
執筆者:辻 勝
会長税理士
泌尿器科開業ガイド2026|開業費用・収益モデル・集患戦略を税理士が解説

泌尿器科開業ガイド2026|開業費用・収益モデル・集患戦略を税理士が解説
泌尿器科の開業をお考えの先生方へ。超高齢社会の進展により、前立腺疾患や排尿障害、尿路結石といった泌尿器科領域の患者数は増加の一途をたどっています。本記事では、医療専門の税理士として多くのクリニック開業をサポートしてきた実績をもとに、泌尿器科開業に必要な設備投資、資金計画、収益シミュレーション、そして集患戦略まで、経営視点で詳しく解説します。
2026年は団塊の世代が後期高齢者に突入する時期であり、泌尿器科クリニックの需要はさらに高まっています。この記事で開業成功のための具体的な数字と戦略を押さえましょう。
泌尿器科クリニックの市場環境
高齢化が追い風となる泌尿器科領域
泌尿器科は、超高齢社会において最も需要拡大が期待される診療科の一つです。厚生労働省の「医療施設調査」によると、泌尿器科を主たる診療科とする診療所は全国で約2,500施設にとどまっており、内科や整形外科と比較すると競合が少ない状況です。
市場拡大の要因
- 前立腺疾患の増加:50歳以上の男性の約30%が前立腺肥大症を抱えており、加齢に伴い有病率は上昇します。80歳以上では約80%に達するとされ、今後も患者数の増加が見込まれます
- 排尿障害(過活動膀胱)の増加:過活動膀胱の推定患者数は国内で約1,000万人以上とされ、男女問わず高齢者に多い疾患です
- 尿路結石の増加:食生活の欧米化や生活習慣病の増加に伴い、尿路結石の罹患率は過去40年間で約3倍に増加しています
- 女性泌尿器科の需要拡大:尿失禁や骨盤臓器脱など、女性特有の泌尿器疾患への関心が高まっており、新たな患者層として注目されています
泌尿器科の競合状況
泌尿器科は他の診療科と比べて開業医が少なく、1施設あたりの対象患者数が多いという特徴があります。特に地方都市や郊外エリアでは泌尿器科が不足しており、開業の好機が存在します。
一方で、泌尿器科開業にはいくつかの課題もあります。
- 患者の受診ハードルが高い:泌尿器科特有の恥ずかしさから受診をためらう患者が多い
- 初診までの時間がかかる:症状が進行してから来院するケースが多く、潜在患者の掘り起こしが重要
- 設備投資が比較的大きい:膀胱鏡や超音波装置など、専門的な医療機器が必要
必要な設備と初期投資
泌尿器科に必須の医療機器
泌尿器科クリニックでは、正確な診断と適切な治療のために専門的な医療機器が欠かせません。以下に主要な機器と概算費用を示します。
| 医療機器 | 費用目安 | 用途 |
|---|---|---|
| 超音波診断装置 | 500万〜1,200万円 | 腎臓・膀胱・前立腺の画像診断 |
| 軟性膀胱鏡 | 400万〜800万円 | 膀胱内の観察、生検 |
| 尿流量測定装置(ウロフロメトリー) | 100万〜300万円 | 排尿障害の客観的評価 |
| 残尿測定装置 | 50万〜150万円 | 膀胱内残尿量の測定 |
| 尿検査装置(自動分析) | 100万〜250万円 | 尿沈渣、尿定性の自動解析 |
| PSA迅速検査キット | 30万〜80万円 | 前立腺がんスクリーニング |
| X線撮影装置 | 800万〜1,500万円 | 尿路結石の画像診断 |
| 内視鏡洗浄装置 | 150万〜300万円 | 膀胱鏡の滅菌処理 |
医療機器の選定ポイント
超音波診断装置は泌尿器科の日常診療において最も使用頻度が高い機器です。経腹超音波と経直腸超音波(TRUS)の両方に対応できる機種を選ぶことが重要です。前立腺生検を院内で実施する場合は、生検用プローブ付きの上位機種(1,000万円前後)が必要になります。
軟性膀胱鏡は、従来の硬性鏡と比べて患者の苦痛が大幅に軽減されるため、外来での使用に適しています。近年はビデオスコープタイプが主流で、高精細な画像が得られる反面、導入コストはやや高めです。
尿流量測定装置は比較的安価ですが、排尿障害の診療には欠かせない機器です。残尿測定装置と組み合わせることで、下部尿路機能の総合的な評価が可能になります。
開業費用と資金計画
開業費用の全体像
泌尿器科クリニックの開業費用は、テナント開業の場合で6,000万円〜1億円が目安です。戸建て開業や手術対応型の場合は、さらに高額になることがあります。
| 項目 | 費用目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 内装工事費 | 1,500万〜3,000万円 | 処置室・検査室の特殊仕様含む |
| 医療機器 | 2,500万〜5,000万円 | 上記機器一式 |
| 什器備品 | 200万〜400万円 | 診察台、待合椅子、事務機器等 |
| 電子カルテ・レセコン | 200万〜400万円 | 泌尿器科対応テンプレート付推奨 |
| 保証金・敷金 | 200万〜500万円 | テナント物件の場合 |
| 運転資金 | 1,500万〜3,000万円 | 6〜12ヶ月分を確保 |
| 広告・宣伝費 | 200万〜500万円 | HP制作、リスティング広告等 |
| 開業諸経費 | 200万〜400万円 | 各種届出、コンサル費用等 |
内装工事のポイント
泌尿器科クリニックの内装では、以下の点に特に注意が必要です。
- プライバシーへの配慮:待合室の男女分離、個室型の問診スペース設置
- 検査室の防音・遮蔽:超音波検査室や膀胱鏡検査室は十分な遮蔽が必要
- バリアフリー対応:高齢患者が多いため、段差解消やトイレの手すり設置は必須
- 尿検査用トイレ:採尿しやすい構造とし、検査室への受渡し窓口を設ける
- 水回りの充実:内視鏡洗浄室、スタッフ用手洗い場の確保
資金調達の方法
泌尿器科の開業資金は、以下の組み合わせで調達するケースが一般的です。
- 自己資金:総額の20〜30%(1,200万〜3,000万円)
- 銀行融資:日本政策金融公庫、民間銀行の医療ローン
- リース活用:高額医療機器はリース契約で初期負担を軽減
特に泌尿器科は医療機器の占める割合が大きいため、リースの活用が効果的です。超音波装置や膀胱鏡をリースにすると、月額15万〜30万円程度で導入でき、初期費用を大幅に圧縮できます。
収益シミュレーション
外来型クリニック(手術なし)
泌尿器科の外来診療を中心としたモデルの収益シミュレーションです。
前提条件
- 1日外来患者数:40名
- 診療日数:月22日
- 平均外来単価:約6,000円(3割負担で患者負担約1,800円)
- スタッフ:看護師2名、事務スタッフ2名
月間収益試算
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 外来収入(初診・再診) | 250万円 |
| 検査収入(超音波・尿流量・PSA等) | 200万円 |
| 処置収入(膀胱鏡・カテーテル等) | 100万円 |
| 投薬・処方箋料 | 80万円 |
| 月間売上合計 | 約630万円 |
月間経費試算
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 人件費(スタッフ4名) | 160万円 |
| 家賃 | 60万〜100万円 |
| リース料 | 30万円 |
| 医薬品・材料費 | 50万円 |
| その他経費 | 40万円 |
| 月間経費合計 | 約340万〜380万円 |
院長手取り(税引前):約250万〜290万円/月 → 年間約3,000万〜3,500万円
手術対応型クリニック
日帰り手術にも対応するクリニックでは、さらに高い収益が期待できます。
追加収入源
- 包茎手術(自費):1件10万〜30万円
- 精管結紮術(パイプカット・自費):1件15万〜25万円
- 尿路結石の体外衝撃波砕石術(ESWL)※:1件あたり保険点数19,300点
※ESWLは装置導入に2,000万〜4,000万円の追加投資が必要ですが、月10件以上の実施で採算が取れるケースが多いです。
手術対応型の場合、年間売上1億〜1.5億円、院長手取り4,000万〜5,000万円も十分に実現可能な水準です。
泌尿器科の主要な診療報酬点数
泌尿器科クリニックの収益を支える主要な診療報酬点数(2024年改定後)は以下の通りです。
| 検査・処置 | 点数 | 金額換算 |
|---|---|---|
| 膀胱鏡検査 | 890点 | 8,900円 |
| 前立腺針生検法 | 1,540点 | 15,400円 |
| 尿流量測定(ウロフロメトリー) | 205点 | 2,050円 |
| 超音波検査(断層撮影法・胸腹部) | 530点 | 5,300円 |
| 残尿測定検査 | 55点 | 550円 |
| PSA検査(前立腺特異抗原) | 130点 | 1,300円 |
| 膀胱洗浄 | 60点 | 600円 |
| 尿道拡張法 | 580点 | 5,800円 |
| 体外衝撃波腎・尿管結石破砕術(ESWL) | 19,300点 | 193,000円 |
これらの検査・処置を効率的に組み合わせることで、外来単価の向上を図ることができます。特に**膀胱鏡検査(890点)と超音波検査(530点)**は日常的に実施できるため、安定した収益源になります。
開業立地と集患戦略
立地選定の3つのポイント
① 高齢者人口が多いエリア
泌尿器科の主要患者層は60歳以上の高齢者です。開業地選定では、以下のデータを確認しましょう。
- 診療圏内(半径2〜3km)の65歳以上人口
- 今後10年間の高齢者人口推計
- 高齢者施設(特養、有料老人ホーム)の分布
② 競合泌尿器科クリニックが少ないエリア
泌尿器科は他科と比べて診療所数が少ないため、半径3km以内に競合が1〜2施設以下であれば十分な患者数を確保できる可能性があります。特に住宅地やベッドタウンで泌尿器科の空白地帯は狙い目です。
③ アクセスの良さ
高齢の患者さんが多いため、以下の条件を満たす物件が理想的です。
- 駅から徒歩5分以内、またはバス停近く
- 駐車場(10台以上)を確保できる
- 1階テナントまたはエレベーター付きビル
- 薬局が近接している
集患戦略
泌尿器科は「恥ずかしさ」が受診の障壁となるため、以下の工夫が有効です。
Webマーケティング
- SEO対策:「地域名+泌尿器科」「前立腺肥大 症状」「血尿 原因」等のキーワードで上位表示を狙う
- Googleマイビジネス:口コミ管理と写真掲載で安心感を訴求
- ブログ・コラム:泌尿器科の症状や検査内容をわかりやすく解説し、受診ハードルを下げる
院内施策
- 女性患者への対応:女性専用の待合スペースや女性向け診療時間の設定
- プライバシー重視の院内設計:個室型診察室、仕切りのある待合室
- かかりつけ医からの紹介:近隣の内科・婦人科との連携体制を構築
地域連携
- 介護施設との連携:バルーンカテーテル管理や排尿ケアの定期往診
- 健診機関との連携:PSA検査で異常値が出た患者の紹介ルート確保
- 病診連携:手術が必要なケースの紹介先病院との関係構築
医療機関専門の税理士にご相談ください
40年以上の実績。クリニック・医療法人の経営を税務・会計の両面からサポートします。
平日 9:15〜18:15(土日祝休業)
開業時の注意点
診療報酬改定への対応
2024年度の診療報酬改定では、生活習慣病管理の見直しや医療DXの推進が柱となりました。泌尿器科に関連する主なポイントは以下の通りです。
- 生活習慣病管理料の見直し:前立腺肥大症や過活動膀胱など、慢性疾患の管理体制が重視される方向
- オンライン診療の拡大:泌尿器科は再診の割合が高いため、オンライン再診の活用で患者利便性と効率性の向上が可能
- 医療DX推進体制整備加算:マイナ保険証対応やオンライン資格確認の整備が加算要件に
2026年は次期改定(2026年度改定)に向けた議論が進む時期です。かかりつけ医機能の強化や慢性疾患の外来管理の効率化が引き続きテーマとなる見込みであり、泌尿器科にとっては安定的な外来管理が評価される方向と予想されます。
人材確保のポイント
泌尿器科クリニックの運営には、以下のスタッフが必要です。
| 職種 | 必要人数 | 役割 |
|---|---|---|
| 看護師 | 2〜3名 | 診療補助、膀胱鏡介助、患者ケア |
| 臨床検査技師 | 0〜1名 | 超音波検査、尿検査 |
| 医療事務 | 2〜3名 | 受付、レセプト、会計 |
| 放射線技師 | 0〜1名 | X線撮影(医師が行う場合は不要) |
泌尿器科の看護師には、膀胱鏡検査の介助やカテーテル管理の知識が求められます。泌尿器科病棟の経験がある看護師を採用できると即戦力になります。
開業形態の選択
泌尿器科の開業形態には、大きく3つの選択肢があります。
- テナント開業:初期費用を抑えたい場合に最適。6,000万〜8,000万円で開業可能
- 戸建て開業:十分な駐車場と広い診療スペースを確保できる。1億〜1.5億円が目安
- 医療モール開業:他科との連携がしやすく、集患面でメリットがある
どの形態を選ぶかは、自己資金の状況、診療コンセプト、立地条件によって異なります。税理士や開業コンサルタントと十分に相談した上で決定することをお勧めします。
節税対策と法人化のタイミング
泌尿器科クリニックが軌道に乗り、年間売上が5,000万円を超えた段階で医療法人化を検討するのが一般的です。法人化のメリットには以下があります。
- 所得分散による節税効果
- 社会保険料の最適化
- 退職金制度の活用
- 事業承継のしやすさ
法人化のタイミングや手続きについては、医療に精通した税理士に相談されることを強くお勧めします。
まとめ
泌尿器科は、超高齢社会の進展を背景に今後も安定した需要が見込まれる診療科です。開業にあたっては、以下のポイントを押さえておきましょう。
- 市場環境:前立腺疾患・排尿障害の患者増、競合少なく開業チャンスあり
- 初期投資:テナント開業で6,000万〜1億円、医療機器費の比重が大きい
- 収益見込み:外来型で年間3,000万〜3,500万円、手術対応型で4,000万〜5,000万円の院長手取り
- 立地選定:高齢者人口が多く、競合が少ないエリアが有利
- 集患戦略:Webマーケティングとプライバシー配慮で受診ハードルを下げる
- 資金計画:リース活用で初期負担を軽減し、早期の黒字化を目指す
開業準備は物件探しから開院まで通常1年〜1年半かかります。早めの計画策定と、医療専門の税理士・コンサルタントへの相談をお勧めします。
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この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
ご注意事項
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