応えられない

分娩対応クリニックのメリット・デメリット

メリット

  • 分娩1件あたり50万〜70万円の高収益
  • 分娩から産後ケアまで一貫したサービス提供
  • 地域での存在感、ブランド確立
  • 継続的な患者関係(次子の出産、婦人科通院)

デメリット

  • 初期投資が1億5,000万〜3億円と高額
  • 24時間365日のオンコール体制が必要
  • 助産師・看護師の確保が困難
  • 医療訴訟リスクが高い

税理士から見た経営判断

税理士の実務ポイント:分娩対応の可否は、単なる収益だけでなく「先生のライフスタイル」と「地域の需要」で判断すべきです。50代以降の開業であれば、外来のみでストレスなく経営する選択も合理的です。一方、40代前半で体力があり、地域に分娩施設が不足しているなら、分娩対応は大きなビジネスチャンスとなります。

開業費用の詳細|形態別の初期投資

外来のみ(婦人科クリニック)の開業費用

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項目費用目安備考
内装工事1,000万〜1,500万円診察室2〜3室、内診台設置
医療機器1,500万〜2,500万円超音波、コルポスコープ等
保証金・敷金300万〜600万円30〜50坪のテナント
運転資金1,500万〜2,000万円6ヶ月分を確保
開業諸経費300万〜500万円広告、備品、医師会費
合計4,600万〜7,100万円—

分娩対応クリニックの開業費用

分娩対応の場合、設備投資が大幅に増加します。

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項目費用目安備考
土地・建物5,000万〜1億円戸建て開業が主流、150〜300坪
内装・設備工事3,000万〜5,000万円分娩室、手術室、病室
医療機器4,000万〜7,000万円分娩監視装置、手術器具等
保証金・敷金500万〜1,000万円戸建ての場合は土地取得費に含む
運転資金3,000万〜5,000万円8〜12ヶ月分を推奨
開業諸経費500万〜800万円広告、備品、各種届出
合計1億6,000万〜2億9,800万円—

分娩対応で追加される主な設備費用

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設備費用目安必要性
分娩室(LDR含む)1,500万〜3,000万円必須
手術室1,000万〜2,000万円帝王切開対応に必須
新生児室・NICU準備室500万〜1,000万円必須
入院病室(8〜15床)1,000万〜2,000万円必須
厨房設備300万〜600万円入院患者への食事提供

必要な医療機器|形態別リスト

外来のみで必要な基本機器

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機器名価格帯用途
経膣超音波装置300万〜600万円子宮・卵巣の観察、妊娠確認
経腹超音波装置200万〜400万円妊婦健診、腹部検査
コルポスコープ80万〜200万円子宮頸部の拡大観察
内診台(電動)80万〜150万円内診・処置に必須
心電計30万〜80万円術前検査等
血液検査機器100万〜300万円院内検査対応の場合
電子カルテ200万〜500万円産婦人科対応システム

分娩対応で追加される機器

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機器名価格帯用途
分娩監視装置(CTG)150万〜300万円胎児心拍・陣痛モニタリング
分娩台100万〜250万円分娩室に設置
新生児蘇生器具一式200万〜400万円新生児の緊急対応
保育器(インキュベーター)150万〜300万円新生児管理
麻酔器300万〜600万円帝王切開・無痛分娩対応
手術用無影灯150万〜400万円手術室設備
電気メス100万〜200万円手術対応
吸引分娩装置50万〜100万円分娩介助

税理士の実務ポイント:分娩監視装置や超音波装置は5〜7年でのリース契約が一般的です。初期投資を抑えつつ、常に最新機種を使用できるメリットがあります。リース料は全額損金算入可能です。

診療単価と分娩費用|収益の柱を理解する

外来診療の単価

産婦人科の外来診療は、検査や処置が多いため比較的高単価です。

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診療内容診療報酬(目安)
初診(検査込み)4,000〜8,000円
再診1,500〜3,000円
妊婦健診(公費負担分除く)5,000〜10,000円
子宮がん検診3,000〜5,000円
超音波検査5,300円(530点)
コルポスコピー2,100円(210点)
子宮頸管ポリープ切除9,900円(990点)

分娩費用の相場

分娩費用は地域や施設のサービス内容により大きく異なります。

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項目費用相場備考
正常分娩(入院5日)45万〜60万円都市部は高め
帝王切開(入院7〜10日)60万〜80万円保険適用あり
無痛分娩加算10万〜20万円自費
個室料金(1日)1万〜3万円自費
出産育児一時金50万円2023年4月〜増額

分娩1件あたりの収益

正常分娩の場合、出産育児一時金50万円に加え、自費負担分や個室料金を合わせると、1件あたり55万〜75万円の収益となります。

自費診療の収益機会

産婦人科は自費診療の余地が大きい診療科でもあります。

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自費診療料金相場備考
ピル処方(1ヶ月分)2,500〜3,500円継続処方で安定収益
緊急避妊ピル8,000〜15,000円—
ブライダルチェック15,000〜30,000円セット検査
4Dエコー5,000〜10,000円妊婦向けサービス
産後ケア入院(1泊)20,000〜50,000円自治体補助あり

収益シミュレーション|外来のみ vs 分娩対応

外来のみ(婦人科クリニック)の収益モデル

前提条件

  • 1日患者数:40〜50人
  • 診療日数:月22日
  • 平均診療単価:5,000円
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項目月額年額
医業収益440万〜550万円5,280万〜6,600万円
自費収益(ピル・検診等)80万〜150万円960万〜1,800万円
総収益520万〜700万円6,240万〜8,400万円
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項目月額年額
人件費(スタッフ4〜5名)150万〜200万円1,800万〜2,400万円
家賃50万〜80万円600万〜960万円
医薬品・材料費50万〜80万円600万〜960万円
リース料・減価償却30万〜50万円360万〜600万円
その他経費40万〜60万円480万〜720万円
経費合計320万〜470万円3,840万〜5,640万円
院長報酬(税引前)200万〜230万円2,400万〜2,760万円

分娩対応クリニックの収益モデル

前提条件

  • 分娩件数:月15〜25件(年180〜300件)
  • 外来患者数:1日30〜40人
  • 分娩単価:60万円
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項目月額年額
分娩収益900万〜1,500万円1億800万〜1億8,000万円
外来収益300万〜400万円3,600万〜4,800万円
自費収益100万〜200万円1,200万〜2,400万円
総収益1,300万〜2,100万円1億5,600万〜2億5,200万円
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項目月額年額
人件費(スタッフ15〜25名)500万〜900万円6,000万〜1億800万円
建物維持費・家賃相当80万〜150万円960万〜1,800万円
医薬品・材料費100万〜200万円1,200万〜2,400万円
食材費30万〜60万円360万〜720万円
リース料・減価償却80万〜150万円960万〜1,800万円
その他経費80万〜120万円960万〜1,440万円
経費合計870万〜1,580万円1億440万〜1億8,960万円
院長報酬(税引前)430万〜520万円5,160万〜6,240万円

税理士の実務ポイント:分娩対応クリニックは収益も大きいですが、人件費比率が40〜50%と高くなります。助産師の年収は500万〜600万円が相場であり、夜勤手当を含めると更に増加します。採用・定着のための人件費戦略が経営の鍵を握ります。

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開業スケジュールと届出|分娩対応は1.5〜2年計画

外来のみの開業スケジュール(約10〜12ヶ月)

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時期内容
12ヶ月前開業コンセプト決定、事業計画作成
10ヶ月前物件探し開始、金融機関との融資相談
8ヶ月前物件契約、設計・内装工事発注
6ヶ月前医療機器選定・発注、スタッフ採用開始
4ヶ月前内装工事、各種届出準備
2ヶ月前機器搬入、スタッフ研修、内覧会
開業診療所開設届提出、保険医療機関指定申請

分娩対応の開業スケジュール(約18〜24ヶ月)

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時期内容
24ヶ月前開業コンセプト決定、事業計画作成
22ヶ月前土地探し・取得交渉、金融機関との融資相談
18ヶ月前土地取得、建築設計開始
15ヶ月前建築確認申請、助産師・看護師の採用活動開始
12ヶ月前建築工事着工
8ヶ月前医療機器選定・発注、保健所との事前協議
4ヶ月前建築工事完了、機器搬入、各種届出
2ヶ月前スタッフ研修、シミュレーション訓練
開業助産所開設届、病床設置許可申請(有床の場合)

主な届出・許可

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届出先届出・許可備考
保健所診療所開設届開設後10日以内
厚生局保険医療機関指定申請毎月1日付で指定
保健所有床診療所の届出19床以下の場合
都道府県助産所開設届出分娩対応の場合
消防署防火管理者届出有床の場合必須

助産師確保の重要性

分娩対応クリニックにおいて、助産師の確保は最大の課題です。

助産師確保のポイント

  • 開業18ヶ月前から採用活動を開始
  • 日本助産師会や看護協会への求人掲載
  • 近隣の看護学校・助産学校との関係構築
  • 給与水準は地域相場より10〜20%高めに設定
  • 夜勤体制を考慮し、最低4〜6名の常勤助産師が必要
  • 院内助産システムや助産師外来の導入で働きがいをアピール

税理士からの経営アドバイス

1. 開業形態は「ライフプラン」と「地域需要」で決める

分娩対応は高収益ですが、24時間体制の負担は大きいです。50代以降の開業であれば、外来のみで無理なく経営する選択も十分に合理的です。まずは地域の分娩施設の状況を調査し、自身の体力・家族の理解と照らし合わせて判断してください。

2. 分娩対応なら「年間200件」を損益分岐点に

分娩対応クリニックの損益分岐点は、一般的に年間150〜200件の分娩です。これを下回ると固定費(特に人件費)を賄えず赤字になります。開業前にエリアの出生数、競合施設数を詳細に分析し、200件以上の分娩が見込めるか慎重に検討してください。

3. 人件費比率は45%以内を目標に

分娩対応クリニックは人件費が経営を圧迫しやすい構造です。総収益に対する人件費比率45%以内を目標に、適正な人員配置と給与設計を行いましょう。助産師の採用難を理由に過剰な給与を提示すると、経営を圧迫します。

4. 無痛分娩・4Dエコーで差別化と収益向上

近年、無痛分娩の需要が急増しています。麻酔科医との連携または自院での対応体制を整えることで、差別化と収益向上の両方が実現できます。無痛分娩加算は10〜20万円の自費収入となり、年間100件対応すれば1,000万〜2,000万円の増収です。

5. 産後ケア事業で地域に貢献しながら収益確保

2021年の母子保健法改正により、産後ケア事業が市区町村の努力義務となりました。自治体との連携で産後ケア入院を受け入れれば、空床対策と地域貢献を両立できます。1泊2万〜5万円の収益が見込め、分娩件数の減少をカバーする収益源となります。

6. 医療法人化のタイミング

産婦人科クリニックは収益が大きいため、年間所得が2,500万円を超えたら医療法人化を検討しましょう。法人化により、所得分散、退職金積立、社会保険料の最適化が可能です。分娩対応クリニックは開業2〜3年目で法人化の目安に達することが多いです。

まとめ

産婦人科の開業は、分娩対応の有無により経営の規模とリスクが大きく異なります。

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項目外来のみ分娩対応
初期投資5,000万〜8,000万円1億5,000万〜3億円
年間収益6,000万〜8,000万円1億5,000万〜2億5,000万円
院長年収(税引前)2,000万〜3,000万円5,000万〜6,000万円
勤務体制日勤のみ24時間365日
リスク低い高い(医療訴訟等)

少子化の中でも、婦人科一般・不妊治療・産後ケアなど需要は多様化しています。地域のニーズを正確に把握し、自身のライフスタイルに合った開業形態を選択することが成功の鍵です。

産婦人科クリニックの開業をお考えの先生は、事業計画の段階から税理士にご相談ください。資金調達、収支シミュレーション、節税対策まで、開業から黒字化までトータルでサポートいたします。


参考リンク

  • 厚生労働省:小児・周産期医療について
  • 日本産婦人科医会
  • 日本産科婦人科学会

関連記事(院長向け)

  • 産婦人科開業ガイド2026(費用・収益)
  • クリニック医療法人化ガイド2026
  • 消化器内科開業ガイド2026

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

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