
執筆者:辻 光明
代表税理士
法定調書の種類と提出期限|支払調書・源泉徴収票を税理士が解説

法定調書とは?支払先・従業員が増えるほど重要になる書類
法定調書とは、会社や個人事業主が「給与」「報酬」「家賃」などを支払った事実を、税務署(および一部は市区町村)へ報告するための書類です。結論として、法定調書は原則「翌年1月末」に集中し、年末調整・支払集計・マイナンバー管理が絡むため、実務負荷が高くなりがちです。
特に、外注先(士業・講師・デザイナー等)への支払や、従業員の入退社が多い事業者では、「作成はしたが提出漏れ」「交付はしたが税務署提出が不足」など、運用ミスが起こりやすい領域です。
税理士法人 辻総合会計では、30年以上にわたり中小企業・クリニック等の年末調整と法定調書対応を支援してきましたが、トラブルの多くは「種類の取り違え」と「期限の思い込み」に集約されます。まずは全体像から整理しましょう。
法定調書の主な種類|源泉徴収票と支払調書を中心に整理
法定調書は多数ありますが、実務で頻出なのは次の系統です。
- 給与系:給与所得の源泉徴収票、退職所得の源泉徴収票 など
- 報酬系:報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書(いわゆる「報酬の支払調書」)
- 不動産系:不動産の使用料等の支払調書(不動産業者等で頻出)
- 合計表:給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(提出時に添付する「束ね表」)
このうち、読者の方が特に混乱しやすいのが「源泉徴収票(従業員へ交付するイメージ)」と「支払調書(外注先へ交付すると思い込みがち)」です。まずは違いを比較します。
| 書類 | 主な対象 | 交付先 | 提出先 | 期限の考え方(代表例) |
|---|---|---|---|---|
| 給与所得の源泉徴収票 | 従業員等への給与 | 従業員へ交付(全員) | 税務署へ提出(提出範囲あり) | 原則翌年1月末。退職者は退職後1か月以内の交付が原則 |
| 報酬等の支払調書 | 外注先等への報酬・料金等 | 交付義務はケースにより扱いが分かれる | 税務署へ提出(提出範囲あり) | 支払が確定した年の翌年1月末に提出が原則 |
| 法定調書合計表 | 上記を束ねる集計表 | 交付しない | 税務署へ提出(法定調書と一緒) | 法定調書と同じ期限で提出 |
提出期限はいつ?提出先はどこ?|「1月末」に集中する理由
税務署へ提出する法定調書の期限
法定調書(源泉徴収票・支払調書等)と合計表は、所轄税務署へ期限までに提出します。実務上は「年末調整→給与集計→外注・家賃集計→合計表作成→提出」という流れが1月に集中します。
また、期限日が土日等に当たる年は、手引で示される提出期限が翌開庁日にずれ込むことがあります。例えば令和7年分の手引では、税務署への提出期限が「令和8年2月2日(月)」とされています(1月末が週末に当たるため)。このように「毎年必ず1/31」と決め打ちせず、年分ごとの期限表示を確認する運用が安全です。
市区町村へ提出する書類が混ざる点に注意
給与支払報告書・特別徴収票は提出先が税務署ではなく市区町村です。期限も近接しているため、年末調整周りの担当者が「全部税務署に出す」と誤解しがちです。提出先が異なる書類は、社内で提出ルートを分けて管理してください。
支払調書の提出範囲|「誰に・いくら」まで出すのか(報酬系の実務)
支払調書は「外注費を払ったら全部出す」と誤解されがちですが、提出範囲(対象者・金額基準)が定められています。代表的な「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」では、弁護士・税理士等への報酬、原稿料、講演料などが典型で、同一人への年額5万円超などの基準が出てきます(区分により基準は異なります)。
実務で頻出の判断ポイントは次のとおりです。
- 対象者:個人だけでなく、法人への支払でも提出範囲に該当する場合がある
- 金額基準:区分ごとに「5万円超」「50万円超」などが混在するため、区分の確定が先
- 消費税:税込・税抜の判定は、請求書で消費税が明確に区分されているかで扱いが分かれる場合がある
- 非居住者:国内源泉・租税条約等の論点が混ざるため、別調書となることがある
源泉徴収票の交付・提出の要点|提出範囲と交付義務を分けて理解する
給与所得の源泉徴収票は、税務署への提出範囲とは別に、受給者(従業員等)への交付義務があります。国税庁の整理では、源泉徴収票は提出範囲にかかわらず、受給者へ翌年1月31日までに交付する必要があり、年の中途退職者は退職後1か月以内が原則です。
実務での要点は次の2つです。
- 交付:在籍者は翌年1月末、退職者は退職後1か月以内(原則)
- 提出:税務署への提出は「提出範囲」に基づき、合計表と一緒に提出
この2系統をチェックリストで分けるだけで、ミスは大幅に減ります。
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作成・提出の流れ|1月に慌てないための標準手順(Step形式)
Step 1: 対象取引の棚卸(12月中旬〜末)
- 給与台帳・賞与・退職金の確定
- 外注費(報酬・講演・士業・原稿料等)の集計
- 家賃・地代など不動産関連の集計(該当事業者)
- 取引先の氏名・住所・マイナンバー/法人番号の整備
Step 2: 区分判定と提出範囲の判定(年末〜1月上旬)
- 支払内容を「報酬」「家賃」「あっせん手数料」等に区分
- 区分ごとの金額基準で提出対象を抽出
- 非居住者・国外送金等の特殊ケースを切り分け
Step 3: 調書作成と合計表作成(1月上旬〜中旬)
- 源泉徴収票(交付用・提出用)を作成
- 支払調書を作成
- 法定調書合計表で束ねる(提出媒体・本店一括等の欄も確認)
Step 4: 提出・交付・控え保存(1月中旬〜期限まで)
- 税務署へ提出(e-Tax、認定クラウド、光ディスク、書面など)
- 従業員へ源泉徴収票を交付(退職者対応も忘れず)
- データと控えを保存(後日の訂正・追加提出に備える)
よくあるミスとリスク|「罰則」より前に困るのは後工程
法定調書の遅れや誤りは、直ちに罰則というより、次の実務問題を引き起こします。
- 従業員の確定申告・住宅ローン控除等で源泉徴収票の再発行が頻発
- 外注先の税務処理(申告)と整合せず、問い合わせが増える
- 税務署からの照会で、訂正・追加提出が発生し工数が膨らむ
対策として有効なのは「名寄せ(同一人判定)」「締めの前倒し」「提出媒体の統一」です。
e-Tax等による提出義務化の目線(2026年以降の準備)
提出枚数が一定以上の事業者は、e-Tax等(e-Tax、認定クラウド、光ディスク等)での提出が必要になる場合があります。さらに、将来的には基準が引き下げられる予定で、手引では「令和9年1月以降に提出する法定調書」について、前々年の提出枚数が30枚以上となった場合にe-Tax等での提出が必要となる旨が示されています。紙提出を前提にしている事業者は、早めに電子提出へ寄せておくと安全です。
よくある質問
Q: 支払調書は外注先へ必ず交付しなければいけませんか?
A:
税務署への「提出義務」と、支払先への「交付義務」は分けて考える必要があります。交付の要否は支払内容や運用により扱いが分かれるため、まずは提出範囲(税務署提出)を確実に押さえ、交付は契約・取引慣行・個別事情を踏まえて設計するのが実務的です。Q: 源泉徴収票は税務署に提出しない従業員分も、本人へ交付が必要ですか?
A:
必要です。源泉徴収票は、提出範囲にかかわらず、受給者へ翌年1月末までに交付する整理となっています(退職者は退職後1か月以内が原則です)。Q: 1月末が土日だった年は、提出期限はどうなりますか?
A:
年分ごとの手引で示される期限を確認してください。例えば令和7年分では、税務署への提出期限が令和8年2月2日(月)と示されています。毎年固定日と決め打ちせず、手引の期限表示で運用するのが安全です。Q: 提出後に誤りや提出漏れに気づいた場合はどうすればよいですか?
A:
訂正・追加提出が必要になります。誤りの内容(氏名・金額・マイナンバー等)により手続が異なるため、提出媒体(e-Tax/書面等)と誤りの範囲を整理したうえで、速やかに対応してください。まとめ
- 法定調書は給与・報酬・不動産等の支払を税務署等へ報告する書類で、期限が1月末に集中する
- 源泉徴収票は「税務署提出」と別に「受給者への交付義務」があり、退職者は退職後1か月以内が原則
- 支払調書は区分ごとに提出範囲(金額基準等)が異なるため、区分確定と名寄せが実務の核心
- 提出は法定調書と合計表をセットで行い、電子提出義務化の基準にも注意する
- 年末から棚卸・締めを前倒しし、1月の作業を「判定→作成→提出」に分解するとミスが減る
参照ソース
- 国税庁「法定調書の提出期限等について(令和7年分 手引・第1)」: https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hotei/tebiki2025/PDF/01.pdf
- 国税庁 No.7431「『報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書』の提出範囲と提出枚数等」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hotei/7431.htm
- 国税庁 No.7411「『給与所得の源泉徴収票』の提出範囲と提出枚数等」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hotei/7411.htm
この記事を書いた人

辻 光明
代表税理士
税理士 / 認定経営革新等支援機関
税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。
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