
執筆者:辻 勝
会長税理士
消化器内科開業ガイド2026|内視鏡設備・診療単価・収益シミュレーションを税理士が解説

消化器内科開業ガイド2026|内視鏡設備・診療単価・収益シミュレーションを税理士が解説
消化器内科の開業をお考えの先生に向けて、医療に特化した税理士の視点から、内視鏡設備の選択、診療報酬の仕組み、収益シミュレーションまで、開業成功のポイントを詳しく解説します。
消化器内科は、がん検診のニーズ増加や高齢化社会を背景に、安定した患者数が見込める診療科目です。一方で、内視鏡設備への初期投資が大きく、開業前の綿密な資金計画が欠かせません。
消化器内科クリニックの市場環境
内視鏡検診ニーズの拡大
日本では胃がん・大腸がんの患者数が多く、早期発見・早期治療の重要性が広く認知されています。特に、2016年から開始された胃がん内視鏡検診の対象者拡大により、内視鏡検査を受ける方が増加傾向にあります。
厚生労働省のがん検診推進事業により、50歳以上の方への胃内視鏡検診が推奨されており、今後も検診需要は堅調に推移すると見込まれます。
高齢化社会と消化器疾患
高齢者人口の増加に伴い、以下の疾患が増えています。
- 逆流性食道炎:高齢者に多い
- ピロリ菌関連疾患:胃潰瘍、慢性胃炎
- 大腸ポリープ:大腸がん予防のための切除ニーズ
- 便秘・下痢など機能性消化管障害
これらの疾患に対応できる消化器内科クリニックは、地域医療において重要な役割を担っています。
内視鏡対応クリニック vs 外来のみクリニック
消化器内科を開業する際、最も重要な意思決定の一つが「内視鏡設備を導入するかどうか」です。
内視鏡対応クリニックの特徴
メリット
- 診療単価が高く、収益性が良い
- 専門性をアピールでき、患者さんを集めやすい
- 検診から治療まで一貫した医療を提供できる
- 紹介元となる医療機関との連携がスムーズ
デメリット
- 初期投資が5,000万円〜1億円と高額
- 内視鏡技師などのスタッフ確保が必要
- 機器のメンテナンス費用がかかる
- 感染対策(洗浄・消毒)への投資が必要
外来のみクリニックの特徴
メリット
- 初期投資を3,000万円程度に抑えられる
- 少人数での運営が可能
- 開業までの準備期間が短い
デメリット
- 診療単価が低く、患者数で勝負が必要
- 内視鏡検査は他院への紹介となる
- 専門性の訴求が難しい
税理士からのアドバイス
内視鏡導入の目安は、週20件以上の検査見込みがあるかどうかです。
立地や競合状況を分析し、開業後3年で黒字化できる見通しが立つ場合は、内視鏡設備への投資を検討する価値があります。逆に、患者数の見込みが不透明な場合は、まず外来のみで開業し、患者基盤ができてから設備投資する段階的アプローチも選択肢です。
必要な医療機器と初期費用
内視鏡システムの価格帯
内視鏡設備は、メーカーや機能によって価格が大きく異なります。主要メーカーはオリンパス、富士フイルム、ペンタックス(HOYA)の3社です。
| 機器名 | 価格帯(税別) | 備考 |
|---|---|---|
| 上部消化管内視鏡(経口) | 300〜500万円 | 胃カメラ |
| 上部消化管内視鏡(経鼻) | 250〜400万円 | 細径タイプ |
| 下部消化管内視鏡 | 350〜550万円 | 大腸カメラ |
| 内視鏡用プロセッサー | 500〜1,000万円 | 画像処理装置 |
| 光源装置 | 300〜500万円 | LED光源が主流 |
| 内視鏡洗浄消毒装置 | 200〜400万円 | 感染対策必須 |
| 内視鏡用モニター | 100〜200万円 | 高精細モニター |
内視鏡関連設備の合計:2,000〜3,500万円程度
その他の医療機器
| 機器名 | 価格帯(税別) | 必要度 |
|---|---|---|
| 超音波診断装置(腹部エコー) | 300〜800万円 | 必須 |
| X線撮影装置 | 500〜1,000万円 | 推奨 |
| 心電計 | 30〜80万円 | 必須 |
| 電子カルテシステム | 200〜500万円 | 必須 |
| 自動血球計数装置 | 100〜200万円 | 推奨 |
| 生化学分析装置 | 150〜300万円 | 推奨 |
開業資金の総額目安
内視鏡対応の消化器内科クリニックを開業する場合、以下の資金が必要です。
| 項目 | 金額(税別) |
|---|---|
| 内装工事費 | 2,000〜4,000万円 |
| 医療機器 | 3,500〜6,000万円 |
| 什器・備品 | 200〜500万円 |
| 保証金・敷金 | 300〜600万円 |
| 開業前人件費 | 100〜200万円 |
| 広告宣伝費 | 100〜300万円 |
| 運転資金(3〜6ヶ月分) | 1,500〜3,000万円 |
| 合計 | 8,000万円〜1億5,000万円 |
診療単価と内視鏡検査の点数(令和6年度診療報酬)
主な内視鏡検査の診療報酬点数
令和6年度(2024年度)診療報酬改定に基づく点数です。
| 検査名 | 点数 | 患者負担(3割) |
|---|---|---|
| 上部消化管内視鏡検査(胃カメラ) | 1,140点 | 約3,420円 |
| 下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ) | 1,550点 | 約4,650円 |
| 内視鏡的大腸ポリープ切除術(2cm未満) | 5,200点 | 約15,600円 |
| 内視鏡的大腸ポリープ切除術(2cm以上) | 7,170点 | 約21,510円 |
| 内視鏡的止血術 | 4,760点 | 約14,280円 |
※1点=10円で計算
加算項目
以下の加算を算定することで、さらに収益を上げることができます。
- 粘膜点墨法加算:60点
- 狭帯域光強調加算:200点(NBI等の画像強調技術使用時)
- 内視鏡下生検法(1臓器につき):310点
- AI診断支援加算:60点(AI搭載内視鏡使用時)
外来診療の点数
| 項目 | 点数 |
|---|---|
| 初診料 | 291点 |
| 再診料 | 75点 |
| 腹部超音波検査 | 530点 |
| 便潜血検査(免疫法) | 37点 |
| ピロリ菌検査(尿素呼気試験) | 70点 |
収益シミュレーション
前提条件
- 診療日数:月22日
- 内視鏡検査:1日平均5件(上部3件、下部2件)
- 外来患者数:1日平均30人
月間売上シミュレーション
| 項目 | 計算式 | 月間売上 |
|---|---|---|
| 上部内視鏡 | 1,140点×3件×22日×10円 | 752,400円 |
| 下部内視鏡 | 1,550点×2件×22日×10円 | 682,000円 |
| ポリープ切除(月20件想定) | 5,200点×20件×10円 | 1,040,000円 |
| 生検(月30件想定) | 310点×30件×10円 | 93,000円 |
| 外来診療 | 平均500点×30人×22日×10円 | 3,300,000円 |
| 腹部エコー(月50件想定) | 530点×50件×10円 | 265,000円 |
| 月間売上合計 | 約613万円 |
年間収支シミュレーション
| 項目 | 年間金額 |
|---|---|
| 売上高 | 7,356万円 |
| 人件費(院長除く) | △1,800万円 |
| 医薬品・材料費 | △700万円 |
| 賃料 | △600万円 |
| リース料・減価償却費 | △500万円 |
| その他経費 | △800万円 |
| 営業利益(税引前) | 約2,956万円 |
※実際の収益は立地、競合状況、開業時期により大きく変動します。
医療機関専門の税理士にご相談ください
40年以上の実績。クリニック・医療法人の経営を税務・会計の両面からサポートします。
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開業スケジュールと届出
開業までのスケジュール(目安:12〜18ヶ月)
| 時期 | 実施内容 |
|---|---|
| 18ヶ月前 | 開業地選定、診療圏調査開始 |
| 15ヶ月前 | 物件決定、設計・施工業者選定 |
| 12ヶ月前 | 内装設計確定、医療機器選定開始 |
| 9ヶ月前 | 内装工事着工、スタッフ採用開始 |
| 6ヶ月前 | 医療機器発注、各種届出準備 |
| 3ヶ月前 | 内装工事完了、医療機器搬入・設置 |
| 2ヶ月前 | 保健所への開設届出、スタッフ研修 |
| 1ヶ月前 | 保険医療機関指定申請、内覧会 |
| 開業 | 診療開始 |
主な届出・申請
- 診療所開設届(保健所):開設後10日以内
- 保険医療機関指定申請(厚生局):開業の1〜2ヶ月前
- 麻薬施用者免許申請(都道府県):鎮静剤使用の場合
- 生活保護法指定医療機関申請(福祉事務所)
- 労災保険指定医療機関申請(労働局)
- 各種届出(消防署、税務署など)
税理士からの経営アドバイス
1. 資金調達は複数の選択肢を検討する
医療機関向けの融資は、日本政策金融公庫、民間金融機関、医師会提携ローンなど複数あります。金利や返済条件を比較し、最適な組み合わせを選びましょう。
ポイント
- 自己資金は総投資額の20〜30%を目安に
- 開業後6ヶ月分の運転資金は必ず確保
- 設備投資は「買取」「リース」「レンタル」を比較検討
2. 医療法人化のタイミングを見極める
開業当初は個人事業として始め、年間所得が1,500〜2,000万円を超えたら医療法人化を検討するのが一般的です。法人化により、以下のメリットがあります。
- 所得税・住民税の節税効果
- 退職金制度の活用
- 事業承継の円滑化
3. 内視鏡機器の更新計画を立てる
内視鏡機器は5〜7年で更新時期を迎えます。開業時から減価償却と同時に「設備更新積立」を行い、次回の設備投資に備えましょう。
4. 人件費管理を徹底する
消化器内科クリニックでは、内視鏡技師や看護師の確保が重要です。人件費は売上の25〜30%を目安とし、適正人員で効率的な運営を心がけてください。
5. 経営数値を毎月確認する
月次決算を行い、売上・患者数・検査件数などの推移を把握しましょう。異変があれば早期に対策を打つことで、安定経営につながります。
まとめ
消化器内科の開業は、内視鏡検査のニーズ増加を背景に、将来性のある選択肢です。一方で、高額な初期投資と専門人材の確保という課題もあります。
開業を成功させるポイントは以下の3つです。
- 綿密な診療圏調査:立地選定と競合分析を徹底する
- 適切な設備投資計画:患者数見込みに応じた機器選定
- 資金計画と経営管理:税理士・コンサルタントの活用
当事務所では、消化器内科をはじめとするクリニック開業を多数支援してきました。開業前の事業計画策定から、開業後の経営支援まで、トータルでサポートいたします。開業をお考えの先生は、ぜひお気軽にご相談ください。
参考情報
この記事は2026年2月時点の情報に基づいています。診療報酬や制度は改定される場合がありますので、最新情報は厚生労働省や関係機関のWebサイトをご確認ください。
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この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
ご注意事項
本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。
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