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中小企業向けコラム
作成日:2025.08.15
更新日:2026.01.02
辻 光明

執筆者:辻 光明

代表税理士

クレジットカード払いの仕訳方法|発生主義と現金主義

9分で読めます
クレジットカード払いの仕訳方法|発生主義と現金主義

クレジットカード払いの仕訳は、原則として「利用した時点で費用(または資産)を計上し、同時に未払金(カード未払金)を計上する」のが発生主義の基本です。引落日に未払金を消すことで、経費計上のタイミングと支払のタイミングを切り分けます。一方、一定要件を満たす青色申告者は「現金主義の特例」により、引落日ベースで計上する選択も可能です。個人事業主・小規模法人の経理担当者にとって、決算の正確性と作業効率の両面で重要な論点になります。

クレジットカード払いの仕訳がややこしい理由とは

クレジットカード払いが混乱しやすい最大の理由は、取引が「購入(役務提供)→カード会社立替→後日引落」という三段階になる点です。現場では、次のようなズレが発生します。

  • 利用日と引落日が月をまたぐ(決算日をまたぐ)
  • 分割・リボで引落が複数回に分かれる
  • ポイント充当・返金が混在し、明細と請求額が一致しない
  • 私用混在(個人カード・家族カード)の仕分けが甘くなる

発生主義で処理する場合は、「利用日に費用計上+未払金計上」を徹底すると、年またぎや分割の整理が一気に楽になります。

発生主義での基本仕訳(利用日と引落日)

利用日:費用(または資産)/未払金(カード未払金)

最も標準的な考え方は、利用日に次の仕訳を切る方法です。

  • 例:備品 55,000円をカード払い(事業用)

借方:消耗品費(または備品) 55,000
貸方:未払金(クレジットカード未払金) 55,000

ここでの要点は、「未払金=カード会社に対する債務」として管理することです。

なお、所得税の実務では、費用を必要経費に算入できるかは「債務が確定しているか」が重要論点になります(一般に、債務の成立・原因事実の発生・金額の合理的算定という要素で判断されます)。この整理に沿って、カード利用時点で債務が確定している取引は、利用日計上が整合的です。

ここがポイント
発生主義で迷ったら、「その年中に役務の提供を受け、金額が合理的に確定しているか(債務が確定しているか)」を起点に考えると判断がブレにくくなります。

引落日:未払金/普通預金(口座引落)

引落日には、未払金を消し込みます。

借方:未払金(クレジットカード未払金) 55,000
貸方:普通預金 55,000

この2段階処理にしておくと、決算日に未払金残高が「未引落のカード利用分」として残り、残高の意味が明確になります。決算日またぎの集計にも強い運用です。

現金主義での仕訳(特例の対象と届出)

現金主義は「特例」であり、届出が前提

「現金主義(お金が動いた日に計上)」は、誰でも自由に選べるわけではありません。一定要件を満たす青色申告者(小規模事業者等)に限り、届出により現金主義で所得計算できる特例があります。届出と期限があるため、運用開始の前に確認が必要です。

ここがポイント
現金主義の特例は、青色申告の承認と合わせて所定の届出書を提出する形で手続します。要件・提出期限が定められています。

現金主義での基本(カードは「引落日」に費用計上)

現金主義で処理する場合、カード利用時点では原則として費用計上せず、引落日に次のように計上します。

  • 例:備品 55,000円(引落時)

借方:消耗品費(または備品) 55,000
貸方:普通預金 55,000

この場合、未払金を使わないため仕訳はシンプルになりますが、年またぎのときに「実態(利用日)」と「計上(引落日)」がズレる点に留意が必要です。収入の計上時期は原則として「権利が確定した時点」で判断され、一定要件で現金主義を選択できる旨も示されています。売上と経費のタイミングが混在すると、月次比較が難しくなることがあります。

ケース別の仕訳パターン(実務で詰まる論点)

1) 分割・リボ払い:原則は「利用日で総額」、利息等は別管理

発生主義では、利用日で購入対価(本体)を計上し、未払金に計上します。その後、引落のうち利息・手数料相当が明細にある場合は、支払利息等として別途処理し、元本部分と切り分けます(会計ソフトの明細分割が有効です)。

  • 利用日(本体):費用(資産)/未払金(総額)
  • 引落日:未払金/普通預金(元本部分)、支払利息/普通預金(利息部分)など

2) 年またぎ(12月利用・翌年1月引落):決算は未払金残が正解になりやすい

発生主義なら、12月の利用分は12月費用、未払金が残ります。翌年に引落で消し込みます。
現金主義なら、翌年1月に費用計上となるため、年内の損益が大きく変わる可能性があります。

3) ポイント充当:値引きか雑収入かを「実態」で統一

ポイントの扱いは実務上の統一が重要です。購入時にポイント充当で支払額が減っているなら「値引き(取得価額の減額)」として処理する設計が分かりやすいケースが多い一方、後日ポイント付与・利用が別取引として見える場合は、雑収入や経費の減額として扱う運用もあります。消費税を含む整合性(請求書・明細の保存を含む)も踏まえ、事務所内でルールを固定してください。

4) 返金(返品・取消):原則は元取引の逆仕訳

返金がカード明細にマイナスで載る場合は、元の費用(または資産)を取り消すのが基本です。未払金計上済みなら未払金の減額、引落後なら普通預金相当の戻り(実際は相殺)を反映します。

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Step 1: 利用明細を月次で確定(締日ベース)
カード会社の明細(締日〜締日)をエクスポートし、事業取引と私用を一次仕分けします。

Step 2: 利用日基準で仕訳(発生主義の場合)
明細を利用日で起票し、貸方は未払金(カード未払金)に統一します。勘定科目を分散させないのがコツです。

Step 3: 請求確定額と未払金残高を照合
締日時点の「未払金残高」が、カード会社の請求額(または未引落分)と一致するかチェックします。差異は、返金・ポイント・二重計上が原因になりがちです。

Step 4: 引落日に消し込み、残高をゼロ(または未引落分)に整える
引落仕訳で未払金を落とし、翌月に残高を持ち越すのは「未引落がある場合のみ」にします。

発生主義と現金主義の違い(比較表)

←横にスクロールできます→
項目発生主義(未払金処理)現金主義(特例)
計上タイミング利用日(役務提供・購入時)引落日(現金の出入り)
仕訳の形2段階(利用日+引落日)1段階(引落日)
年またぎの強さ強い(未払金で整理)弱い(損益がズレやすい)
月次管理実態に近い損益になりやすい資金繰りに近い損益になりやすい
注意点未払金残高の突合が必須特例の要件・届出・期限が必須

よくある質問

Q: 会計ソフトの自動連携を使えば、未払金の処理は不要ですか? ▼

A:

自動連携でも、設計次第では未払金処理が残ります。利用明細を「利用日で起票し、貸方を未払金に統一→引落で消し込み」に設定できると、決算の正確性が上がります。自動連携は入力を省力化しますが、残高突合の工程は省略しないのが安全です。
Q: 個人カードで事業経費を払っています。仕訳はどうなりますか? ▼

A:

発生主義なら、利用日は費用/未払金(または事業主借)で処理し、引落時は未払金/事業主貸(または普通預金)など、実際の資金の出どころに合わせます。私用混在が多い場合は、カード自体を分けるのが最も確実です。
Q: 12月にカード利用、1月引落の場合、どちらの年の経費ですか? ▼

A:

原則(発生主義)では利用年に計上し、未払金を残す整理が一般的です。現金主義の特例を適用している場合は引落年に計上となります。採用している計算方法(特例の有無)で結論が変わります。
Q: 分割払いの手数料(利息)はどの科目ですか? ▼

A:

一般に支払利息や支払手数料等として、元本(購入対価)と分けて処理します。カード明細で元本相当と手数料相当を区分できるかが実務上のポイントです。

まとめ

  • 発生主義の基本は「利用日:費用(資産)/未払金」「引落日:未払金/普通預金」の2段階
  • 現金主義は特例であり、要件と届出が前提。カードは引落日計上になる
  • 年またぎ・分割・ポイント・返金が差異の主要因。月次で明細と残高を突合する
  • 未払金(カード未払金)の科目を統一し、残高の意味を明確にするとミスが減る
  • 個別事情で最適解は変わるため、決算・申告前に運用ルールを固定する

参照ソース

  • 国税庁「No.2200 収入金額とその計算」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2200.htm
  • 国税庁「A1-13 現金主義による所得計算の特例を受けるための手続」: https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/23200010.htm
  • 国税庁「所得税基本通達 法第37条《必要経費》関係 37-2〔債務が確定している費用〕」: https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/05/05.htm

この記事を書いた人

辻 光明

辻 光明

代表税理士

税理士 / 認定経営革新等支援機関

税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。

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