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中小企業向けコラム
作成日:2025.05.29
更新日:2026.01.02
辻 光明

執筆者:辻 光明

代表税理士

有給休暇の付与日数と取得義務|年5日ルールを専門家解説

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有給休暇の付与日数と取得義務|年5日ルールを専門家解説

年5日ルールとは|結論:年10日以上の人に「5日確保」が企業義務

有給休暇(年次有給休暇)は、要件を満たすと法律上当然に発生する休暇で、会社が「うちには有休がない」と言ってもなくなりません。加えて2019年4月からは、年10日以上付与される労働者について、会社が基準日から1年以内に「年5日」を確実に取得させる仕組み(いわゆる年5日ルール/時季指定義務)が導入されています。

問題になりやすいのは、総務・院内事務など少人数で回している事業場です。付与日数の計算や対象者の抽出を誤ると、気づかないうちに「未取得」が発生します。特に医療・サービス業では繁閑差が大きく、計画的な設計がないと取得が後ろ倒しになりがちです。

税理士法人 辻総合会計では、クリニック・中小企業のバックオフィス整備の一環として、勤怠・給与と整合する有休管理(管理簿・規程・運用)について、社労士等の専門家とも連携しながら実務設計の相談を受けるケースが増えています。

有給休暇の付与日数とは|労基法39条の基本と一覧

付与の要件(まずここを押さえる)

年次有給休暇は、原則として「雇入れの日から6か月継続勤務」し、「全労働日の8割以上出勤」した場合に付与されます。ここでいう出勤率は、育児・介護休業など「出勤したものとみなす」期間の扱いもあり、社内の勤怠ルールとセットで確認が必要です。

通常の労働者(フルタイム)の付与日数

通常の労働者(一般的な正社員等)の付与日数は次のとおりです。

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継続勤務年数0.5年1.5年2.5年3.5年4.5年5.5年6.5年以上
付与日数10日11日12日14日16日18日20日

ポイントは「最初の付与(入社6か月)で10日」になることです。この時点で、年5日ルールの対象になり得ます。

パート・アルバイトの比例付与(週4日以下等)

所定労働日数が少ない場合は比例付与になります。代表例として、週所定労働日数が4日以下かつ週所定労働時間が30時間未満の付与日数(抜粋)は次のとおりです。

←横にスクロールできます→
週所定労働日数0.5年1.5年2.5年3.5年4.5年5.5年6.5年以上
4日7日8日9日10日12日13日15日
3日5日6日6日8日9日10日11日
2日3日4日4日5日6日6日7日
1日1日2日2日2日3日3日3日

ここで重要なのは、「パートだから対象外」ではなく、付与日数が10日以上になるかで判断する点です(例えば週4日で勤続3.5年なら10日となり対象)。

ここがポイント
「年5日ルール=全員が年5日取らないといけない」ではありません。あくまで、**その人に付与される年休日数が10日以上**の場合に、会社側が年5日を確保する義務が生じます(既に本人が5日以上取っていれば会社の指定は不要)。

年5日ルールの対象者とカウント方法|3つの取得ルートを理解する

対象者:年10日以上付与される労働者(管理監督者も含む)

年5日ルールの対象は、年次有給休暇が10日以上付与される労働者です。管理監督者を含む点も実務上の見落としポイントです。

5日の数え方:取得ルートは3つ(合算でOK)

年5日を「どう取らせるか」は、次の3ルートの合算でカウントできます。

←横にスクロールできます→
取得の方法実務のイメージメリット注意点
労働者の請求(本人申請)本人が希望日を申請して取得最も自然でトラブルが少ない繁忙で申請が出ないと未取得が残る
計画年休(労使協定)会社カレンダーで計画的に割当取得の底上げがしやすい5日を超える部分に充てるのが原則、運用設計が必要
会社の時季指定(意見聴取の上)本人の希望を聴いて会社が指定未取得の「最後の安全装置」労働者の意見聴取と尊重努力が必要

「本人申請で3日+計画年休で2日」なら、それで年5日を満たし、追加の時季指定は不要です。

半日・時間単位年休の扱い(制度の整合に注意)

会社によっては半日単位や時間単位での取得制度があります。時間単位年休は労使協定が必要で、上限(年5日分)もあるため、年5日ルールのカウントに入れる場合は「何時間=1日」の換算と管理簿の記録方法を統一してください。

企業が取るべき実務対応|就業規則・管理簿・運用の手順

年5日ルールは「制度を知っている」だけでは足りず、運用で取りこぼしが起きます。実務は次の順で整えると、最短で安定します。

Step 1: 対象者と基準日(付与日)を確定する

  • 「いつ付与したか(基準日)」が起点です。入社日基準でバラバラなら、管理が破綻しやすくなります。
  • 一斉付与(例:毎年4/1付与)に寄せる場合は、重複期間の扱いも含め設計します。

Step 2: 年間の取得計画を作る(本人申請+計画年休の組合せ)

  • 基準日時点で、各人の「今年、あと何日取れば5日に届くか」を見える化します。
  • 取得しやすい時期(閑散期・連休の谷間など)を織り込んだ計画が有効です。

Step 3: 未達リスクがある人は、意見聴取→時季指定で穴埋めする

  • 本人の希望を聴取し、可能な限り希望に沿って指定します。
  • 直前になってからの指定は反発が出やすいので、四半期ごとに棚卸しする運用が現実的です。

Step 4: 年次有給休暇管理簿を整備し、3年間保存する

  • 年次有給休暇管理簿を3年間保存することが求められます。
  • 管理簿には、時季(取得日)、日数、基準日などを労働者ごとに記録します。勤怠システムで出力できるなら、それでも構いません。
ここがポイント
罰則は「未取得の労働者が何人いるか」でカウントされ得ます。未取得者が複数いると、影響も大きくなります。運用上は、労基署の是正指導で改善を求められるケースが多い一方、放置は避けるべきです。

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違反リスクとよくあるトラブル|罰則・是正・退職時の論点

罰則:年5日未取得は30万円以下の罰金の対象

年5日ルール(年5日取得させる義務)に違反した場合、労働基準法120条の罰則(30万円以下の罰金)が整理されています。加えて、就業規則に必要な規定がない場合なども罰則の射程に入るため、「制度は運用しているつもりだが規程が追いついていない」状態は危険です。

「忙しいから取れない」を放置しない

よくある実態は、繁忙期に取得が止まり、期末に慌てて5日を消化しようとして現場が混乱するパターンです。計画年休や分散取得の設計がないと、結果として生産性も落ちます。

退職・休職が絡むと、未消化が表面化しやすい

退職時に未消化の年休が残ると、引継ぎ・シフト・有休消化の調整でトラブル化しやすくなります。年5日ルールの観点でも、期中の棚卸し(取得状況の定期確認)を運用に組み込むことが重要です。

よくある質問

Q: 入社時に前倒しで有休を10日付与した場合、年5日ルールの起算はいつですか? ▼

A:

法定の基準日(入社6か月)より前倒しで10日以上付与した場合でも、付与日数の合計が10日に達した時点から年5日ルールの管理が始まります。実務では「前倒し付与した日から1年以内に5日取得」が必要になるため、起算日の設定を誤らないことが重要です。
Q: パートでも年5日ルールの対象になりますか? ▼

A:

なります。判断基準は雇用形態ではなく「その人に付与される年休日数が10日以上か」です。例えば週4日勤務で勤続3.5年以上など、比例付与で10日に到達すると対象になります。
Q: 計画年休だけで年5日を満たしてもよいですか? ▼

A:

可能です。本人申請、計画年休、会社の時季指定のいずれで取得しても合算で年5日になれば足ります。ただし、計画年休は労使協定が必要で、制度設計(対象範囲・割当方法)を就業規則等と整合させる必要があります。

まとめ

  • 有給休暇は要件を満たすと法律上当然に発生し、付与日数は勤続年数・所定労働日数で決まる
  • 年5日ルールは、年次有給休暇が10日以上付与される労働者について、基準日から1年以内に5日取得させる会社の義務
  • 取得ルートは「本人申請」「計画年休」「会社の時季指定」の合算でカウントできる
  • 運用の要は、基準日の統一・取得計画・意見聴取・管理簿(3年保存)のセット設計
  • 違反は30万円以下の罰金の整理があり、未取得の放置は避けるべき

参照ソース

  • 厚生労働省「年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています(労基法39条リーフレット)」: https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/dl/140811-3.pdf
  • 厚生労働省「年次有給休暇の時季指定(働き方改革特設サイト)」: https://hatarakikatakaikaku.mhlw.go.jp/salaried.html
  • 厚生労働省「年5日の年次有給休暇(実務対応・罰則整理)」: https://www.mhlw.go.jp/content/000463186.pdf

この記事を書いた人

辻 光明

辻 光明

代表税理士

税理士 / 認定経営革新等支援機関

税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。

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